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目が合った? そんなのきっと 気のせいだ  作者: 弍口 いく


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決意 その2

「案内してくれる?」

 知世の言葉にジューレは頷き、

「その前に」

 と、ハンバーガーが出てきた引き出しに目をやった。

 いつの間にか、そこにはおもちゃみたいな銃が置いてあった。ジューレはそれをみんなに配った。

「あなたたちが超能力を使えれば、こんなもの必要ないんだけど」


 こんなものでなにを撃つんだ? また銀色の服を着た兵士が登場するんだろうか?

「兵士は登場しないけど、なにが飛び出すかわかんないわ」

 ジューレはそう言いながら天上を見上げた。すると、直径3メートルほどの透明な円筒がゆっくりと降りてきた。

「あたし1人で、4人をテレポートさせるのはちょっとキツイから、エレベーターを使うわ、メインコンピュータールームは最下層にあるのよ」

 と、俺たちを促した。


 不審そうに見上げながら、知世を先頭に、佳奈と望結は円筒が降りてくる場所に集まった。最後に俺が……。

「頼んだぞ、我々の運命は君たちが握っている、君たちが最後の希望なのだ」

 俺たちを冷ややかに見ている白衣の連中の誰かが言った。本当にそう思っているのだろうが、あまり期待していないように聞こえた。


 透明の円筒は銀色の床にピタッと着き、俺たちはスッポリと中に納まった。


 俺は緊張感で呼吸困難になりそうだった。

 それは得体の知れない円筒が原因ではなく、メンバー3人がすぐ側にいるからだ。コンサートの時、最前列だって大喜びしていたが、手を伸ばして届く距離じゃなかった。でも、今なら触り放題……。


「なんですって」

 無意識に浮かんでしまったバカな考えを佳奈は読んでしまったのだろう、いたずらした子供を叱るような目を俺に向けた。

「いえ、あの……」

 しょうがないだろ、健全な16歳の男なら考えてしまうことなんだから。

 佳奈は呆れながらも優しく微笑むと、

「君、さっき言ったよね、〝俺1人なら、いなくなっても悲しんでくれる人はたかが知れてるけど、あなたたちが突然いなくなったら、何万人ってファンが悲しむ〟って、まるで、あたしたちだけが特別みたいに」


「ほんとのことだろ」

「それは違うわよ」

「えっ……?」

「あたしたちがいなくなっても、最初は騒がれるだろうけど、やがて忘れられる。あたしたちの代わりなんて、いくらでもいるんだから」

「確かにそうね」

 知世も同意した。

「人間の存在なんて、そんなものよ、特別な人間なんていやしない、だからあたしたちはいつも一生懸命やってるのよ」

 望結も頷いた。


 そんな彼女らを見て恥ずかしくなった。人気絶頂のアイドルグループ、スターダムを駆けあがった彼女たちは奢ることなく日々努力してるんだ。

 俺は一生懸命、なにかに取り組んだことがあっただろうか……。

 考えたこともなかった。


「それにしても、どこまで降りるの?」

 知世がイラついた。

 どのくらいのスピードで降りているのか解らないが、かなりの時間がかかっているように思えた。スターシップの大きさを物語っているようだ。

 この船って、何人ぐらいの人が乗っているんだろう?


「一般市民が約100万人と、運行に携わるスタッフが1万人くらいかな」

 俺の思考を読んだジューレが言葉で答えた。

「それって、船と言うより、都市が1つ飛んでるって感じね」

 望結が目を丸くし、知世は口笛を吹いた。


「あなたたちの惑星の科学って、地球より遥かに進んでるのね、もし、そんな異星人が移住して来たら、地球は大パニック間違いなし、地球人なんてアッという間に滅ぼされてたんじゃないの?」

「あたしたちはそんなに野蛮じゃないわ、地球人との共存を図っていたし」

「あなたたちはそのつもりでも、地球人が受け入れられたかどうか」

 確かに知世の言う通りだ。地球人同士でも人種や宗教、思想の違いで、絶えず対立してるんだもんな。

「結局、地球はあたしたちの生存には適さないとわかったけど」


 そんな話をしている間に到着したようだ。

 小さな振動と共に、透明の円筒が消えた。


「なによ、この重苦しい空気は!」

 透明の円柱が消えたとたん、望結が不快感に顔を歪めた。俺も同様、吐き気をもよおした。しかし、そんな風に感じているのは、表情から察するに、俺と望結だけのようだ。他の2人はキョトンとしながら室内を見渡していた。


「本当に移動してきたの?」

 知世の疑問も無理はない、そこはさっきまでいた部屋と変わりない銀色の世界だった。違っているのは空気だけ……。


「あ……」

 その時、頭の中に強烈なイメージが流れ込んだ。

 左右の壁が動き、迫って来る、天井が落ちて来るような恐怖。


 !!

 俺は思わず頭を抱えてしゃがみこんだ。


「なに!」

 知世の叫びが聞こえた。なにかが起きたらしい。

 俺は恐る恐る顔を上げた。

 さっきまではフラットな銀色の壁に囲まれた部屋だったのに、その風景は消え、複雑な計器が並ぶコンピュータールームに変貌を遂げていた。


「希輝が幻影を消したのね」

 ジューレが言った。

 また俺なのか? 俺がなにをしたって?


「ここが目的の場所なの?」

 知世の問いにジューレが答えた。

「違う、この奥よ」

 指差した先にはドアがあった。しかしノブは付いていない。

「じゃあ、さっさと行きましょ」

 望結は歩き出したが、その時、


『ここは、部外者が立ち入る場所ではない、直ちに退去せよ』

 どこからか聞こえて来たのは、とても穏やかで心地よいテノールだった。機械的な音声には聞こえなかった。


「誰? また白衣の連中でもいるの?」

「違う、メインコンピューターの端末よ、メインルームへの侵入を阻止しようとしているのよ」

「阻止って、どうやって?」


『立ち去らないのなら、強行排除する』

 心地よいテノールが言った。


 音調は穏やかだったが、排除って……。


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