表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
113/133

不穏の足音

 学園島の地下に広がるジオフロント。

 点検用の仄かな照明が作り出す暗がりに、二つの影が差す。


「驚いたなァ。まさか世を騒がすネビュラス様が、こんな日陰者のウチらに接触してくるなんて。しかもこんな所でとは……」

「お互い表立って動けない立場の人間。出会う場所も精査しなくては、余計な(やから)に目を付けられてしまいますからね」

「ちげぇねぇ。んで、金は持ってきたが──目的のブツは?」


 豪快に笑う男はアタッシュケースを掲げ、本題に入った。

 対するもう一人……志島カリヤも同様に、厳重な封が施されたケースを男の方へ差し出す。


「どうぞ。こちらがネビュラスの誇る怪人化薬、ああいえ……アナタ方に言い換えれば、麻薬になります」

「ハッハッハァ! そうだそうだ、間違えてもらっちゃ困るぜ」


 男は志島カリヤのケースと自身のアタッシュケースを交換。

 そのままお互いに、流れるように封を開き、中身を確認し合った。


「ふむ……現金にして三〇〇〇万、確かに頂きました」

「こっちもだ。麻薬一〇キロに加えて注射器、専用アンプル……ふっ、良い商談が交わせたな」

「ええ。このような業界に身を置く者として、好ましい関係性を築いていきたいものです。ああ、そちらのケースに用法用量の注意書きを記した書類を添付しておきましたので、きちんと守ってくださいね」

「分かってらぁ。んじゃ、また機会があれば頼んだぜ」


 目的を達した男は踵を返し、ジオフロントの奥に消えていく。

 その背を見送り、カリヤは小さくため息を吐いた。


「ネビュラスの目的へ到達する為とはいえ、反社組織へ渡りを付けねばならないとは。嘆かわしいものです」

『疑問。何故彼らに怪人化薬を譲渡したのですか。我らの崇高へ辿り着くには、不穏分子を取り除き、証拠は隠滅すべきだと判断します』


 独り言への返答に、ネビュラスの人工知能ミュトスが電子音を鳴らす。

 端末越しの問い掛けにカリヤは考えるふりをして、応える。


「構わないさ。彼らがネビュラスに接触する事は二度となく、辿り着くことは決してない。体の良い金ヅルとして機能してもらった上で、アストライアを混乱させるには十分すぎる」

『肯定。ネビュラスは慢性的な資金不足であり、資材も不足しております。資金源の確保は急務と言えましょう。同時に、アストライアへ足跡を残さない選択……慧眼だと考えます』

「ふふっ……私達がぬくぬくと研究に勤しむ間、彼らが麻薬を売り渡し、学園島に浸透。その影響と脅威は日増しになっていくだろう……正義を掲げる者達がどう動くか見物(みもの)だな」


 今後の展望と野望を口にして、カリヤは別の道へ姿をくらました。


「さて、ネビュラスの最高傑作──天宮司アキトの捕縛。怪人化薬の完成度を遥かに高める存在として、彼の確保手段も考えなくてはな」


 ◆◇◆◇◆


「さてさて、荒稼ぎさせてもらいますかねェ」


 ジオフロントを出て、ビル街に出た豪快な男。

 彼はアタッシュケースを日差しに掲げ、卑しい笑みを浮かべる。


「異世界と繋がって以降、自身の能力に苦しむ新世代の連中」


 念じるだけで魔法に等しい現象を引き起こす超能力に目覚めた者。

 ネイバーのように迫害の経験に遭ったことのある、肩身が狭い者。


「世の中を倦厭(けんえん)してる芸能界」


 多種多様なネイバーの出現でお株を奪われた、芸能に生きる者。

 鮮やかな光の裏でひしめく羨望と憎悪の闇をひた隠しにする者。


「ああ、同業の奴らに渡すってのもアリだなァ。もしくは……異世界側の、ってのもイイかもな」


 豪快な男と同じくして、社会の闇に潜む暴力的な背景を持つ者。

 異世界のセオリーや価値観のままに、盗賊紛いの動きをする者。


「ハハッ、楽しくなってきやがった……!」


 脳内に張り巡らせた流通ルート、売買の方法、利潤の確保。

 悪から悪へ。学園島に蔓延る害意の連鎖が、密かに始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ