記事に紛れた二十――二十本の測定棒
追跡四年目、北部国境駅で統計係ミナは無傷の両手の写しを机へ戻した。第165番記録で確かめるのは、模倣犯の遺品と報道経路を再検証することだった。捜査が長引くほど資料は増えたが、犯人へ近づいた証拠と、古い誤りを新しい紙へ写しただけの記録は見分けにくくなっていた。
エドガーは模倣犯が残した協力者を仮説欄へ置いたが、本文には移さなかった。傷は必ず二十か所で、幅、形、深さが一致する。槍傷以外の外傷はなく、争った形跡、防御創、拘束痕もない。遺体と現場から血液が消えている。この条件を一つでも欠く事件を、本物の列へ混ぜることは許さなかった。
エドガー・ハルトは都市ごとの検視用語を統一した。ある国では創の深さを指幅で記し、別の国では金属棒で測る。紙の上の一致が測定法の違いで生まれた可能性を消すまで、同一犯とは書けない。怪物という言葉は新聞に任せ、捜査班は誤差を数えた。
模倣犯が本物と同じ状態で殺されて以来、報道機関にも疑いが向いた。しかしクララは記事を止めれば地方の警官が同型事件に気づけないと反論した。公表すれば模倣を招き、伏せれば過去の死体が孤立する。エドガーは二十という数字を伏せたまま、照会に必要な特徴だけを各署へ送った。
夜、無傷の両手の写しは封印箱へ戻された。容疑者像はまた一つ崩れた。男とも女とも、単独とも集団とも決められず、被害者の階級、職業、信仰、移動歴にも共通項は残らない。
「分からないことを、分かった形に整えるな」
エドガーは報告書の結論を空欄にした。犯人の声も顔も紙面には現れない。残るのは同じ二十の穴と、血のない静かな部屋だけだった。




