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ニューエイジ

『緊急警報、緊急警報! 商業区上空一〇〇メートル地点で中型ゲート発生!』

『インベーダーより感知される前に至急、該当区画の住民は近隣のシェルターへ避難を! アストライアの戦闘部隊はただちに出撃してください!』


 本土の首都であれば緊急事態だが、人工学園島にとっては日常的な文言。

 学園にも設営されている音響設備に促されるように窓の外を見れば、確かに遠くの空で楕円に広がる黒い穴が空いていた。

 次いでパフア専門校を守護する半透明の障壁が展開され、視界がぼやける。


「うっへー、ここんところ静かだったのにまーた出てきやがった」

「最近といっても一週間ぶりくらいでしょ」

「お昼でも夜でも関係ないとはいえ、中型かぁ。中位の魔物とか湧いてきそう」


 日常茶飯事な事態に生徒達は思い思いに意見を漏らし、窓際の席に座る生徒はぼやけたゲートを観察しようと目を凝らす。

 興味が無いとは言わないが、横目で見ていたオレの席にもリフェンスを筆頭に何人か近づいてきた。


「おい、アレはどうするよ?」


 人混みに紛れて顔を近づけてきたリフェンスに問われる。

 騒ぎに便乗すれば聴き取られることもないと判断し、答える。


「アストライアが手を回すだろ。それに──本土から来たっていう割に、驚いて無さそうなマヨイ先生がどう動くか気になる」

「あー……やっぱりそうなのか?」


 二人で警報が鳴ってから静かなマヨイ先生へ視線を向ける。

 本土に住む人々は学園島の住民に比べてゲートやインベーダーに強い拒絶、恐怖心、嫌悪感を抱く。恩恵よりもゲート被害の痛ましい事象に悩まされる機会が多いからだ。

 恨んでいるといっても過言でない心根からか、マヨイ先生は言葉を失っている……という訳でもないらしい。

 力強く窓の外、ゲートを睨みつけて。

 次いで情報端末であるマギアブルを手に取り、意を決したように口を開く。


「皆さん、落ち着いてください! 慌てず、警報に従い学校のシェルターに一時避難を!」


 マヨイ先生は良く通る声で、簡潔で的確な避難指示を出す。

 既に他のクラスも避難を始めているようで、廊下を人影が流れていく。オレ達も例に違わず、その人波に合流。


「マヨイ先生、引き継ぎは私がやる。君は……」

「はい。後はお願いします!」


 担当クラスの様子を見に来たイリーナ先生と一言交わしてから、マヨイ先生はためらうことなくシェルターと反対方向に駆けていく。

 その姿を流し見て、リフェンスは高く口笛を鳴らす。


「おーおー、隠す気一切なしかよ? けど、思った通りだな」

「本土の人間特有の混乱も無ければ恐怖を感じてるでもない。加えてゲートに対する並々ならぬ熱意」

「魔物、つーかインベーダーに対する凄まじい知識量はネイバーを上回る。そして……学園島以外の、一般に周知されていないはずの夜叉について、何か知ってる素振り」

「極めつけに学校の外へ繋がる出入り口に向けて走っていった……教育実習生というのは真実でもあり、嘘でもある」

「つまり、マヨイ先生の正体は……」


 リフェンスと共に、学校内にあるシェルターに向かう途中。

 窓の外、マヨイ先生の向かった教員用出入口の方向。学校の敷地内から三つの何かが飛翔していく。

 認識妨害用の魔法を掛けているのか、周囲の景色を水彩画のように滲ませたそれは……アストライアの最新鋭パワードスーツ、フレスベルグの機能。

 別名、対インベーダー実証試験汎用機体で組まれた三人編成の部隊。


「アストライアの最新部隊──ニューエイジの一員だ」

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