正義と悪は、紙一重
ふと思ったことを、ちょっとした小説にしてみました。
とある草原、とある場所にて、二人の少年が向かいあっていた。
白い服をきた少年と、黒い服をきた少年。
白「お前は悪者だっ。だから、僕はお前を倒す!」
黒「僕が悪者だなんて、誰が決めたの?僕は世界を変えたいだけ。」
白「お前が世界を変えたら、世の中の人々は不幸になる。」
黒「そんなの、やってみなくちゃ分からないじゃないか。」
静かにふく風は、まるで泣いているように聞こえた。
そんな中、黒い服の少年が語りだす。
黒「黒は悪魔って、誰が決めたの?白が天使だって、誰が決めたの?実際は、誰にもわかりゃしないんだ。もしかしたら、悪魔は良い奴なのかもしれない。もしかしたら、天使は悪い奴なのかもしれない。僕はこの、腐敗してしまった世界を変えたいだけ。君だって目的は同じはずだよ。」
白「……違う。」
黒「じゃあ、君は僕を倒して何がしたいの?僕が倒れても、世界は何一つ変わらない。だって、人が一人死んだだけだから。それでも君が僕を倒すというのなら……」
黒い服の少年が、にっこりと笑った。
黒「それはただの、自己満足だよ。」
白「違うっ!」
白い服の少年は叫んで、剣の切っ先を黒い服の少年に向けた。
目には涙が浮かんでいる。
白「お前は、悪い奴だ。僕の親を殺した。その他にも、たくさんの人を殺した。その事実だけは変わらない。」
黒「…だから、僕を殺すの?それは一般的に、復讐って言うんだよ。」
白「復讐じゃないっ。悪を倒すだけだっ」
黒「人殺しが悪だというのなら、君だって悪者だよ。」
白「悪者じゃないっ。僕は正義だ!」
黒「何が正義なの?じゃあ、正義の定義は何?人殺しが悪なら、虫や動物を殺して食べている君たちは悪者じゃないと?自分たちと同じ種族じゃないなら、殺してもいいの?」
白「……うるさいうるさいうるさいっ。黙れ!!」
黒「結局君たちは、自分を正当化したいだけなんだ。僕も同じ。だって世界は、残酷なシステムで出来ているんだから。」
いつの間にか風はやみ、遠くでは太陽が沈もうとしている。反対側からは、月が顔を出していた。
黒「住んでいる所が違うだけで、目指している未来は同じ。自分たちの過ごしやすい未来を、創ろうとしているだけ。まるで、太陽と月みたいだね。」
そう言って、黒い服の少年は嗤った。
白い服の少年は、何も言うことができずただ歯を食いしばっている。
その様子を見ていて、私は呟いた。
「私からしてみれば、どっちも悪者だよ。」