第43話 フィルとの再会
魔導具屋を出た後はサラに連れられて王都を見て回った。
町では出回っていない物が沢山あって楽しかった。
特に服飾店に寄った時は驚いた。
服の種類だけでなく、使っている生地も豊富だった。そしてなにより下着の文化が進んでいたのだ。
町では褌スタイルが主流だが、王都では前世の下着に近い形まで進んでいた。大きな違いはゴム紐がないので紐で縛るタイプな事ぐらいかな。
肌着としての機能性だけでなくデザイン性も重視されているのは上流階級の方々の嗜みとして普及してきているそうだ。
俺も思わずテンションが上がってしまい。サラに下着の事を色々と聞きすぎて怒られてしまった。
後はサラのオススメの食堂で夕食を食べて観光を満喫した。
明日はフィルに会いに行く予定だが、サラは用事があるらしく別行動だ。
サラとは大通りで別れて、このまま花街を観に行こうか迷ったが、サラにバレるとまた怒られるので大人しく宿へと戻って寝ました。
翌朝、ぐっすり寝てからフィルに会いに宿を出た。
ゴードンさんからはフィルのいる商会は大通り沿いの冒険者ギルドの隣だと聞かされている。
王都の大通りは朝からも賑わっている。人波に合わせてのんびり歩いていると大きな冒険者ギルドの紋章が見えてきた。
「あれが冒険者ギルドだな。やっぱり建物もデカイな。」
冒険者ギルド外観は4階建で敷地が広そうなビルのようだ。
「その隣って事は。ここかな?」
冒険者ギルドよりは小さいが十分にデカイ建物、ここがフィルのいる商会のようだ。
看板には『ようこそロック商会へ』と書いてある。
「なんか聞き覚えのある名前だな。」
俺が入り口で呆然としていると、中からナイスミドルが現れた。
「いらっしゃいませ。当商会へ御用で宜しかったでしょうか?」
「あ、はい。フィルと面会したいのですが。」
「畏まりました。お約束でしたでしょうか?」
「あ、いえ。私はサイモンの町のガルドと申しますが、不在なら出直します。」
「確認して参りますので、こちらへどうぞ。」
ナイスミドルに促され中に入ると1階は広いロビーになっており、ソファーとテーブルが沢山並んでいる。商談してるっぽい人達もいるのでここが商談スペースなのだろう。
「こちらでお座りになってお待ち下さい。」
ナイスミドルは一礼して去って行った。
ソファーに座るとフカフカだしテーブルもなんか高級っぽい。
場違いな感じでソワソワして待っていると、さっきとは別のナイスミドルと言うか洗練されたお爺さんがこちらへ来た。
「ガルド様、お待たせ致しました。私は執事長のクリオと申します。フィルは2階に居りますので、ご案内致します。」
「あ、ありがとうございます。」
このクリオさんはこれぞ執事って感じだなぁ。
2階に上がると廊下の絨毯は一層フカフカになっており、正直歩き難い。
2階は個室の商談スペースになっているようだ。
一室の前で止まり、クリオさんがノックしてからドアを開けてくれた。
「フィルはこちらで御座います。」
「ありがとうございます。」
クリオさんにお礼を言って部屋へ入る。
「ガル兄っ!」
懐かしい声が聞こえてきた。
フィルは椅子から立ち上がり、駆け寄ってくる。
「久し振りだね、ガル兄。」
「あぁ、フィルも元気そうで良かったよ。」
固い握手をして久々の再会を喜び合う。
「立ち話もなんだから座って話そうよ。」
「そうだな。」
フィルは以前とあまり変わってはいない。
少し低めの背丈に愛らしい笑顔とサラサラの金髪。
今は以前に比べると服装も髪型もキチンと整えられているので少しは大人っぽく見える。
昔話に花が咲き、クリオさんが持って来てくれた美味しいお茶を飲みながら小一時間ほど話し込んだ。
最近の町の事やゴードンさんが心配して俺に様子を見てきて欲しいと頼まれた事などなど、一頻り話した後にフィルが切り出した。
「実はガル兄にお願いがあるんだ。」
「ん?どうした?」
「単刀直入に言うよ?ガル兄のブーツを専売契約して欲しいんだ。」
「え?ブーツの専売契約?」
「うん、王都での専売契約をお願いしたいんだけど。」
「何でフィルがブーツの事を知っているんだ?」
「ふっふっふ、ガル兄、商売は情報だよ!情報は鮮度なんだよ!」
「よく分からんが、俺が昨日の市でブーツを売っていたのを知っていると?」
「うん。」
「これから町で売り出していくのも知っていると?」
「うん。」
「それを王都ではフィルの商会だけに卸して欲しいと?」
「うん。その通りだよ。流石、ガル兄は話が早いね!」
「なるほど。フィルもしっかりと商売をしているんだな。」
「えっへっへ。で、どうかな?」
「うん。いいよ。」
「やった!ガル兄、ありがとう!!」
「でも販売の事はゴードンさんがリーダーだから細かい事はゴードンさんと話し合って決めておくれよ?」
「うん、分かったよ。今度、町に行くよ。」
「そうだな、ついでに里帰りするのが良いんじゃないか?」
「そうだね、大旦那に相談してみるよ。今日の良い報告もできるし、多分お許しが出ると思う!」
「大旦那って言うのは、この商会の?」
「うん。僕がお世話になっている、このロック商会の会長だよ。今は帝都へ行かれてるからガル兄に紹介できないのが残念だけど、今度紹介するね。」
「いや、そんな偉い人は緊張するからいいや。」
「あはは、ガル兄は相変わらずだね。」




