白麗の令嬢
あれから僕は小さな村を転々とし、下働きをして宿に泊めてもらうなどして、生活している。
ギルドはあるが、僕の年齢は今は12歳。ギルドは15歳から登録することができる。
「おーいレム!こっち手伝ってくれ!」
「分かりました。」
僕は名前をアレスト・レムという名前に変えている。髪は金髪のままだったけど、あの事件依頼赤黒い色が混じっている。
そして、今僕の名前を呼んだのはこの宿屋の店長のアレストさん。そう、僕はこの人の養子となった。ここで下働きをしている内に、ここの家族に気に入られてから、急にアレストさんに、ここでずっと働かないか?といわれ了承したところ、そのずっとという意味は、養子にならないか?という事だったらしい。
だが、迷惑ではない。むしろありがたい事だ。
アレストさん達はとても優しく、見ず知らずの自分にまで手厚く保護してくれるのだ。
まぁそんなことよりも、今日は大忙しだ。なぜなら・・・
「レムー!どうしよう、お皿が足りないよ!」
「棚の後ろまで見たの、シア?」
厨房から、元気な声が響く。彼女の名前はシア。アレストさんの娘で、元気な女の子。ショートヘアの美少女で、この宿の看板娘だ。
「あ、あった!ありがとね、レム!後で御飯作ってあげる!」
「はいはい、そんな事はいいから。・・・そろそろ来る時間かな。」
説明が遅れたが、今日は忙しい。なぜなら、この宿に‘‘氷龍‘‘の名前を持つレミア家が泊まりにくるのだ。
レミア家。八つの主力貴族の氷属性を得意とする名門。僕の元の名前のルウラ家は、この主力貴族の雷にあたる。まぁそんな事はどうでもいい。あの名前は捨てたしね。
僕の顔は知られていない筈だし、大丈夫だろう。
そう一人で考えていると、外から馬車の音が聞こえてくる。シアもその音に気づいたのか、出迎えにいった。ドアから見える、馬車。その横と後ろについて歩く騎士達。一切乱れぬ動きに、つい見入ってしまう。そして、丁度ドアの前で、馬車が止まる。その中から、女の子が出てくる。
・・・白いドレスに、銀色の髪。そして何よりも美しい顔。そして唖然としているシアに向かい、
「今日はどうもありがとうございます。」
と、優雅に笑顔で挨拶する。シアも「えあ?あ、はい!」と、焦っている様子。ま、主力貴族と話せるなんて一生に一度あるかないかくらいだもんな・・・。っていうか僕もか。
ちなみに僕は今厨房で料理を作っている。どれもこれも高級料理ばっか。貴族ばかりが食べるものばかり。隣でアレストさんが、お前どうやってそんな料理覚えたんだ?っていう顔してるが。元貴族をなめないでくださいアレストさん。
アレストさんもやっと動きはじめ、すぐに迎えにあがる。
「レミア家の皆様、本日はこのような宿に泊まりに来てくれてありがとうございます。精一杯おもてなしをするので楽しみにしてください。」
そう言って頭を下げるアレストさん。銀色の髪の女の子も笑顔で「ふふ、では楽しみにしておきますね。」と笑っていた。てコラ。アレストさん。顔がだらしないですよ。
そうしている内に、馬車からまた人がおりてくる。そこからは、いかにも厳しそうな顔をしたの人と、物腰が柔らかそうな女性だった。だいたいレミア家当主とその奥さんだろう。
ってそろそろ夕食の時間か。アレストさん達も荷物を部屋に運んだようだし。
「シア。夕食ができたからお客さんを食堂へ案内して。」
「分かった!」
元気な声が響き渡る。うん、常時運転だな。お客さんの規模以外は。なんたって騎士の人たちもいますからね。
食堂に、従業員の人達や、シアが夕食を運んでいく。初めて見る高級料理に運ぶ時の手が少し震えていたけど、何とか運びきったようだ。食堂から「凄い料理だな。」という声が聞こえてくるがまぁいいや。
僕はそのまま後片付けをしていたが、食堂で食事をとっていた筈のシアが飛んできて、「レ、レム!レミア家の皆さんがレムを連れてきて欲しいって・・・!」
「どうしてだい?」
困惑状態のシアに冷静に問いかける。
「わかんないよ!料理を食べたら急に・・・。」
「料理が口に合わなかったのかなぁ?・・・まぁ行ってみるか。」
エプロンを脱ぎ、そのまま食堂に向かう。何も起こりませんように。
僕が食堂のドアを開けると、ズラーっと騎士の人達が並んだ机の後ろ側に、レミア家の皆さんが座っていた。そして厳しそうな男の人が前へ来なさい。と行ってきた。僕は緊張せず、冷静に前に出た。
沈黙。ただ男の人と視線を合わせるだけ。だったが、その沈黙をアレストさんが破った。
「えーと、ガイス様?どうしてレムをお呼びになったのでしょうか?」
冷や汗を垂らしているアレストさん。なんかすみません。必死のアレストさんを横に、ガイスさんという男の人が口を開く。
「いや、そんな緊張しなくてもいい店主。この少年がこの料理をつくったのだな?」
「ええ、そうですが・・・。」
緊張するな、と言われたアレストさんは、余計緊張したご様子。
「・・・素晴らしい料理だ!これまで様々な料理を食べたが、これはその中でも一番うまい!」
とまさかの絶賛の声。その言葉にアレストさんは5秒程唖然とした後、
「あ、ありがとうございます!」
と、歓喜の声を上げた。良かったですね。アレストさん。僕も美味しいと言ってくれて素直に嬉しい。
女の子の方を見ると、僕の顔を見たまま惚けている。どうかしたのかな?
その意味を察しているのか、シアは女の子を睨んでいる。こらこら。
しかし、その視線を感じとったのか、女の子もシアに視線を向け火花を散らす。いや、火花は出ていないけど。
僕がそう考え込んでいる内に、シアが僕の腕をつかみ、「じゃ、レムはまだ片付けが残っているので、これで失礼しますね!」と、厨房に引き戻されそうになったその瞬間、女の子が立ち上がり、
「そういえば名乗るを忘れていましたね。私の名前はセリアと申します。よろしくお願いしますね?レムさん?」
と、笑顔で名乗ってくれたので、つい貴族の癖で、
「こちらこそ、よろしくお願いします。セリアさん。」
こっちも負けずと笑顔。社交術ぐらい慣れていますよ。そして僕の笑顔が気持ち悪かったのか、顔を赤らめ、そっぽを向かれた。何で?・・・その横でシアが「うぅーレムの馬鹿ぁ・・・」と怒っていた。
「ふふ、どうやらあの子、レム君にメロメロのようね、あなた。」
「ふ、これが修羅場という奴か。だが、娘はそう簡単にはやらさんがな。」
「いや、恐れ入ります。」
と、親達の雑談が繰り広げていた。
事件が起きたのは夜皆が寝付く頃だった・・・。
今は幼少時代です。この話が終わってから、本章に入ります。
その時は一人称が俺に変わりますが。




