第14話 戦闘だ
「この先でゴブリン3匹が狩りをしているな。」
ビグルが集中して気配を探る。
「獲物は何を?」
「たぶん猪だな。どうする?様子を見るか?」
「そうだな。バレない様に近づこう。」
風下に回り込み茂みから様子を伺う。
「ギィッギャー!!」
「ヒィィゴオォ・・・」
石斧を持ったゴブリンの攻撃が猪の脳天にクリーンヒットした。
ちょうど決着した瞬間だった様だ。
傷だらけの猪の周りで3匹のゴブリンが踊っている。
ゴブリンは3匹とも武器を持っている。どれも拙い作りだが石斧、石槍、弓矢とバランスの良いチームだ。
「ビグル、どうする?」
「二人なら倒せると思うが、作戦を伝えるから出来るかは判断してくれ。」
「わかった。」
「まずガルドの吹き矢にこの痺れ薬を仕込んでくれ。それで石槍ゴブリンを攻撃する。そしたら敵はガルドの方へ襲って来るが、俺が別場所から弓矢ゴブリンを仕留める。残りの敵は別場所からの奇襲で混乱するはずだから、そこを俺が仕留める。」
「なるほど、まず弓矢を確実に潰し、運が良ければ石槍は麻痺で動けないって狙いだな。石槍が麻痺しなかった場合でも大丈夫か?」
「あぁ、その場合でもガルドの所まで行く前に1匹は仕留められるさ。今のガルドならゴブリン1匹の攻撃なら躱せるだろう。その隙に最後のも仕留めてやる。」
「そうか、なら念のためナイフに持ち変えておくよ。この作戦で行こう。」
「了解。じゃあこの痺れ薬を仕込んでくれ。」
ビグルから小瓶に入った痺れ薬を受け取ると矢の先端に塗りたくる。
「吹き矢の準備は出来たぞ。」
「よし、じゃあ今から30数えたら攻撃してくれ。その間に俺は移動しておく。」
「了解。いくぞ。」
ビグルは頷くと音も無く移動して消えた。流石は狩人だな。
おっと、ちゃんとカウントしないとな。
『27・・・28・・・29・・・30』
俺は石槍ゴブリンに狙いを定め、力一杯に吹き矢を放つ。
ピュッ
踊りを止めて猪を食べようとしゃがんでいた石槍ゴブリンの脳天に矢が刺さった。
途端に怒りを露わにする石槍ゴブリン。
麻痺には出来なかった様だ。周りのゴブリン2匹もつられて怒り出す。
その瞬間に。
ヒューン ゴス
弓矢ゴブリンの側頭部をビグルの矢が射抜いた。
一撃で弓矢ゴブリンは倒れる。
突然の事に2匹は慌てるが、すぐにこちらの茂みへ向けて襲って来る。
ヒューン ブス
今度は石槍ゴブリンの太腿をビグルが射抜いた。
転倒する石槍ゴブリン。持ってた槍も手放してしまい、そのまま動けない様だ。
石斧ゴブリンはそのまま突進して来るかと思ったら、石斧をこちらへ投げつけて来た!
俺は慌てて茂みから飛び出し回避する。
そこへゴブリンが飛び付いて来る!
俺は用意していたナイフを無我夢中で突き立てる。
運良くナイフがゴブリンの胸に突き刺さり即死させる事が出来た。
「ふぅ~、怖かったぁ。」
俺が安堵の声を上げるとビグルが木の上から飛び降りて来た。
「なかなか見事だったぞ。」
俺とは違いビグルは余裕そうである。
そりゃレベルも実践経験も比べ物にならないから当たり前か。
手早く石槍ゴブリンにトドメを刺し魔石の欠片を回収している。
俺も石斧ゴブリンから魔石の回収をした。
最初はグロかったけど慣れてきたな。
俺が猪の所へ向かうとビグルは弓矢ゴブリンの欠片も回収し終えていた。
「ビグル、この猪はどうする?」
「横取りで悪いけど頂いて行くか。このまま運ぶのは無理だから、ここで解体してしまおう。少し待っててもらえるか?」
「了解。」
俺はすぐ側の木にもたれて座ろうかと思い、木を見ると白い樹液が出ていた。
猪とゴブリンの戦闘時に幹が傷付いたのだろう。
なんとなく気になったので匂いを嗅いでみる。
「これは・・・」
「あっ、それは臭いしネバネバするから触らない方がいいぞ!」
俺の声に反応したビグルが注意してくれる。
しかし多分これはあれだな。
俺は確かめる為に解析スキルを使う。
『解析』
嫌な木
樹液が独特の匂いと粘性を持っている為に伐採する木こりから嫌がられている
通称:嫌な木
ゴムの木の一種
「やっぱりゴムの木か。」
「ガルド、どうかしたのか?」
「いや、大丈夫だ。それよりもこの樹液を集めたいんだけど、何か器になる物を持ってないか?」
「げっ、マジかよ。そんなの集めるのか?」
「あぁ、もしかすると便利な物が作れるかもしれないんだよ。」
「はぁ~魔具師ってのは変な事を考えるんだな。」
「そう言う物なんだよ。」
呆れたビグルから木のコップを1個もらい、樹液採取の仕掛けを作った。
ナイフで樹液の通り道を作りコップを置いただけですけどね。




