Stage1-2【空色の少女の話】
私立ホウキ星高等学校、不良の巣と化したこの学校。
いじめられっ子、【金野 纏】の前に現れた、一人の男。
その名は…………
「あの……彰人さん??」
「ん??」
「あの……彰人さんも……その……」
「【不良皇帝】のことか??」
「いっ……」
「まあ、狙っていると言ったら狙っている……と言った方がいいか??」
「えっ、それって……」
「おっと、追求するなよ。
んじゃ、俺はちょっと用があるから。
運が良ければまた会おうな。」
「……はい、また。」
タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ……
銀色に光る髪の少年、彰人は再び汚れたスニーカーを響かせながら不良横たわる教室を後にした。
「彰人さん……何だか、不思議な感じの人……」
~高速道路前の路地裏~
ヒト一人としていない静かな路地裏。
その影に、ひっそりと立つ小さな地蔵。
薄汚れ、苔だらけの石の地蔵の前に、纏の姿があった。
(お地蔵様……今日は藤縄彰人さんという人に出会いました。
その人が、例のA組の奴らをやっつけてくれたんだけど、
何だか、不思議な感じがするというか、心の中にすごい悲しみを負っているというか……)
供え物である小さな饅頭と花を添えた後、纏が後ろを振り向こうとしたその時であった。
「ねぇ、それってお地蔵様??」
「ひぃ!!」
突然声をかけられ、身震いする纏。
いや待てよ。こんなこと聞いてくるのは不良であるはずがない。
少女のように清楚な声だったらなおさら。
恐る恐る振り返ってみると……
「…………。」
「うふふ。」
少女は、 【宙】 と名乗った。
薄汚れた淡い水色の肩掛けに白い(と思われる)ワンピースにサンダルといった、悪く言ってしまえば“みずぼらしい”格好をしている。
そして、その娘の長い髪の色は……
「銀色……」
「ああ、これ??
変わっているよね。ほかのみんなは真っ黒なのに、なぜか銀色だもん。
……おかしいよね。」
「全然おかしくない、素敵だと思う。その髪の色。」
「ありがとう。そう言ってもらえたの、初めて……」
「…………。」
「お兄ちゃんも、銀色なんだ。」
「お兄さん??」
「うん。わたし、体弱いから、お兄ちゃんにいろいろ迷惑かけて……
お金がなくて食べ物も買えないから、お兄ちゃん、コンビニとかで捨てられちゃう弁当を持ってきてくれたり、わたしがこの髪のことでいじめられたら、怪我をしてまで追い払ってもらって……
わたし……」
「そっ……それはお兄さんが宙ちゃんを大切に思っているからだよ。
全部宙ちゃんを守ろうとしてるんだよ。
絶対迷惑だなんて思っていないって……」
「マトイさん……。」
「呼び捨てで構わないよ。そうだ、さっきのお供え物の余り、食べる??」
「えっ、でもそれ……」
「大丈夫大丈夫、さっき僕はたらふく食べたかr
ギュルルルルルルルルル…………
「あっ……」
身体はどうしようもなく正直である。
「うふふ……半分こしましょ。」
その後も談笑が続き、気がつきゃ日が暮れた。
時折見せる宙の笑顔。
しかし……
(彼女もだ……心の中に、さっき話してくれたことと比べ物にならないほどの悲しみがある感じがする。
彰人さんといい、宙ちゃんといい、何者なんだろうか……)
「さて、そろそろマトイ……お兄ちゃんが帰ってくるからそろそろ離れたほうがいいよ。
お兄ちゃん、私をいじめに来たと勘違いしてボコボコにしちゃうかもしれないから……」
「おっ、おっかねぇ……
じゃあ、僕はこれで。またね、宙ちゃん。」
「うん、マトイ……」
「ただいま、弁当持ってきた、これで3日持つだろう。」
「うん、ありがとう、お兄ちゃん。」
「ん??宙、お前今日はやけに明るいな。何があった??」
「ううん、なんにも。」
~その頃、私立ホウキ星高等学校・一年A組教室~
「……という訳でございます。」
「ふうん、それで俺様が来るまで這いつくばっていたという訳か。」
「不覚です……」
「…………。」
「あの……【陽魔】様……??」
「…………ニヤリ」
「!!!」
グシャッ
「使えない、消えろ。」
「アッ……アアアッ…………
「ヒィィ!!」
「なあ、お前らもこうなりたくないだろ……
だったら、そのボロ雑巾みたいな格好をしたやつを俺様のもとに連れてこい。いいな…………」
「あっ……あの…………」
「いいな……!!」
「「「「「はっ、はい……!!」」」」」
---------It continues to next time----------