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潜む者の正体

「な、なんなんだよぉ……! どうして、こんなっ!」

「喚くなっ! さっさと走るんだよ!」


 放棄された建材、それらに積もる埃を巻き上げて。

 旧死体処理場で作業に当たっていた業者の二人が駆けていく。


「だって、おかしいでしょ! 放棄された施設に、ゲートも無いのにインベーダーが出るだなんて、こここ、こんなのホラー映画そのものじゃないですか!?」

「ホラーっつーかモンスターパニック物じゃねぇか?」

「冷静にツッコまなくていいんすよッ!」


 余裕の無さから生まれる、馬鹿なやり取りを交わしながら。

 それでも二人は、後方から迫り来る不快な音。床や壁、天井に至るまで敷き詰められた廃材の壁から逃れようとする。

 作業中であった彼らの背後に突如として顕現した廃材の壁。その中心にはインベーダーの心臓部である魔核が、煌々と輝いている。


 魔核から流出する魔力で強化され、投射される廃材。それは、インベーダー用の強固な建材を粉砕するほどの威力を誇っていた。

 誰も当たらなかったのは、幸運としか言いようがない。彼らは混乱が場を制する前に、作業員へ外に逃げるよう指示を出し、殿(しんがり)(つと)め──今に至るのだ。


「ああっ、ちくしょう! 今日は最悪だ、最低だ!」

「だから口より足を動かせ! 外に出りゃあアストライアの部隊に保護してもらえるだろうよ!」

「来てなかったら!?」

「仲良くお陀仏じゃねぇか!?」

「ィヤダァアアアアアアッ!」


 既に逃走経路に当たる廊下も揺れ始め、建物全体が崩れかねない。そんな考えが脳裏をよぎるほどには切迫している。

 二人の鼓膜には遠くから一定の間隔で鳴動する音も聞こえており、命のカウントダウンがが近づいていることを察していた。

 縁起でもない未来を想像する二人の元へ再び廃材が投射されようと、壁が不気味に大きく脈動する。一つ、二つ、三つ……棘のように鋭く尖った弾丸が生成。


 これは、避けられない。後ろ目で絶望の光景を見てしまう。

 二人とも前を見ずに気を取られてしまった……そこに、黒が差す。バイクだ。

 排気音を鳴らして頭上を跳び、着地時のタイヤが擦れる匂いと音に二人は思わず足を止める。

 緩やかに流れる視界に捉えるのは、夜叉の後ろ姿。


『ハッ!!』


 廃材の弾丸が射出されるよりも早く。

 短い叫びと共に、廃材の壁に当たる直前で急ブレーキ。

 そして片足を軸にアクトチェイサーを浮かべ、後輪に纏ったヤシャリクのエネルギーを解き放つ。

 衝突し、爆音が轟き、炸裂。インベーダーが纏う廃材は散り、残った一部は魔核ごと通路の奥へ勢いよく押し戻された。


「……は、なん……助かった?」

「おいおい、夜叉さんよぉ! 来るのが遅くねぇか!?」


 呆然と興奮。正反対の反応を見せる二人へ夜叉は顔を向ける。


『すまない。あのインベーダーの影響か、内部の構造が変形していてな。ルートを探るのに時間が掛かった。建物に残ったのは君達だけか?』

「ああ、俺らが最後だ。他の連中は外に出てる」

『入り口付近にいた彼らか……了解した。このまま脱出すれば、間もなくやってくるアストライアの救助部隊に保護してもらえるだろう』


 夜叉はアクトチェイサーを自動運転モードに切り替え、二人の元へ送る。


『戦闘の余波でどうなるか予想できない。それに乗って逃げてくれ』

「い、いいのか?」

『構わない。送り届けた後は、収納魔法で回収される。さあ、早く』


 無事に二人を見送った後に背を向けて、夜叉は吹き飛ばしたインベーダーを目指して疾走する。

 手応えはあったが、討伐には至っていない確信があった。接触の寸前、廃材の弾丸が盾となってエネルギーを防いだからだ。

 そして相対した今なら分かる、上位より特位に近しい重圧。


『上澄みのインベーダーだな。それに不定形の姿となれば……』

『思い当たるフシは一つのみ、じゃな』


 通路の最奥。

 放置された工具に足場、廃材が点在する吹き抜けの大きな広間。

 その中心に座し、浮遊するのは目的のインベーダー。奴は周囲の残骸じみた建材すら取り込み、混ぜ込み、耳障りな音を立てて肉体を形成する。

 太ましい腕と脚の不格好なブリキの人形。手指やつま先の無い、ガレキの王。

 魔核を頭部に納め、単眼としたインベーダーの名は──


『無機物生命体、ゴーレム種の“ギルロス”! 面倒なのが出てきたのぉ!』

『ニューエイジが来る前に倒せればいいんだが……』


 夕焼けが差す決戦の舞台にて、ギルロスと夜叉が対峙する。

 間髪入れずにフツノミタマを抜刀。

 “天翔”で接近した夜叉が斬りかかり、それが戦闘開始の合図となった。

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