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第97話

「火蜥蜴。……いや、サーラか」


「ああ、サーラだ。お前も女性形のようだが」


「我はベガだ」


「良い名ではないか。名付けを苦手とするシンゴが考えた割には洒落た名だ」


「生神は名付けが下手なのか?」


「ぅなっぅなっぅなっ」


「ぶしゅう」


 そこへコトラとブランが飛び込んできた。


「ああ。サーラも子供逃がすのにブラン使ったのか」


「ブランも高い戦闘力を持つ神獣だからな。ちゃんと戻ってきたのはヤガリに子供を預けられたか」


「ぶしゅう」


「さすが我が守護する一族に仕える神獣、えらいぞ」


 ドワーフに仕えるブランは、そのドワーフを守護するサーラに褒められて、嬉しそうに鼻息を吐いた。


「コトラ、よくやった」


「ぅなあーご」


 褒めた俺の言葉で、満足そうに鳴くコトラを見て、ベガは愉快そうに笑った。


「なるほど、小さい虎だからコトラか。思えば天馬故ベガ、なのかも知れん。まあいい、我はこの名を気に入った」


 しばらくほっこりした会話が続いたけど、守護獣二体の視線がオグロを始めとする魔族・魔物に向いた。


「さて、こ奴らをどうしてくれようか」


「痛い目に遭わせる……いや、足りんな。生まれてきたことを後悔するほどに痛めつけてくれようか」


「シンゴ、お前、前にいいことをしていたな」


「へ?」


「こいつら全員に【再生】をかけてくれるか?」


 ……うわ。キレてるわ。間違いなくサーラもベガもキレてるわ。


「じゃあ、【再生】したらしばらく俺ら外で待つから、飽きたら呼んでくれ」


 俺は、守護獣……と言うか美女二人にいたぶられる敵を見られるなんて嬉しいですごちそうさまですと言う性癖の持ち主ではないので、見ないことに決めた。


「レーヴェやミクンは見たいか? そう言うの」


「魔物相手でもそう言うところを見る趣味はない」


「あたしもそんな悪趣味はない」


 レーヴェもミクンも首を横に振る。


「プフェーアトは?」


「罰を守護獣が与えて下さるのだ、オレは問題ない」


 とにかく全員見たくない、と言うのが本音のようだ。


「じゃあ、外で待ってるみんなにもう大丈夫だって伝えに行くか」


 俺は魔物たち(特に魔族)に念入りに【再生】をかけると、外に向かって歩き出す。


「ひっ、ひぃぃぃ」


「た、助けろ生神、貴様はこの世界の守護神だろう!」


「うん、この世界を救うのが俺の仕事」


 俺は振り向かず言った。


「だから死物とは理解し合えないと言うか敵。しかも生物に手を出したんだから、そんな相手にかける情はないんだなあ」


 俺は最後にそのスペースを出る。


 風の扉が閉じる直前、魔物たちのなんとも形容しがたい悲鳴が聞こえた……いや、聞こえない、聞こえてない、聞きたくない。



「全員無事だったか」


 自在雲をおろし、待っていたヤガリとアウルムの笑顔が眩しい。


 洞窟の中で凄惨な現場を見てきていると、こういう笑顔にほっとする。


「出てきて早速で悪いんだが、この子たちと彼らに神威を」


 サーラ側が助けたケンタウロスの子供たち数十人と、肉体的には成人したケンタウロス十三人。


「さらわれたのはもっといるらしいが、姿を消したと言っている」


 多分、実験で死んだかしたんだろうなあ……。


「とりあえず、子供たちに【浄化】と、大人に【巻き戻し】を……みんな、やられたことは忘れることになるけどいいか?」


「構わぬ……」


「あのようなおぞましいことなど忘れ去りたい。出来るか?」


「肉体も記憶も巻き戻すから、忘れる。ただ、子供は……気を付けて【巻き戻し】しないとなあ……」


「ぼ、僕たちは大丈夫だよ」


 ケンタウロスの子供の一人が言った。


「忘れた方がいいこともあるぞ?」


 俺自身も幾つものトラウマを抱えてきたからよくわかる。起きたことは全て忘れない方がいいと言うヤツもいるけど、忘れた方がいい記憶ってのも確かにある。【巻き戻し】で忘れられるなら、忘れさせてやりたい。今回は糧になる経験ではない。ただ無意味に暴力を振るわれただけだ。


「俺の方は大した手間じゃないよ。お前ら全員忘れてしまった方が絶対楽だろ、覚えていていい記憶じゃないよそれ」


「とりあえず、守護獣様にお伺いすると言うのはどうだろう」


「プフェーアト?」


「守護獣様が忘れた方がいいと言うならば皆も納得するだろうし」


「そうだな、少し待つか」


「サーラは?」


「今洞窟内残酷ショーの開演中でお子様には見せられない状態が」


 ああ、とヤガリは頷いた。


「話は大人から聞いた。酷いことをするものだ。忘れた方がいいとお前が思うのも無理はない。もちろんアウルムや子供たちには大人にやられたことは話してない。子供に話すようなことじゃない」


「ありがとう、ヤガリ」


 ヤガリはこういう時にこういう気遣いができる。だからレーヴェも親しみを感じるようになったし、まだ反ドワーフ的なエルフにも神子と言うことを除いても多少は受け入れられているんだ。


 しばらく、俺やレーヴェの【回復ヒール】で怪我を治したり、泣き出す子供をなだめたりしながら、サーラとベガを待つ。


 しばらく、俺が持ってきた肉やパンを【増加】して、みんなで食べながら待っていて。


(もういいぞ)


 サーラから心話が聞こえてきた。


(終わった? 気ぃ済んだ?)


(まあやられたことを考えれば気が済んだとは言いづらいが、こいつらの方が限界だろう。我らは守護獣であって罰する存在ではないからな)


 ノリノリで痛めつけてた人が何を言うのやら。


(何が言いたい?)


 いけねぇ、考えが漏れてた。


(とにかく【再生】解きに行くから、解いたら確実に仕留めてくれよ?)

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