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友情(仮)の夜明け

 光の花騒動で森全体をきらきらに染め上げた夜から、どれくらい眠れたのかわからない。

 気づけば空は薄桃色に染まり、夜明けの風が頬を撫でていた。


「生きてる?」


 まず、その事実を確認した。

 爆発も暴走も起きていない。

 光の花は夜明けとともにしおれ、森はほぼ元通りになっていた。


「はぁ、よかった」


 胸を撫で下ろすと、近くで「ぷにっ」と音がした。

 いつの間にか私の胸の上で、ぷにコーンが丸くなって寝ていた。

 重くはないけれど、精神的な重力はすごい。


「おはよう、ぷにコーン」


「ぷに(半覚醒)」


 ぷにコーンがぺちぺちと私の頬を触り、再び寝落ちした。

 その無防備さに、胸がまたぽわっと――


「あ、やば」


「止まれ!」


 突然頭の上から声がして、私はびくっとした。


 木の枝の上に、カイが座っていた。

 片手には剣、もう片方の手には朝露のついた草を口に咥えている。


「朝から高い場所にいるのやめてください、心臓に悪いです」


「お前が暴発しやすいから高いところに避難してんだよ。地上が危険地帯だからな」


「そんな悲しい理由で……」


 カイは身軽に枝から降り、私の前に立った。


「まあ、昨夜は思ったよりひどくなかった」


「ひどかったですよね!? 火の鳥、光の森、鹿が光合成で進化しかけてたし」


「でも生きてるだろ」


「それは、まぁ……」


「それに——」


 カイは少しだけ目をそらして言った。


「最後の方、ちゃんと抑えられてたじゃないか。胸がぽわってなる前に止まろうとしてたし」


「見てたんですか?」


「見えるだろ、あれだけ顔に出てればな」


「恥ずかしい……」


 ぷにコーンが私の腕をぱしぱし叩きながら「ぷに!」と賛同。

 恥ずかしいのを共有しなくていい。


 森の奥で輝く光。朝日かと思ったら、違った。


「おはよう、我が運命の仲間たちよ!」


「帰ってきた!」


 アレク王子が、朝日を背負いながら登場した。

 なぜか後光までついている。いや、それ光の花の残り香じゃない?


「昨夜は素晴らしかったな。自然と魔術と感情が混ざり合い、まるで友情の夜のようだった」


「そんなロマンチックなものじゃなかったですよ!? どちらかと言えば災害の夜!」


「どちらでもいい! 結果、我らの絆は深まった!」


「勝手に深めないでください!!」


 カイがこめかみを押さえる。


「アレク、お前は最後どうしてたんだ」


「私は光の木の下で未来の構想をしていた」


「王国の未来か?」


「いや、ルナとの未来だ」


「未来いらない!!」


「ぷに!?(動揺)」


 ぷにコーンが私の肩に乗って全力で否定した。

 ありがとう。でも揺れるから落ちる。


「まあまあ、早朝から騒ぎすぎるな。朝は静寂をもって始めるべきだ」


 アレクがそう言って、優雅に両手を広げた瞬間、森のすべての葉が一斉にシャラと鳴った。


「ちょっと待って! また何か呼び起こした!?」


「えっ? 私はただ朝の空気を讃えただけだが?」


「それがダメなんだってば!!」


 カイがアレクの腕を掴んで固定する。


「今日は一切想像魔術は禁止! 手を振るだけでも現象が起きるんだからな!」


「私は存在そのものが美しいので」


「だまれ」


「ひどい!」


 私は苦笑しながら、荷物をまとめ始めた。


 レヴァリアまではまだ数日かかる。

 こんな調子で本当に辿り着けるのか不安になるけれど、朝の風は心地よく、夜の混沌の気配はすっかり消えていた。


 そこでふと気づく。


(あれ? 私、ちょっとだけ前向き?)


 自分で驚いた。

 普段なら前向き→膨張→爆発で、前向きは危険物扱いなのに、今は、胸がほんのり温かいだけで暴走しない。


「わたし、昨日より怖くないかも」


 つぶやいた途端、

 背後でアレクが勢いよく近づいてきた。


「ルナ! 今、素晴らしい言葉を発したな!」


「やめて近い! 近いから!!」


 カイがアレクを後ろに引きずり、ため息をつく。


「まあ、悪くないな。仲間と一緒に危険を乗り越えれば、多少は前向きにもなる」


「……仲間」


 その言葉だけで胸がまたぽわっとする。

 でも今度は、ぷにコーンがすぐ肩を押してくれて、暴発しなかった。


「ありがとう、ぷにコーン」


「ぷに♪」


 朝の光が差し込む。

 木々が揺れ、空はどこまでも青い。


「よし、行くぞ」


 カイが歩き出し、アレクは髪を風に揺らしながら後に続き、ぷにコーンは私の肩でぽよぽよ跳ねている。


 私は少し深呼吸して、一歩踏み出した。


(これって、友情? いや、仮の友情くらいかな)


 でも確かに、誰かと旅する心細さは和らいでいた。


 そして私は、小さく笑った。


「今日も頑張れる気がする」


 その瞬間、後ろで小さなポンという音がした。


「ルナ! いきなり笑うなって言っただろ!」


「ご、ごめんなさい!!」


 朝の光に、カイの叫びと私の悲鳴が吸い込まれていった。

 少し騒がしいけど不思議と悪くない。

 友情(仮)の旅はこうして続いていく。

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