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第76話

 ナセルさんの愚妹……アウルムさんは。


 怒り狂っていた。


「どうして気高きフェザーマンであるわたくしが! こんな所にいなければならないのです!」


 俺の顔を見るなりそう言う。


「いやもうフェザーマンじゃないでしょ」


 思わず俺は突っ込んでいた。


「翼ないでしょ」


「神がわたくしを見捨てるはずがないでしょう!」


「見捨てる、と言ったら?」


「気高い色と心を持つわたくしを、生神様は、見捨てると仰いますの?」


「このままならね」


 俺の言葉に、アウルムさんは顔を赤くしたり青くしたり。


「まだそのようなことを言っているのか」


 さすがのナセルさんも呆れ果てたようだ。


「守護獣様に、翼が必要ないと言われたようなものだろうに」


「そ、それは……!」


「だから、君に最後のチャンスをあげようと思う」


 俺の言葉に、アウルムさんは瞳を輝かせた。


「やはり神はわたくしをお見捨てにならなかったのですね! 流石は生神様、わたくしの価値を分かっていらっしゃる!」


「君にはやり直してもらう。それで同じに育つようなことがあれば、今度こそ見捨てる」


「やり……直す?」


「そう」


 M端末を取り出した俺に、アウルムさんの顔に脅えが走る。


「一からやり直すんだ。それで同じに育ったら、君は根っこから腐ってることになる。ミクンの言った通り」


「やり直すって」


 元々持っている神威をちょっと変質させて使うつもりだ。


 初めて使う力だから難しいけどだけど、そもそもM端末はパソコンのマウスと言ってもいい。キーボードは俺の頭の中に入っていて、マウスがなくても力が使えるのはヘルプ機能とかを頭の中で引き出せるので出来ると言うことは分かっている。


 M端末をいじりながら、やりたいことを強烈に頭の中にイメージさせる。


 すると、端末に「その力を使いますか? Y/N」と出た。


「生神様、何を……」


 ナセルさんの言葉を聞いて、軽く首を竦めた。


「やり直してもらうんだよ、本当に一から」


 Yをタップする。


 光が渦巻きとなって、アウルムさん目掛けて放たれた!


「きゃあああああ!」


 悲鳴が、光の中で薄れ、消えていく。


 そうして、光も消えた後には。


「…………?」


 きょとんとしたフェザーマンの幼女がいた。


 淡い金髪と金の瞳、身体の割に大きい金の翼。見た目はミクンと変わらない。


「様子はどうだい、アウルムさん」


 俺の言葉に、幼女は俺を見上げ。


「……お兄ちゃん、誰?」


「え?」


 ナセルさんが絶句した。


「【再生】をアレンジした」


 妹に駆け寄るナセルさんを見ながら、俺は説明した。


「【再生】って言うのは、いわば昔の姿に戻すこと。そのものの時間をいじってるわけだ。それを使って、アウルムさんの時間を巻き戻した。記憶も精神も子供の頃に戻した」


 端末に文字が浮かんでいた。


 【神威:巻き戻し/目標の時間を逆行させて若返らせる。脳も巻き戻すので記憶や精神年齢も巻き戻した年齢に戻す。元の年齢に戻すには、生神が解除するほかない】


 おし、上手く行った。


 ついでにステータスも確認する。


 【遠矢真悟:生神レベル60/信仰心レベル80100/戦闘レベル50

 神威:再生30/神子認定6/観察40/浄化40/転移10/帰還7/増加40/創造10/神具創造1/巻き戻し1/直接戦闘25/援護戦闘10

 属性:水5/大地3/聖15/植物4/獣4/岩3/鉱石3/炎10/風4/神10

 直接戦闘神威:[攻撃]水流ウォーター・フロウ・水/[防御]木壁プラント・ウォール・植物/[防御]水壁ウォーター・ウォール・水

 援護戦闘神威:[攻撃]武器強化エンチャント・ウェポン・鉱石+大地/[回復]回復ヒール・聖

 固有スキル:家事全般15/忍耐15/剣術25/盾術20/遠視10/索敵5

 固有神具:自在雲/導きの球/白き神衣/蒼海の天剣/水鏡盾/透過のマント/見通しの眼鏡】


 うんうん、順調に伸びてる。


 M端末を引っ込めて、俺はナセルさんの方を見た。


「アウルム、俺のことが分かるか?」


「お兄ちゃん、誰……?」


「ナセルさんが成長したから、今のアウルムさんには分からないんだよ」


「生神様……」


「言ったろ、一からやり直させるって」


 振り向くナセルさんに、俺は肩を竦めて見せた。


「子供の頃からやり直して、成長して記憶が戻った時、その時の記憶を恥じれるか。それを試す」


「……そう、ですね」


 ナセルさんがアウルムさんを一度、抱きしめた。


「この年頃から、俺たちが甘やかしたからだ……。金の髪と瞳と翼を、愛された証と言った……。生神様や多種族の間で育てば、この年齢からやり直せたら、もしかしたらかつての自分を恥じる心を持てるかもしれない……」


「お兄ちゃん? なんで? 何?」


 混乱したようなアウルムさんの声に、ナセルさんはにっこりと微笑みかけた。


「私はフェザーマンの長だ」


「嘘だあ、長はお父さんだよ」


「うん、昔はね」


 膝をつき、アウルムさんと視線を合わせて、ナセルさんは話す。


「これから、お前は修行に出なければならない」


「修行?」


「そうだ。お前が本当に誰からも愛されるフェザーマンになる為の修行だ」


「お父さんとお母さんには会えないの?」


「いずれ、分かる」


「?」


 きょとんとしたアウルムさんに、ナセルさんは微笑みかける。


「だから、頑張れ」


 アウルムさんはしばらくきょとんとした顔をしていたけど。


 にっこりと微笑んで頷いた。

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