第27話 サンダルを作ったよ
宿屋に入るとお客ももう疎らになっていた。
リンダさんとリィナは空いた卓の食器を片付けている。
「あぁ、いらっしゃい。ガルド。」
「リンダさんこんな時間ですみません。なんでも良いんで定食でお願いします。」
「あっはっは、さっきは災難だったね。あいよ、ちょっと待ってておくれよ。」
俺が空いていた席に座り待っていると。
「よぉ、兄ちゃん。アンタさっき雷鳴にやられてたよなぁ？」
声をかけてきたのは冒険者風のおっさん2人組だ。結構飲んでいるのか2人とも顔が真っ赤になっている。
「ええ、そうですね。知り合いなんですか？」
「がーはっはっは、この辺で冒険者をやってりゃ奴の噂は嫌でも聞くさ！」
「へぇ～、そんなに有名だったんですね。」
「なーはっはっは、まぁ有名ちゃ有名さ。」
「あぁ、良い意味ではないけどな！」
「え？どう言う事ですか？」
「奴は雷鳴って呼ばれてるって知ってっか？」
「ええ、自分でそう名乗ってましたね。」
「ぶわぁはっはっは、その雷鳴ってのはな。奴が得意の雷魔法をやたらと自慢してくるわ。高慢な態度がウザいわで付けられた呼び名なんだよ。」
「ゴロゴロ、ゴロゴロと煩い奴って意味でな！」
「がーはっはっはっは。」
「あー、納得です。」
それから酔っ払いのおっさん2人から雷鳴の悪い噂をたくさん聞いた。
同行しているレナを雑に扱ったり、女癖が悪く町の娘に手を出したり、金にも意地汚く弱みに付け込んで依頼料を吹っかけたりと酷いものだった。
そんな話をしているとリィナが定食を運んで来てくれた。
「はい、どうぞ。」
あれ？なんかリィナが不機嫌ぽいな。
いつも愛想が良いのに珍しいな。
そう思っていたら、おっさんが話しかけた。
「リィナちゃんもさっきは災難だったねぇ。」
「もう！忘れたいのに！！はいはい、お兄さん方も飲み過ぎですよ。明日も早いんでしょ。」
リィナに追い立てられておっさん2人は部屋へと戻って行った。
俺は今日の定食である鹿肉の炒め物定食を頬張りながら隣の卓を片付けているリィナのお尻を眺める。
「ちょっと、ガルドさん。聞いてくださいよ。」
突如リィナが振り返って言い放つ。
俺はビックリしてパンを喉に詰まらせそうになった。
慌てて水を飲んで落ち着く。
「リィナ、どうしたんだ？」
「それがね、さっきの雷鳴さんなんだけど。私のお尻を触ったんですよ！」
「なに！」
リィナのお尻は魅力的だ。
触りたくなる気持ちは理解できる。
しかし触ってしまってはダメだろう。
「それはダメだな。」
「でしょ～！普段から気を付けていたんだけど、今日は油断しちゃった。」
「だから不機嫌だったのか。」
「しかもね、それだけじゃないの。」
「え？」
「部屋へ戻る時にね、私に耳打ちしたの。」
「なんて？」
「今晩、俺様の部屋へ来い。可愛がってやる。だってさぁ。」
「それはまた酷いな。」
「私、本当に頭にきちゃって。もう少しで叩いちゃいそうだったわ。」
「そうかぁ。我慢できたリィナは大人で偉いね。」
「えへへ、そうかな？」
「あぁ、リィナの対応が正解だよ。」
「ガルドさん、ありがとう。聞いてもらえたから少し気分が晴れてきたわ。」
「それは良かった。あ、そうだ。さっきリィナに見せたゴムで良い物ができたんだよ。」
「えっ！もうできたんですか？」
「あぁ、これがそうだよ。」
履いていたサンダルを脱いで見せる。
「サンダル？ですか？」
「うん。少し改良してあるんだよ。履いてみるかい？」
「良いんですか？」
「うん。感想を聞かせて。」
リィナは恐る恐るサンダルを履き替えた。
そして3歩ほど歩くと気が付いたようだ。
今度は飛んだり跳ねたりしている。
まだ幼さが残る可愛い顔の割には大きめな胸が盛大に揺れている。
ご馳走様です！
「ガルドさん！これ何ですか？すごく歩きやすいです。」
「それはサンダルの裏にゴムの靴底を着けてあるんだよ。滑りにくくしてあるから歩きやすいでしょ。」
「はい！すぐに止まれるから良いですね！」
軽く走ったり止まったりを楽しそうに繰り返している。
なかなかに好評なようだ。
「あっ！」
「リィナ、どうした？」
「ガルドさん。ごめんなさい。」
リィナがサンダルを持ち上げると、ゴムの靴底部分が剥がれてしまっていた。
接着が弱かったみたいだな。
「あぁ、すぐに直せるから大丈夫だよ。」
「ほんとですかぁ？」
ちょっと涙目になっているリィナが可愛い。
「気に入ってくれたみたいだし、今度リィナにプレゼントするよ。」
「えっ！ほんとですか！？」
「うん、約束するよ。」
「すっごく楽しみです！」
コロッと笑顔に変わるリィナ。
この子は天性の小悪魔だな。
リィナの笑顔も見れたのでお会計を済ませて家へと帰った。
しかし雷鳴の奴、一番高い料理を注文していやがった。
あの店は良心的な価格設定なので助かったが、今度どこかで出会ったら覚悟しろよ！
奴をお仕置きする為にもレベル上げは頑張ろう。
明日は朝からゲイ兄弟と約束があるからな。
趣味の時間は程々にしてから寝よう。
