表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
92/155

第92話

 何だか血の臭いがぷんぷんする、と思ったら、するわけだ。


 黙々と切り刻む男によって限界まで切り刻まれたケンタウロスの肉体。


 クリスタルらしい透明容器の中、たっぷり培養液に浸された臓器……多分魔力受容体がずらぁり。


 解剖室だね、ここ。


 実験室でもあるね、ここ。


 魔力受容体とかの研究室だったりとかもするね、ここ。


「な、なんだ! 部外者は立ち入ることはできないはずなのに!」


 この世界でも実験の時は白衣なのか、白い服を着た魔物が、悲鳴を上げた。


 背後から感じる圧倒的な熱気。


「あの臓器は生きていると言えるか」


 ギリギリの声に、端末を向け、【再生】や【巻き戻し】を試すが、反応なし。


「神側の判断からすると、臓器だけでは生きているとは言えないらしい」


「まさか、生神……!」


「はい当たり。てなわけで、サーラ、好きなように」


 俺の横を熱風が駆け抜けた。


 魔物は悲鳴も残さず、魔力受容体と共に蒸発する。


 一瞬で温度は下がり、何もない部屋が出来上がった。


「ふう」


 こめかみに指を当てて、深呼吸しようとするサーラ。


「こういうのは、片っ端から焼いていっていいから」


「生き残らせるのはケンタウロスと天馬だけでいい、という話で大丈夫か?」


「ああ。もう遠慮も容赦もなく焼いちゃって」


 本道に戻ると、待っていた全員が複雑な顔をした。


「どうしたの」


「ろくでもないものを見たようだな。アウルムを置いてきてよかった」


 レーヴェが溜め息をつく。


「え、見たの」


「見てはいないが……あそこまで濃い、しかも新鮮な血の臭いがすれば、大体予想がつく」


「ああ……そうか」


 腕に鼻を近付けて臭いをかぐと、部屋の中をのぞいただけなのにぷんぷんする血の臭い。


「プフェーアト、子供たちはまださらわれているか?」


「他部族だから正確な人数は分からないが、子供が減り続けているとはいえあれだけしかいないと言うことはない」


「じゃあまだこの中にいるんだな」


「輸送されていない限りは」


「手分けして部屋を探すか? それとも先に天馬を?」


「プフェーアト、この神殿に他の出入り口はある?」


「ない。……、と、は、言えない。この神殿をここまで汚した連中が、他の出入り口を作らないとは誰も言えまい」


「サーラ」


「なんだ」


「サーラは温度を感じることはできる?」


「ああ。だが、それが?」


「この神殿の中に、温度を持っているヤツの数と場所を把握できるか?」


 よく、赤外線センサーとかで逃げ込んだ犯人とか人質の場所とかを特定する、あれ。


「やろうと思ったことはないが、……なるほど、それなら私がここにいても洞窟の出入り口を含めた全範囲をフォローできる。やってみよう」


 サーラは軽く目を伏せると、ゆっくりと呼吸した。


 一瞬、熱風が洞窟を駆け抜けて、サーラの元へ戻る。


「……シンゴ、端末を貸してくれるか」


「あ、うん、はい」


 サーラは受け取った端末に手を当てた。


「でもサーラ、サーラはM端末使えるの?」


「使えない。これは生神用の神具だ。だが、情報を送り込むことはできる」


 端末の画面に図面が展開した。


 太い一本の道と、そこから横に開かれた幾つもの通路。通路は迷路の様を成しているけど、反対側に伸びているもう一つの出入り口へへと収縮している。光点があちこちに灯っている。


「熱風で探った道はこの通り、光点は生物の体温の場所だ」


 光点は動くものと動かないものがある。動かないものは数個の広い場所に固まっていて、動くものはあちこちを移動して……まずいな。もう一つの出入り口に向かっている。


「サーラ。もう一つの出入り口を塞ぐことは」


炎水マグマを置いておけばいいか?」


「十分」


もう一つの出入り口の外に膨大で広大な熱源が現れた。


「……サーラ、やりすぎ」


「絶対逃げられんように」


「気持ちは分かるけど」


「草原には被害は与えない、安心しろ」


 安心していいんだろうか、それは。


 俺は精神を集中して、ヤガリに意識を飛ばした。


(……なんだ? 何かが……)


(俺だヤガリ)


(シンゴ?! ……ああ、サーラが言っていた心話か?)


(そうだ。神殿から抜ける後付けの出入り口は塞いだから、逃げる奴はそっちから逃げるだろう。だから、雲で出入り口を塞いでほしい)


(分かった。任せろ)


 これで何者もここから逃げることはできない。


「後は、この光点の塊に近付くヤツを潰して行けばいいか」


「二手に分かれるか? 単独行動の光点は結構多いぞ。ケンタウロスを人質に取られれば厄介だ」


 レーヴェの提案に、サーラが頷く。


「その方がいいな。天馬は痩せても枯れても守護獣だ、簡単に殺されることはないだろうが、ケンタウロスを連れ去られて実験を続けさせては意味がない。この実験はこの洞窟で潰さなければ」


 と、言うわけで。


 端末を持つ俺と、温度を感じ取れるサーラで別れて行動することになった。


 サーラとレーヴェとブランとミクン、俺とプフェーアトとコトラとグライフ。右と左に分かれていく。


「申し訳ない、生神様」


 プフェーアトが暗い顔で言う。


「オレたちがやらなければならないことなのに……」


「いや、これをやっているのは俺と敵対する勢力で、俺を殺す研究をしてるんだから、俺にもやらなきゃいけない責任がある」


 端末を見ながら、数個の光点が向かう部屋目指して歩く。


「この奥ですか」


「ああ」


 後付けの扉を見て、プフェーアトが背を向けた。


「ん?」


  ガンッ!


 後脚で蹴り飛ばされた入り口に、俺は端末を持って飛び込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ