第18話 ゴーレムの札
翌朝の目覚めはスッキリ爽快でした。
いつもより少し早いけど朝食を済ませて早速行動を開始する。
大きめの木桶を3つ持って町から近いゴムの木を探す。
ビグルが言うには森の全域に紛れて生えているらしいので、西の森の入り口付近から解析スキルで確認していった。
入り口のすぐ側で3本見つけたのでナイフで樹液採取の加工をして木桶をセットしておく。
「夕方にでも一度確認に来るか。」
あとは放置しておくだけなので、そのままの足でニモ婆さんの家へと向かう。
ニモ婆さんは10年ぐらい前にこの町へ移って来た魔術師の婆さんだ。ちなみに10年前から婆さんだ。何歳なのかは怖くて聞けない。
婆さんはただの魔術師ではなくて精霊魔術師と言う職で精霊と通じて祈祷や雨乞いなんかもやっている。
俺の目的のゴーレムの札はちょっと高価だが護身用として町の外に出る時は持って行く人が多い。
ゴーレムの札を地面に貼り魔力を流すとゴーレムが生成される。
精霊魔術師だけがゴーレムの札を作れるらしいが詳しい事は知らないので聞いてみよう。
ニモ婆さんの家は町の西端の方なのでここからならすぐに着いた。
コン コン コン
扉をノックする。
「ニモ婆さ~ん、起きてる?」
ノックしてから少し待つとゆっくりと扉が開いた。
「なんだい、ガルドかい。珍しいねぇ。」
「婆さん、ゴーレムの札が欲しいんだけど。あるかな?」
「ああ、札かい?少しならあるよ。それじゃあ中にお入りよ。」
「お邪魔しま~す。」
中に入りダイニングの椅子に腰掛ける。
婆さんが札を持ってくるのを待つ。
相変わらず得体の知れない物があちらこちらに置いてある。
まさに魔女のイメージがピッタリだ。
でも本当は優しい婆さんなので安心して寛げる。
「3枚あったよ。何枚欲しいんだい?」
「1枚いくらだっけ?」
「1枚1銀貨だよ。おまけはしないよ。ヒッヒ。」
あらま、先手を取られた。
「ん~。じゃあ全部買うから、精霊魔術についてちょっと教えて欲しいんだけど。」
「ほぉ~興味があったのかい。」
「まぁね。まずはなんでこの札でゴーレムが作れるのか簡単に教えてほしいかな。」
その後は婆さんから精霊魔術について色々と教えてもらった。
俺が知りたかった事をまとめるとこんな感じ。
精霊魔術の術式を札に封じて販売している。
この術式は近くの土精霊をゴーレムの精神体として使役する契約内容で対価の魔力は札の作成時に支払われているらしい。なので起動する時に魔力を少し流すだけで、それ以外には魔力を必要としないそうだ。
ゴーレムの体を生成し維持と行動するのは土精霊の魔力を使っているらしい。その土精霊の魔力が尽きるか命じるかすればゴーレムは土に還るそうだ。
ちなみに通常のゴーレムの体は泥に近い粘土で形成され、沼から泥塗れの上半身を出した人みたいな見た目らしい。
契約する土精霊は下級精霊なので魔力量も少なく、札の起動後に何も行動しなくても2時間程度が限界らしい。
ゴーレムは何かを攻撃する命令は受け付けず、マスターの護衛とゴーレムに襲いかかってきた敵意にのみ反撃する様に契約されている。
これが基本的な内容で、ここからは俺の質問に対して教えてもらった事だが。
まずはゴーレムの体は土でしか生成できないのか?と疑問に思ったのだが、過去にも岩石や樹木で試した例はいくつかあるらしい。
しかし、どの事例も土精霊は宿ったが体の形を変化させる事も動く事も出来ず、魔力を無駄に消費してすぐに魔力が尽きたらしい。
そこで俺はさらに、藁人形なんかの柔らかい素材のゴーレムなら動けるか?と質問をしたのだが、婆さんでも分からないらしい。
藁なら体を維持する魔力消費は少ないが、体を動かす時の魔力消費が増える。土ならその反対になる。どちらが魔力効率が良いかを検証した事例はないらしい。
あとはゴーレムは魔導具を使う事ができるのか聞いてみたが、契約で決めた内容以外の事はその精霊の判断によるそうだ。
好奇心旺盛な精霊なら使う可能性もあるが、怠惰な精霊もいるらしい。
精霊魔術師になれば専属の精霊と契約する事も可能だし、精霊を育てていけば下級から中級~上級の精霊へ成長する事もあるらしい。
でも、#第二職業__セカンドジョブ__#に就くにはレベルを40まで上げないといけないからなぁ。
興味はあるが今のままでは夢のまた夢だな。
こんな感じですっかり長話をしてしまった。
お茶を2杯もおかわりしたし、気が付けば太陽が高くなっている。
ニモ婆さんにお礼を言って銀貨3枚でゴーレムの札を3枚購入する。
それから痺れ薬も買っておかないとな。
その後は家に一度戻ってから昨日のゴムの木の所へ行こう。




