異世界美少女エリス チート魔法で現代無双~魔法の代償と復讐の果て~
異世界美少女エリス<エコーピックの魔法>
佐々木真一は、会社の帰り道で奇妙な光景を目にした。薄暗い公園のベンチに、一人の美少女が座っていた。銀髪が月明かりに輝き、その目は何かを探し求めるように鋭く光っている。
「あなた、私を見つけられるなんて運がいいわね」
彼女が言った。驚く真一に、美少女は名を名乗った。「私はエリス。この世界には本来、存在しないものよ。でも、退屈だから少し遊んであげるわ」
真一が目をしばたたかせていると、エリスは薄い紙切れのようなものを彼に差し出した。それは、耳に装着する奇妙なデバイスだった。
「これをつけると、特別な能力が使えるわ。音が導いてくれるの」
「音が…導く?」
「名前は『エコーピック』。その音の正体を知ることで、答えを得られるのよ。でも、使い方には気をつけることね」
エリスは謎めいた微笑を浮かべると、次の瞬間には消えていた。
真一は半信半疑ながらも『エコーピック』を耳につけてみた。すると、周囲の音がこれまでとは違った響きを持つようになった。たとえば、オフィスでこぼれた同僚の独り言や、自動販売機の釣り銭口の音から、隠された情報を得られるのだ。
ある日、財布を落とした真一は試しに『エコーピック』を使った。すると、公園の植え込みから「ここだよ、ここ!」と小さな声が聞こえる。その声に従うと、本当に財布が見つかったのだ。
「こりゃすごいぞ…!」
以来、真一はこの能力を日常のちょっとした困りごとの解決に使うようになった。鍵をなくした時、次に訪れるラーメン屋での当たりスープの選択。音が、彼を正しい方向に導いてくれるのだ。
だが、やがてその使い方が変わり始めた。
ある日、元婚約者の由美が職場に現れた。彼女は以前、真一を蔑んだ挙句、裕福な男に乗り換えた過去がある。
「あら、まだこんなところで働いてるの?」
あからさまな侮蔑に、真一は心の奥底で怒りを覚えた。『エコーピック』を通じて、彼女の持ち物から聞こえる音を聞き取った。
「財布の中のカード…これ、偽造じゃないか?」
声がそう告げた。その情報を使い、真一は巧妙に由美の信用を失墜させた。それからというもの、彼はこの能力で自分を見下した相手を貶めるのに使うようになる。取引先の弱みを握り、競合を出し抜き、復讐の快感に酔いしれた。
だが、その代償は思わぬ形で訪れる。
真一が会社の重要なプロジェクトを支配しようとした時、音が次第に混乱を始めた。『エコーピック』は、真一の心の声さえも拾い上げ始めたのだ。
「もっと手に入れたい」「誰も俺に逆らえない」――欲望が増幅し、頭の中が雑音で満たされる。耳を塞いでも音は止まらない。
ついに、彼は精神的に追い詰められ、全てを投げ出した。オフィスから逃げ出し、公園のベンチでうずくまった彼の前に、エリスが再び現れた。
「言ったでしょう? 使い方には気をつけてって」
彼女の言葉に抗う力は、もう真一には残っていなかった。
「おしおきの時間よ」
エリスが指を鳴らすと、『エコーピック』が蒸発するように消えた。そして、音が完全に消えた。彼の周囲には、ただの無音が広がる。それは、あらゆる情報から隔絶された世界だった。
日が暮れるまで、真一はその静寂の中に座っていた。音のない世界で、自分がどれだけ傲慢だったかを考え続けた。
翌朝、彼は心を入れ替え、普通の生活を取り戻すことを決意した。復讐の快感など、一瞬の虚しさに過ぎなかったのだ。
最後に、彼はふとエリスの言葉を思い出した。「音が導いてくれる」とは、真実だけでなく、自分自身の声を聞けという意味だったのかもしれない。
真一は耳を澄ませた。そこには、鳥のさえずりと街の喧騒が戻ってきていた。