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ニューエイジは考える

 東京都近海に設立された、同等規模の面積を持つ人工の島。

 中心部の区画にパシフィック(Pacific)フェデレーション(Federation)アシュランス(Assurance)専門校──通称パフアを置く学園島だ。

 そこには世界各国に出現する異世界へ通じる穴“ゲート”。人類の文明と命を脅かす多種多様な怪物の“インベーダー”。その力を悪用する“怪人”。


 それらへの対処を主とする世界規模の国防組織“アライアンス”……その派生組織である“アストライア”の本部があった。

 数々の部署に別れ、それぞれが日々の日常を守るべく奮戦する者達で構成されている中に、一際異彩を放つ戦闘部隊がいる。


 最新鋭パワードスーツ“フレスベルグ”を装着可能な三人編成のグループ。

 パフア校に教育実習生として籍を置いている如月マヨイ、門倉リン、ダークエルフ族のエイシャで構成された独立戦闘部隊“ニューエイジ”。

 彼女達は常日頃から世間を脅かす天災への対応──そして“夜叉”と呼ばれる存在の捕縛を主として活動していた。


「「「はあ……」」」


 そんな三人は各々の荷物を抱えて商業区を歩き、深いため息を吐いていた。

 パフア校では夜叉の正体が生徒の可能性が高いということで、気取られないように捜索。加えて授業構成を考案、生徒間のトラブル解決、親御からのクレーム対応……教師としての業務に明け暮れて。


 アストライアでは遅々として進まない夜叉の捕縛。ゲート、インベーダー、怪人への対応に出遅れていることに対する上層部からの嫌味。勝手ばかりを垂れ流す連中へ反論する本郷博士を宥めることに気勢を削がれて。

 今日も今日とて二足の草鞋(わらじ)生活に翻弄され、疲労が蓄積していた。


「最近は夜叉の感知精度が上がってるからか、後手に回ってるのは理解してるけどさぁ。だったらアタシらの独断で装着できるようにしてほしいよね」

「その為に本郷博士が上層部を論破し、権限を渡すよう山の如く嘆願書をまとめていただろう。そう遠からず、我らは自由にフレスベルグを扱えるんじゃないか?」

「そもそも本郷博士が開発し、与えたパワードスーツなんですよ。その裁量は博士自身にあるはずなのに、装着は上層部からの認可が無ければならないって……」


 横断歩道の信号機に捕まり、生気の無い目で赤色のランプを見上げる。

 異様な雰囲気の彼女達に、周辺の歩行者はぎょっとして距離を置いた。


「“ニューエイジの正体を防ぐ為”“軽はずみにフレスベルグを使わせない為”“従来のパワードスーツより危険な為”……とか言ってたね」

「誰が何を使おうが危険に変わりは無い。罪は道具ではなく使用者にある……上の連中は何も理解していないな」

「というかフレスベルグには認識阻害魔法が展開されてますし、事態の対処には迅速な行動が不可欠。だからこそ高機動で現場に急行可能なフレスベルグを自由に使いたいんですけどね……」


 信号機が赤から青へ。

 どんよりとした空気を纏う彼女達から離れるべく、そそくさと早足で退散する歩行者を割いて歩き出す。


「他の戦闘部隊は許されてアタシらがダメな理由とは……」

「上層部は本郷博士が嫌いなのでは……」

「むしろ世界の悪は上層部……」


 日々の疲れからか、アストライアでのやり取りに隠された本音。

 その一端に気づいてしまい、さらに暗い表情へと沈む彼女達の前に。


「柊部長、こっちですよ」

「商業区の外れに店を構えているとは……」

「隠れた名店ってやつさ。見た目もまさしく、って感じだぜ?」


 歩道の向かいからやってくる見慣れた制服の男子が三人。

 一人は初等部六年に在籍する天宮司アキト、次いでエルフ族のリフェンス。

 マヨイは良い交流関係を築いている二人だ、放課後だし遊び歩いてるのも当然か、と。自身が担当しているクラスの生徒に対する認識を前面に出して。

 しかして後続に続く、アキトに部長と呼ばれた男……確か数日前、顔を合わせた覚えのある外見に首を傾げる。


「あれ、超能力科の生徒さんじゃない? 高等部の」

「名前は確か、柊ユウヤだったか。超能部(ちょうのうぶ)の部長であったな」

超力棟(ちょうりきとう)を治め、超能力に関する研究や論文の発表を主ととして活動している方でしたね」


 以前に尋ねた時は、わざわざ部室の前で待っていてくれて。

 部室内に招かれた時は、開け放った窓から入ってくる風に目を細めた。

 換気でもしていたのかと思えば、ユウヤは額を手で押さえ、わずかに視線を天井へ上げた後……何事もないように対応。


 ニューエイジとして把握しておきたいが、表立って名義を使う訳にもいかず。ただ教師として知見を得る為などと名目を掲げ、超能力に関して快く教えてくれた。

 超能力という目に見えない力以外は至って普通の好青年。

 そんな評価であるが故に、マヨイの印象には甘く刻まれていた。だが……


「天宮司君、リフェンス君と知り合いなのね」

「どんな流れで一緒に遊ぶくらい仲良くなったのかなぁ」

「超能力科自体、パフアの中でも異端な部門とされている。我らは特になんとも思っていないが……自らを出不精の集まりと自嘲していたほどなのに。いったいどういう風の吹き回しなのか」


 考えれば考えるほど、ドツボにはまりそうな熟考の最中。アキト達は迷うことなく、歩道脇にある路地へ姿を消した。


「……どうせ今日はどこにも用事がありませんし」

「直帰するのもアレだから食材でも買って帰ろうかと思ったけど」

「怪しげな路地に入っていった生徒達を発見して咎める。うむ、教師として何も間違ったことではないな」


 彼女達の心の内に湧いたのは興味と関心。

 そして野次馬根性にも似た出歯亀(でばがめ)精神であった。

 マヨイ達は互いの顔を見合い、頷いて。

 躊躇せず、アキト達が入っていった路地へ足を踏み入れた。

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