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リクの過去

 レイゲンドライバーに埋め込まれたアーティファクト、殺生石に宿る人造生命体のリク。なかば奇跡、禁忌にも踏み込んだ異端の遺物。

 ゲートで世界が繋がった黎明期に作り出され、長らくインベーダーとの闘いに明け暮れ続け、装着者たちとの交流により明確な自我を持つに至った。

 彼女の実在を知り得るのはヤシャリクの歴代装着者たちと、その存在をにわかに認知していた本郷タカシ博士のみ。

 しかし博士は半信半疑の念を抱いていた。何故なら自身はリクの声を耳にしたという経験が無く、実例も装着者の報告書にだけ記載されていたからだ。

 だが、信じることが出来なかった。未知なるインベーダーの材質が関わった発明品といえど、意識を持つほどに成長し進化するなどありえない。極度の疲労が招く幻聴・眉唾だと思っていた。

 だが、もし意識があるのだとしたら……殺生石が持つ吸収能力はインベーダーの命、魔力のみならず、装着者の生命すら蝕んでいる。

 これまでの装着者たちが衰弱し、それでも魅了されるように求め、命を落とした要因の一つを意図的に発生させているのだとしたら……あまりにも、危険すぎる。

 日本だけでなく他国の情勢や戦力も安定し、ネイバーとの交流も盛んにおこなわれ、様々な法定が固まりつつある頃。

 タカシ博士は当時建設途中であった人工学園島、アストライア武装開発研究機関にてレイゲンドライバーを凍結した。

 何層にも障壁を跨いだ最奥に最重要機密措置として、誰の手にも触れぬよう保管したのだ。

 これで殺生石が、ヤシャリクが、人の命を奪うことは無いと信じて──無情にも、その平穏は意趣返しの如くインベーダーによって覆された。


 ◆◇◆◇◆


 仄暗い監獄の中、吸収能力を制限させる目的で。

 一定の魔力供給、レイゲンドライバーの維持を補う最低限の電力で、空腹こそ感じずとも眠気とは無縁の体。

 想起するのは闘いの記憶。護国の為にとヤシャリクを求め、無理に使うなと進言しても聞き入れられず、散っていく装着者との過去。

 好んで奪ったんじゃない。止まらない、止められないのだ。

 どれだけ声を上げても届かず、命の簒奪は畏れられ、闘いが落ち着いてからは距離を置かれた。

 陽の光も届かない研究機関の奥でただ独り、肩を抱いて瞳を閉じることしか出来なかったのだ。

 転機としてやってきたのは、強力なインベーダーの破壊行為。

 施設の破損により、リクは凍結されていた監獄から機関の職員の手で持ち出されたものの、追撃によって放り出された。

 事故によって得た自由。だがアストライアに発見されれば、また孤独で寒々しい部屋に閉じ込められる。寂しくて、誰の手にも触れられない。

 そこからはどれだけ消耗しようとも構わない覚悟で体を実体化させ、ドライバーが発信する信号を隠蔽。研究機関から遠く、遠く離れたどこかを目指した。

 けれども初めての実体化に加え、人目に付かないように、数々の機能を隠したままの活動は消耗が厳しく。

 急速に、無念にもドライバー形態に戻ってしまい、魔力も電力も底を尽きかけ、万事休す。

 雪の降る寒空の下。胸にせり上がる不安と人造生命としての死が迫る恐怖に、リクは初めて救助を求めた。

 装着者以外の誰に聞こえるでもない、か細く消えてしまいそうなSOS。


「声がしたかと思えば、デバイス? 人工知能付き……君が助けを求めたのか?」


 だが、がむしゃらにも程がある声に応えた者がいたのだ。

 それこそが、雲間から覗く月明かりを後光に背負い現れたアキトであり、彼との初めての出会いだった。

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