第30話 プレゼンしよう
「遅くなりました。すみません。」
サラには日を改めて貰おうとしたら、弟子にしてもらうまでは離れません!とか言ってくるし。いくら説得しても帰らないし、結局は一緒について来ちゃうしで、俺が冒険者ギルドへ着いた時には皆が揃っている状況だった。
一番の若手が最後に来ちゃダメだよね。
「これで揃ったのお。ん?ガルド、後ろのお嬢さんはどちら様じゃ?」
「あぁ・・・それが・・・」
サラを紹介して弟子入りの志願を受けて困っている状況を説明した。
サイモンの爺さんはマリーゴールド様とも面識があったらしく、その孫だと知ると凄い顔で驚いていた。他にはスミスさんとキリカさん、それに道具屋のゴードンさんも来てくれていたけど、マリーゴールド様の名前が出た時には一斉に驚いていた。
まぁ歴史に名を残す偉人だしね。
そんな偉人の孫が俺に弟子入り志願なんかするもんだからサイモンの爺さんは腹を抱えて爆笑していた。
「ブフッ!ガルドにも弟子ができるとはのお~クックック。」
「いや、まだ弟子にしてないし!」
「そんなぁ!師匠~お願いします。」
「まぁ、サラ嬢の現状を聞けば誰かに弟子入りした方が良いじゃろうなぁ。」
「師匠!町長様もこう言ってますよ!!」
爺さんも若い子には弱いからなぁ。
このままでは話が進まないので強引に本題へと入っていった。
「そんな事よりも、今日集まったのはこれの事をなんだけど。」
俺は履いていたブーツを指差してから爺さんとゴードンさんにゴムの説明をした。
それからキリカさんに昨日お願いしたサンダルを出してもらい、2人にも実際に履いてもらった。
「ほお、ほお、ほお。これは何と言うか、今までにない履き心地じゃのお!ガルド、そっちのブーツも履かせてみせてくれ。」
爺さんはブカブカのブーツを履いて感触を確かめている。
ゴードンさんはサンダルを隅々まで観察しブツブツと小声で独り言を発しながら考え事をしている。
「そちらのブーツは冒険者たちへ高値でも売れるでしょうね。こちらのサンダルは動きやすく脱げにくいので誰にでも広く売れるでしょう。これをガルドが考えたのか?」
ゴードンさんは頭の中で算盤を弾いていたようで少し興奮気味だ。
「そ、そうですね。作ったのはキリカさんですけど。」
「いいえ、私はガルドのアイディアを聞いて仕上げただけよ。ゴムもガルドが作り出した物ですし。」
「ほぉ~!あの鼻垂れガルドが立派になったんじゃのぉ~。」
爺さんがちょっと泣きそうになっている。
「そうなんです!私の師匠は凄いんです!」
「うん。サラは大人しくしてて。それから爺さん、鼻垂れは余計だから!」
そこからはスミスさんが話を進めてくれた。
これを今後この町で売っていきたい事。
ゴムの製作方法を教えるので町で協力して大量に製作していきたい事。
スミスさんは無骨な見た目とは裏腹に話が上手く分かりやすく話してくれた。
「ほぉ~。これらは世に出せば間違いなく広まる品だと思うぞ。それ故に大きな富も築けるじゃろう。ガルド、これらはお主が考え生み出した作品じゃ。その利はお主が1人で享受する権利があるのじゃぞ?」
「爺さん、それは俺も理解してるよ。だけど俺1人ではそんなに多くを作れないし。これらばっかりを死ぬまで作る気もないしね。町の皆に協力してもらった方が俺も助かるよ。」
「そうか。お主がそう言ってくれるのなら、わしは町長としてこの話を全面的に支援するぞ。」
「爺さん、よろしくね。」
爺さんと固い握手を交わす。
「師~匠~。凄いです。感動です!」
「はいはい。サラはもう少し黙っててね。」
町長から協力の許可を得たので、今後の流れについて話し合った。
簡単に製作の工程を説明したので、爺さんに各方面へ協力を要請してもらう。
その間にゴードンさんには原価と販売予定金額、それから利益配分率を試算してもらう。
それぞれに見本が必要だと言うので、この後にキリカさんにゴムを届けよう。
それから俺は次の市で販売して王都でも宣伝してくる事に決まったので、市で販売用の商品は爺さんのポケットマネーから支給してもらえる事になった。
そうと決まれば皆は行動を開始する。
俺は取り敢えずゴムをたくさん用意しなければならない。
「師匠!私もお手伝いさせて下さい!!」
「そうじゃのう。さっきは笑ってしもうたが。ガルド、お主はもう立派な魔具師じゃ。今後は人手があった方が良かろう。サラ嬢の為にもなるじゃろうし、弟子として面倒を見てやってはどうじゃ?」
「うーん・・・」
サラが潤んだ瞳で見つめてくる。
「はぁ・・・わかりました。」
「やったぁー!!師匠、よろしくお願いします。」
押しに負けてしまった。
趣味の時間とか自由にできなくなると嫌だなぁ。
まぁ、その辺は邪魔されないようにしっかり言っておくか。




