第一話
自分に、自信が持てない。一言で言うと、根暗。
俺、美園友麻はそんな人間だ。
人前に立ちたくない。出来ることならひっそりと生きていきたい。争うくらいなら勝ちを相手に譲る。そんな人間だ。
もちろん、自分の容姿には自信などあるわけがない。出来ることならマスクを被ってでもいいから顔を隠したい。でも、それだと逆に目立ってしまう。だからできるだけ前髪を伸ばして顔を見られないようにしている。でも、両目を前髪で隠してしまうと人にぶつかったとき、とてもじゃないけど対応できる自信がないので片目だけ前髪で隠している。そして自信のなさを後押しするように毎日パーカーのフードを深く被っている。もう、小学生のころからこの見た目になっているので、自分は慣れてしまっている。
中学生の頃は良かった。根暗でも、小学生の時からの友達が数人同じクラスにいたので何も疑問を持たれることもなく、また自分で思うこともなく中学時代を過ごしていけた。
でも、それは中学時代まで。の話。
高校生になり、思春期真っ盛りの多感なお年頃になった。中学時代の友達は別の高校に行ってしまい、友達が誰もいない状態から高校生活が始まった。
見た目が見た目で口数も少ない俺なので、高校生活数週間目からとある噂が立っていた。
それは、「美園友麻は黒魔術の伝道師で近づく者は呪われる」というよくわからない噂だった。
もちろん、黒魔術など使うわけもなくましてやその術を伝える偉い(？)地位などあるわけもなく、全くのでたらめなのだが、自分で否定していくのも労力を使うし、それに、俺から話しかけるとつい最近だと、消しゴムを拾って渡すだけでも
「ひっ！ごめんなさい！！(呪わないで！！)」
と、言う具合に怯えられてしまうので、俺からは否定できないのだ。
まぁ、人と関わらずにいられるのなら、俺は極力関わらないで生きていきたい。将来ニートコースかと思われるが、仕事は裏方をコツコツ出来る仕事に就きたい。そんな希望も持って今の高校生活を難なく過ごしていこうと思う。
…この時までは、そんなことを思っていた。
