第15話 気になる素材と失敗
「よーし焼けたぞー。」
ビグルが解体した猪肉を焚き火で焼いている。
肉は持って帰れない分は食べてしまう事にした。
牙と使えそうな骨は素材として持ち帰る。毛皮は外傷が多いのでダメらしい。
「おー!美味いぞ!!」
「あっ、俺も!」
猫舌だからフーフーしてから慎重に齧る。
歯応えがある!肉汁が広がる!
独特の臭みはあるけど質素な食生活だったからかとても美味しく感じる。やっぱり肉は最高だね!!
二人ともペロリと完食した。
「ビグル、林檎あるけど食べるか?」
「おっ、いいね!もらうよ。」
リュックから林檎を取り出しビグルへ投げ渡す。
「ありがと!」
ガブリと二人とも皮ごと丸齧りです。
林檎を食べながらこれからの打ち合わせをする。
ゴムの樹液はすぐには溜まりそうに無いので明日改めて回収する事にする。
この木は結構生えているのでもっと町の近くで探してみよう。
この後は予定通りにこのまま森の浅い所を北へ向かう事にした。
十分に休憩出来たので、火の後始末をして出発する。
その後も順調に進み野良のゴブリンや一度だけ蜘蛛の魔物ビッグスパイダーも倒した。
デカイ蜘蛛はかなり気持ち悪かった。
頑張った甲斐もありレベルが更に上がりレベル6になった。
「なぁビグル。あれは何だ?」
俺は少し森の奥側に見える竹の様な植物を指差して質問する。
「ん?あれはパーンバンブーだな。」
「ちょっと寄っても大丈夫か?」
「近くに寄ると大きな音を立てて破裂するから気を付けろよ!」
「マジかよ・・・まさに爆竹だな。」
近くに寄り過ぎない様に気を付けて解析スキルを使う。
『解析』
パーンバンブー
内部で火薬を作り出す竹の変異種
動物が近くを通ると破裂し気絶させる
火薬か、あれば便利だよな。竹も素材として使えそうだし。
「ビグル、どうすれば破裂させずに伐採出来るか知ってるか?」
「また変な物を欲しがるなぁ。でも俺には分からないな。木樵のゲイザーさんなら知ってるかもな。」
「あぁ~、ゲイ兄弟さんかぁ。」
木樵で兄のゲイザーさん、鉱夫で弟のゲイルさん。
二人とも筋骨隆々な山のスペシャリストだ。
昔は兄弟コンビで冒険者として有名だったらしいが、ある日この町に移って来た。それからは二人で分担して山仕事に従事している。
前世の記憶がある今ではあまり会いたくない人達だな。
まぁ、聞くだけ聞きに行ってみるか。
「明日にでも行ってみるよ。今日は諦めるか。」
「そうか。パーンバンブーは北側の森によく生えているけど、森の奥には一人で行くなよ?」
「森の奥には何があるんだ?」
「北の森は抜けると山の麓に行けるが、森の奥には強い魔物もいるからな。」
「ど、どんな魔物がいるんだ?」
「俺も見た事ないが、聞いたのは巨大な鹿の魔物らしい。#大王角__グレイトホーン__#と呼ばれているこの森の主らしいぞ。」
「マジか。気を付けるよ。」
パーンバンブーは次回の目的にしよう。
諦めて移動を再開する。
少し進んでそろそろ引き上げるかを考え出した時、ビグルが立ち止まった。
「ビグル、どうした?」
「寝てるみたいだな。」
「えっ?」
ビグルが静かに迂回して歩みを進めるのでついて行く。
「見てみろ、呑気に昼寝してやがる。」
ビグルが小声で指差すのでそちらを見ると、日当たりの良い平たい石の上で狼の魔物が昼寝をしている。
「あれはフォレストウルフだな。毛皮の質が良いからなるべく傷は少なく狩りたいな。」
ビグルが小声で説明してくれる。
それなら俺に考えがある。
「ビグル、俺に任せてくれ。このナイフであいつをスタンにするんで仕留めてくれ。」
「おぉ、なんか変わったナイフだな。自信ありそうだし任せるぞ。」
「おう、行ってくる。」
静かにゆっくりとそして静かにゆっくりと風下から慎重に近づく。
相手は気付かず寝ている。起きる様子もない。
上手く背後まで移動出来た。
魔導玩具のナイフを握り締め、狼の首元へ一気に突き刺す。
その瞬間に発動の魔力を流す!
バチッ バリバリバリ
「ウギャ」
ナイフから電流が走る。
ナイフは全て鉄製だ。当然、柄の方にも電流が襲ってくる。
俺の意識は飛んで行ってしまった・・・
「おーい、おい、おい。」
ビグルが俺の頬を叩いている。
痛い、痛いけど動けない。
「あ・・・が・・・」
「まだ無理そうだな。そのままもう少し休んでな。俺は獲物の解体をやってるから。」
俺は薄い意識のままビグルの解体作業を眺めている。
『レベルアップしました。雷耐性を獲得しました。』
あっ、レベル7に上がった。やったね。
最近、雷によくやられたからなぁ。
耐性が付くのは嬉しいが自爆したのはやっぱり恥ずかしいな。
少し回復してきたかな。指先を動かして感覚を確かめる。
「ビグル悪い、水筒取って。」
「分かった、自分で飲めるか?」
「あぁ、だいぶ回復してきた。」
体を起こし、水筒を受け取り水を飲む。
あれか、魔導玩具のナイフの説明にあった危険って言うのはこれの事だったのか・・・
迂闊だったな、改良せねば。




