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更新が遅れてしまい申し訳ないです。

明日の朝までには最終話まで掲載できると思います。

「――ラース、モンスターが来てるの! 早くやっちゃってよ!」


 オレはその言葉に溜息を吐きながら、ゆっくりと起き上がる。せっかくアレクシアと出会えたのに、それを奪っていくとは許せない。


 オレはモンスターたちに視線を向ける。迫りくるモンスターはオーク。その数は十匹ぐらいか。


「あ、私を使う? ついに使うの?」


 横で美女が嬉しそうに騒いでいた。


「良いわよ! ラースなら特別にこの私を使わせてあげる! でも特別なんだからね! 聖剣を握ることが出来る人間なんてそういないんだから」


 オレはそんな美女に視線を向けることなく、その頭を鷲掴みにすると大きく振りかぶってオークへと狙いをつける。


「ね、ねえ、持ち方が違うんですけど! もしかしてだけど私を投げようとしてる? ねえまさかよね? こんな美女にそんなことしないわよね?」


 オークまで数十メートル程。オレの力があれば、確実に届かせることが出来る。


「この鬼畜! 悪魔! でも、それが好き!」


 美女はなぜか顔をほころばせながら、太腿をスリスリしていた。実に気持ちの悪い光景だ。オレの不快指数が急上昇する。


「消えて無くなれ!」


 オレはオークに向けて手につかんだ美女を勢いよく投げる。


「イヤだー!」


 美女がすさまじい勢いでオークへと向かって行った。オレはその様子を全て見届けることなく、オークに背を向けて歩き出す。


 酷いと思う奴らもいるかもしれない。でも、そんなことは思わないで良い。こんなことをしてもアイツは傷一つつかないとオレには分かっているから。だから、オレを責めないで欲しい。オレもアイツじゃなければこんなことをしていない。むしろ、オレは相当紳士的な方だと思う。


 突然、オレの背後で強い光が生じた。まだ昼間だというのに、辺りを照らし出す真っ白な閃光。


 その後、背後からすさまじい音が鳴り響き、爆風がオレを襲う。


 背後をちらりと確認すると、そこにはもうオークはおらず、大きな窪みの中心に先ほどの美女が立っていた。


「ねえ、これって私を使ったってことで良いよね? ね?」


 美女がオレの方に勢いよく走ってくる。その姿はさながら飼い主に駆け寄る子犬のようだった。


 オレはその姿に溜息を吐きながら、美女を待つことなく足早に逆の方に歩き出した。


 ――どうしてこんなことになってしまったのだろうか?


 心の中で呟きながら。




「――何であんなことしたの? 私美女なのよ? 普通、男だったら話しかけてもらえるだけでも嬉しいはずなのに、あんなひどい仕打ちをするなんて。ラースはちょっと頭おかしいんじゃないの? 一緒に回復魔法が使える人の所に行ってあげようか? ね? 一人だと怖いんでしょ? 私が一緒に行ってあげるから。あれ、もしかしてこれって私とラースがデートするってこと? なんだ、ラースも何だかんだで私のことが好きなのね! むしろ好きだから私のことを雑に扱っていたのね。愛が! ラースの私への愛が重い! でも、私はその愛を喜んで受け止めてあげるわ! さあ、どこでも良いわよ。受け止めてあげる」


 ――マジでうるせえ。


 オレの背後で美女が何か一人ではしゃいでいるが、無視をしてオレは舗装されていない道を歩く。


「無視なの? また無視なの? そんなに放置プレイが好きなの? 良いわ、私もラースの趣味に付き合ってあげる。私がその変態的な性癖の捌け口になってあげる」


「……はあ」


 オレは何度目か分からない溜息を吐きながら、後ろの残念美女に身体を向ける。


「……お前少し黙れ」


 飛び切りの蔑んだ視線を向けるが、その美女には何の効果もなかった。


「お前って呼ばないでよ! いや、お前って呼ばれるとゾクゾクするけど、私には『カテナ』っていう名前があるんだからそっちで呼んでよ!」


 オレはカテナを無言のまま見つめる。カテナはオレに見つめられたことが、恥ずかしいのか手を身体の前で重ね合わせながらモジモジしていた。


 真っ白な長い髪に透き通るような染み一つない肌。胸は貧しいが全体的にスラッとしていて男受けするだろう。そんな彼女は純白の服を着飾っており、上から下まで彼女は真っ白で、神々しく輝いて見える。


 そんな彼女は聖剣だ。いや、何言ってんだと思うかもしれないがこれは事実。オレも最初は信じることが出来なかったが、実際に彼女が聖剣へと姿を変えるのを何度も目の当たりにしている。


 そんな聖剣であるカテナとオレがどのように出会ったのかを今回はお伝えしよう。




『――そこのあなた、私を抜いてくれませんか?』


 誰かがオレに話しかけてきた。それはこの場には似つかわしくない透き通った女性の声。オレはその声を発した女性を確認するために周囲を見渡すが、オレ以外にこの場に生きている人間は誰もいない。


 オレの前には装飾品や宝石、お金などの山が、背後には胴体と首が切り離された大量の人間の死体だけ。この死体は冒険者であるオレが依頼として受けた野盗殲滅の結果である。近頃、こいつらのせいで外部からの物資が届かずに困っていたのだ。オレのお気に入りの店もそのせいで値上げをせざるを得ずにかなり迷惑していた。その腹いせもあって皆殺しにしたのだが、全くオレの感情に罪悪感など生じない。


 野盗殲滅後、オレが野盗たちが貯めた宝を頂くために宝の山の前で跪いた時にさっきの声が聞こえたと言う訳だ。


 しかしながら、どうやらオレの聞き間違いだったらしい。考えてみればこんな所に女性がいる訳がない。いたとしても野盗どもに慰み者として酷い目にあわされていて、あんな綺麗な声は出せないだろう。


 オレがそう思い、宝の物色を再開する。


『そこのあなた、聞こえているのでしょう? 今、金貨に手を伸ばしたあなたよ』


 同じ声が再び聞こえるが、先ほどと同様にオレの周囲に人影はない。気配を探ってみても近くには人はいないようだ。何かオレの認識を阻害するような魔法をかけられたのかと思ったが、オレが身に着けている魔法を感知する魔道具にも異常はない。


「……とうとう頭がやられたか? このところ仕事しすぎたからな」


 度重なる幻聴に、オレはこの依頼を終えたらしばらくはゆっくりと休もうと心に誓う。思えば、冒険者となってしばらく経つがまとまった休みを取ったことがなかった。ここらで一息つくのも悪くないだろう。そうと決まれば目の前にある宝を回収して早く帰らなければ。


『ねえ、聞こえているんでしょ? だったら少しくらい返事しなさいよ! せっかくこっちは話しかけてあげているのに。このチャンスを逃したらもう二度と訪れないわよ。だからこっちを向きなさいよ!』


 幻聴にしては長すぎるし煩すぎる。


『そう、そのまま視線を上げて。その先に綺麗な剣が見えるでしょ』


 オレはゆっくりと頭に響く言葉の言う通りにしてみる。オレの視線の先には確かに真っ白で綺麗な剣が横たわっていた。オレはその剣の方へと歩み寄り、剣を持ち上げる。近くで見るとその美しさを鮮明に認識することが出来た。こんなに輝かしい剣をオレは見たことがない。どんなに金を出そうとも、ここまでの剣を用意することは出来ないだろう。


 しかしながら、その剣には似つかわしくない太い鎖が巻かれており、剣を鞘から抜くことが出来ないようになっている。どうせならば刀身も拝みたいので、柄と鞘を持って思いっきり引っ張ってみた。


『あんた、もうちょっと丁寧に扱いなさいよね! これだから男は嫌なのよね。雑! 雑過ぎるのよ。もうちょっと優しく扱うことが出来ないのかしら』


 オレは手に持っていた剣をその場に投げつけた。


『あっ、あんた何するのよ! 何で投げるの? 頭がおかしいの?』


 オレは剣の周囲にある宝を手早く回収して立ち上がり、剣に背を向けて歩き始める。


『どこ行こうとしているの? 行かないでよ! えっ? 冗談よね? 冗談って言ってよ! 戻って来てよ! 一人にしないでよ!』


 ――こういうやつは関わらないことに限る。


『行っちゃって良いの? 私、聖剣よ? そんじょそこらの剣とは比べ物にもならないくらい切れますよ! 岩でも、モンスターでも、魔族でも、何でも簡単に切れますよ!』


 ――野盗に囚われている人もいなかったし、大金も手に入った。早く柔らかなベッドで休みたいな。明日はそのまま昼ぐらいまで寝て、その後もゴロゴロしよう。


『ごめんなさい、少し調子に乗り過ぎました! お願いします、助けてください! 自分じゃこの鎖を解くことが出来ないんです。この鎖を解いてくれるだけで良いので、どうか助けてください!』


 ――今日の夕食は何にしようかな? 臨時収入もあったことだし少し豪勢にいくか?


『いいの? このまま行くならこっちにも考えがあるわよ。このままずっとあなたの頭に語り掛けるから! 寝ている時も恋人と一緒にいる時も、いついかなる時もあなたの頭の中で叫び散らしてあげるんだから!』


 ……


『あなたの発狂する姿が目に浮かぶわ! 今ならまだ間に合うわよ? ゆっくりと寝たいでしょ? 恋人とイチャイチャしたいでしょ? だったら私を助けなさいよ!』


 ……


『あっ、ごめんなさい、言葉遣いを間違えました。一生のお願いです、お助け下さい!』


 ……はあ、仕方がない。このまま頭の中で叫ばれるのもかなり迷惑だし、助けてやるか。助けてそのまま関わらなければ良いだけだしな。めんどくさいし本当は助けたくはないけれど。


「……鎖を切ってやるよ」


『本当! 嘘じゃないわよね? ならさっさと切りなさいよ! さあ、早く』


 少しだけイラっとしてしまったが無心だ。これ以上時間を取られたくない。


 オレは手際よく鎖を断ち切る。


 すると、たちまち剣が輝かしい光で包まれた。オレはあまりの眩しさに手で目を覆う。数秒後、発光が収まったようなので、発光源である剣の方へと視線を戻した。


「ふー、何百年ぶりの外かしら」


 剣があった場所にはもうその剣は無く、代わりに純白の美女がたたずんでいた。


「人間、大儀であった! ご褒美に私――カテナを所有することを許可してあげる」


 この世界における基準では測れないほどの絶世の美女。どんな男たちも彼女とお近づきになりたいだろう。それ程の美女。オレも彼女のような美しい女性を見たのは人生で二回目だ。オレの記憶の中で彼女は二番目に美しかった。


 誰もが彼女を連れて歩いていると羨ましがるだろう。彼女も自身の美貌を理解しているようで、オレが彼女の前に跪くだろうという思いに疑いがない。


「――あ、お断りします」


 オレは彼女の言葉を適当にあしらうと踵を返して足早に歩き始めた。後ろから聞こえる騒音を無視したまま。

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