第13話 狩りに行こう
早朝、家の扉をノックする音で目が覚めた。
ビグルに申し訳ないが寝坊した。
居間に案内してお茶を淹れて待ってもらう。
「急いで準備してくるから!」
俺は着替えと顔を洗い、持って行く荷物をリュックに詰め込む。
水筒、おやつの林檎、布、素材袋、予備の魔玉、吹き矢の予備、解体用ナイフ
「うん、これでいいかな。」
胸当てを装備しナイフはカバーに入れてベルトに差しておく。昨日作った魔導玩具のナイフはカバーが無くて危ないので布を巻いてリュックに追加しておく。ブーツに履き替えたら準備完了だ。
「ビグルお待たせ、行こうか!」
「おし、じゃあ西の森から行こうか。」
外に出ると朝日が昇ってまだ間もないのか少し肌寒い。
静寂に包まれた町を西へと通り抜ける。
町から西の森までは割と近い、早足で行けば20分ほどで森の入り口に到着出来る。
「よし、じゃあガルドは俺の後に続いてくれ。森の浅い所を北へ移動して行くからな。」
「了解。何か注意する事はあるか?」
「そうだな。索敵は俺がするからハンドサインだけ決めておくか。」
ビグルにハンドサインを教えてもらう。
狩人のスキルで周辺の気配察知ができるので魔物や大型動物に突然出会う事も無いそうだ。
「よし、じゃあ行くぞ。」
「おう!」
森の中に入ると様々な草木が生い茂っている。遠くからは鳥の鳴き声も聞こえてくる。
動植物の多い豊かな森だ。でも魔物も出るので安全とは言えない。
そもそも、この世界の魔物はダンジョンでしか発生しないのだが。ダンジョンで発生した魔物が溢れ出て来て野良となる場合もある。
野良の中でも繁殖力のある魔物は住処や縄張りを作りその数を増やしている。
この森にもゴブリンや昆虫系など色んな魔物が住み着いている。
昔はこの辺りにも大規模なダンジョンがあり、多くの魔物達が跋扈していたらしい。
人々は魔物の被害に怯えて暮らしていたが、銀髪の狼の獣人がダンジョンを制覇しこの辺りの平和を取り戻した。その後の彼は獣人帝国の初代皇帝に就き、没後も銀狼帝と呼ばれ国民に愛されている。
話は逸れたが魔物がウジャウジャいる訳では無いし、ビグルもいるので安心は出来る。
しばらく進むとビグルが止まれのハンドサインを出した。
「この先にはぐれのゴブリンがいるぞ。」
ビグルが小声で教えてくれる。
「了解。どうする?」
俺も小声で返す。
「そうだな、ガルドが吹き矢で先制攻撃をしてくれ。後は俺が弓矢で仕留めるさ。」
攻撃さえしていれば経験値は入るからな。
俺は初撃を外さない様にしないとな。
「了解。タイミングは合図してくれ。」
ビグルは頷いて歩みを再開する。
少し行くとビグルが先の茂みを指示した。
茂みから様子を伺うとゴブリンが1匹で石を叩いている。武器でも作っているのだろうか?
俺はビグルへ振り向くと弓の準備をしている。ビグルが頷いたので俺は攻撃を開始する。
茂みの隙間からゴブリンに狙いを定める。
距離も離れていないし、風も無い。
俺は渾身の力を込めて一気に吹く!
ピュッ
ゴブリンへ矢が飛んで行く。
矢はゴブリンの胸の辺りに刺さった。
命中はしたがほぼダメージは無い様だ。
「ギギィ!」
ゴブリンがこちらへ向き、立ち上がろうとした時。
ヒューン ゴス
ビグルの放った矢がゴブリンの額を射抜く。
「ギィギャー・・・」
ゴブリンは短い断末魔を上げ倒れる。
「よし、回収に行くか。」
ビグルに続いて倒したゴブリンの所へ行く。
手早くビグルがゴブリンの胸を割いて魔石を回収する。
「ゴブリンじゃあ魔石の欠片くらいしか素材にならないけどな。」
「そうか、魔石1個は取れないのか。」
「ゴブリンじゃ無理だな。魔法を使ってくる魔物なら獲れる可能性はあるな。」
「なるほどね。」
ビグルが矢の回収をしたので俺の矢を受け取る。
「ゴブリンの死体はどうするんだ?」
「ん?この森にはスライムがいるからな。そのままにしとけば勝手に消化してくれるよ。昔に村長の爺さんから教わったのを忘れたか?」
「あー、忘れてたわ。」
スライムは死体を食べてもレベルアップしないらしいし、あちらから襲ってくる事も無い。この辺りでは無害な魔物として認識されている。
そのまま順調に野良のゴブリンや小動物を狩りながら進んで行く。
ダメージはほとんど与えていないが俺のレベルも1つ上がりレベル5になった。
俺が浮かれているとビグルが止まれのハンドサインを出した。
ビグルの様子を伺うと先程よりも真剣な表情をしている。
俺も緊張してしまい固唾を飲み込む。




