表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

エピローグ

◇――――


 「国に住む人々は長く長く幸せに暮らしましたとさ……おしまい」


 母親は絵本を閉じると娘を見ました。

 娘は規則正しい寝息を立てながらスヤスヤと深い眠りについていました。


 「あらあら。話の途中で寝てしまったのね」


 母親は起こさないように娘の頭を優しく撫でました。


 すると、


 ――――コンコン。静かに窓を叩く音が聞こえます。


 母親は娘を起こさないようにベッドから降りると、窓へと近づきそっと開けました。


 「こんばんは」


 母親は窓の外にいる人物に夜の挨拶をしました。


 「こんばんは、お久しぶりです。中に入ってもよろしいですか?」


 窓の外にいる人物も静かに夜の挨拶を返します。

 窓の外にいる人物は古びた箒に乗っており、全身が黒い格好で、白銀の長い髪にルビー色の瞳をした女性でした。


 「いいわよ。ただし、娘が寝たばかりだから音をたてないように入ってね」


 母親は言うと、黒い格好の女性を部屋の中へと招き入れます。


 黒い格好の女性は箒から降りると、静かに部屋の中へと降り立ちました。


 「お久しぶりね、見習い魔女(・・・・・)さん? それとも、一人前の魔女さんとお呼びした方がいいかしら?」


 母親は部屋の中に入ってきた黒い格好をした女性に向かって茶化すように言いました。

茶化された黒い格好をした女性――見習い魔女は言い返します。


 「からかうのはやめてくださいよ冬の女王様(・・・・・)! 見習いを卒業しても、半人前です! 一人前になるなんてまだまだ先の話ですよ!」


 見習い魔女は母親――冬の女王様に向かって言うと、冬の女王様はクスッと笑いました。


 「ふふっごめんなさい。久しぶりに会えたのが嬉しくって……あら、少し背が伸びたんじゃない?」


 冬の女王様はそう言うと、見習い魔女と自分の背を手で測ります。

 出会った頃は頭一つ分の身長差があった二人も、今では目線が合うほどです。


 「まだまだ伸び続けますよ! 冬の女王様はますますお美しくなられましたね! それに……」


 と、見習い魔女はベッドの上で寝ている冬の女王様の娘を優しく見守ります。


 「ユキ王女もご立派になられましたね……」

 「見習い魔女だった頃のあなたの話を絵本にしたのだけれど、ユキは毎晩それを読んであげないと眠れないのよ?」

 「えぇ!? そうなんですか!? 恥ずかしいじゃないですか!」


 見習い魔女は顔を赤らめながら言いました。


 「そんなことないわ。ユキにとっても私にとっても大切な大切なものなの……」


 冬の女王様は言いました。

 

 「今はあなたも忙しくて中々来られないだろうけど、時間があるときはユキと遊んであげてね?」

 「もちろんです! 今度一緒に箒に乗る約束もしました!」

 「うふふ♪ よろしくね」


 冬の女王様は嬉しそうに言いました。


 「ところで、あなたが来たということは例のモノ(・・・・)を持ってきたの?」

 「はい! どんなに忙しくても毎年持ってくると約束しましたからね! 今回はユキちゃん……じゃなくてユキ王女の分も持って参りました」


 見習い魔女はそう言うと、目の前に2着のドレスを出しました。

 2着とも雪のように真っ白で美しいドレスでありました。


 「ありがとう! ユキもきっと喜ぶわ! でも2着も大変だったでしょう? ドレス職人さんに後でお礼の手紙を書かなくちゃね!」


 冬の女王様はドレスを大切そうに持つとクローゼットの中へと大事そうにしまいます。


 「後でユキと一緒に着てみるわね!」

 「はい! 後で感想をお聞かせください!」


 二人はしばらく今まであった出来事を語り合った後、窓の外を見つめました。


 「……もう今年の冬も終わるわね。またしばらくはお城でのんびりとした生活に戻ってしまうわ……何よりあなたともしばらく会えなくなってしまう……」


 冬の女王様は寂しそうに言いました。

 すると、見習い魔女は冬の女王様に言いました。


 「私は逆に楽しみが増えたとワクワクしますよ! 今度はどんな話をしようって楽しみで楽しみで! いつも会ってしまっては楽しみも減ってしまいます!」


 見習い魔女は言いました。


 「いつだって限りある時の中で大切な人と共に過ごす……それがあるからいいんじゃないですか?」


 見習い魔女の言葉に冬の女王様は頷くと、


 「……そうね。いつも同じじゃつまらないものね。人は変化を楽しむものだもの、ね」


 納得したように、でもほんの少し残念そうに言いました。


 「私はそろそろ失礼します! また次の冬にお会いしましょう!」


 見習い魔女はそう言って箒に跨りました。

 頬にはうっすらと透明な筋が伝っておりました。


 「えぇ……次の冬、必ず――!」


 冬の女王様が手を振ると見習い魔女は静かに夜の空へと飛び立ちました。

 冬の女王様は見習い魔女の姿が見えなくなるまでずっとずっと見守っておりました。


 「また会いましょう、私の大切な大切な――」







 ――――――――冬の友達。


                                          終わり


ここまで読んでくださった方々、ありがとうございました。これにてこの物語はお終いです。

冒頭の母親は冬の女王で、最後に半人前になった見習い魔女が出てきました。


童話というのはハッピーエンドで終わりますが、いつだって何処だって続きがあるものです。そんな続きのある童話を今回書かせていただきました。


裏話等を後日活動報告にでもできたらいいなと思います。


拙い文章ながらも最後までお読みいただきありがとうございました。改めてこの場にてお礼申し上げます。では、失礼いたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ