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第49話

 ミクンはコトラと一緒に先頭を歩いている。


(迂闊なことは口に出せないな)


 思うと、そうだな、と同意する意識。


(まあ、アムリアに着いてボロを出さないための訓練だと思おう)


 サーラの意識だ。


 生神と神子は、信仰力が高くなると意思疎通……テレパシーとでもいえるものが使える。今んとこ使えるのはサーラとシャーナくらいだけど。


(ていうか、ハーフリングが生き物の意図が読めるなら、俺たちがこうして意思疎通していることもバレるんじゃ?)


(あれは種族の【スキル】。これは【神威】。スキルで神威は見抜けない)


 ならいいか。


「何考えてんの?」


「うお」


 唐突の声にはっと見下ろすと、真下から見上げる目線。


「な~に考えてたのかな~?」


 にやにやと俺の腹の辺りで笑うミクン。てか何時の間に俺の前にいた。俺全然気づかなかったんですけど?


「あたしのこと考えてたでしょー」


「……そうだね」


 ここでムキになって否定することもないと思ったので、素直に頷く。


「それもハーフリングの能力?」


「あっはは、ハーフリングじゃなくても分かるよ。突然入ってきたハーフリングがいれば警戒するの当たり前ってね」


 ん? と思ったら、ミクンはけらけら笑った。


「ほんっと物知らずのお坊ちゃんだね」


 お坊ちゃん……元の世界では傍から見れば大変な苦労人だと何回言われたか分からないけど……。


 まあ物知らずなのは確かだから黙っておく。


「お坊ちゃんって言われたのが不満だった?」


 ……不満、か? いや、違うな。ちょっと図星を突かれてどっきりしたって言った方が近いな。


「まあいっか。ハーフリングがどんなやつかってことを知らないわけでしょ? あんたら、この坊ちゃんにそう言うこと教えてないの?」


「ちょっと待って、何処が坊ちゃんなの」


「何が?」


「僕の、何処が坊ちゃんなの」


「そんなたっかそーな服着てて坊ちゃんじゃないなんて嘘でしょ」


 ……確かに……俺の服とマントは神具だからな……。高いって言うか唯一品だからな……。


 見通しのマントは見た目が地味だからいいけど、白き神衣は目に染みるような白とアクセントに青の入った、何て言うかすらっとした? みたいな服。


 元の世界じゃそんな服、金がなかったから買わなかったし。Sサイズ以外は大体着れたので古着を着回してたんで服装センスないし、こっちの世界来てあまりにも急展開すぎて気付かなかったけど、それまで着ていた服がリクスーだったんでエルフにもドワーフにもああ別の世界の存在だって認定してもらえてた節があるんで……。でもまあ、異世界の神? から世間知らずの坊ちゃんに、見た目はランクアップしてるようだからいいとしよう。


「世間知らずの坊ちゃんに教えてあげるとね。あたしたちハーフリングは小さい。目立たない。身軽で手先が器用。草原に住んでる分には平和でいいけど、他の種族の社会に入ったらやれることは少なくなる」


「確か、おばあさんやおとうさんが鍵師って言ってたね」


「うん。よく覚えてたね。とにかく、そう言う方面にでもきちんとした職を持てたら奇跡、みたいな感じなのよ、あたしらって。きちんとした職を持てない連中はゾロッといる」


「きちんとしてない職って……泥棒とか?」


「そ。当たり。だいせいかーい」


 ミクンはパチパチと手を叩いた。


「泥棒ならまだマシな方、中にはヒューマンの子供に間違えられやすいからって暗殺者アサシンやってた奴もいたって話」


「暗殺……」


「だから、草原に住んでるのはともかく、町に住んでるハーフリングはきっちり信頼できるかどうか見定めてから。そうじゃないと財布で済めばいいけどうっかり命まで取られるよって言われてる。そう言うのをあっさりパーティーに入れるなんて、……正直に言えばどうかしてるか、世間知らずのお坊ちゃんになっちゃうんだよ」


 どっちかって言えば……どうかしてる方かなあ……。


 歩きながらそんなことを考えてると、ミクンはあちこちちょろちょろしながら(前進はしてるけど)みんなを見ていた。


「不思議だなあ」


 ミクンは首を傾げる。


「不思議って?」


「あんたら、やっぱり特殊だよ」


 なんと。特殊とな。


「特殊。特殊も特殊。だって、考えがすっごく読みづらいんだもん」


「読みづらいって」


「あたしらが生き物の感情とかが読めるって言ったじゃん」


「言ってたね」


「そんなあたしらが読みづらいなんて、相当表に感情を出さない訓練をした人間くらいだよ。もしかして、本当に何処かのお坊ちゃんにその護衛?」


「だったらヒューマンだろ」


 ヤガリが呆れたように呟いた。


「おれが……ドワーフが護衛に向くと思ったか」


「私も護衛には向かんな」


 レーヴェも同意。


「護衛じゃなくて、仲間だよ」


 じゃあなんで、と言いたげなミクンに、俺は答えた。


「仲間?」


「ああ、そっちが近いな。世間知らずのお坊ちゃんと言うのもあながち間違いではないが」


「レーヴェ……」


「シンゴは遠い所から来たんでね、この大陸の常識を知らないんだ」


「サーラも」


「シンゴは無料奉仕が趣味だ」


「ヤガリ……」


「つまり、常識知らずでお人好しのお坊ちゃんってことね。OK」


「ぅな」


「ふしゅう」


「コトラも、ブランも」


 何で総出でえらい勘違いされた気がするよ。


「で、世間知らずのお人好しがわざわざアムリアまで行って、人を連れて西へ帰るつもりなんだ」


「そんなとこ」


 なんかご年配の日本人なら知っている水戸◯門の気分になってきた。


「ついでに大陸の色々なことを知ろうって話になったんだ」


「そっか。大樹海と無窮山脈を周って、今度はヒューマンの国に行こうって話になったのか」


 納得したようにミクンは頷く。


「その途中で何したの」


「周ってただけだよ」


 ミクンは露骨に「チッ」とした顔をしたので、多分誘導尋問しようと思ったんだろう。俺が大樹海や無窮山脈や草原を【再生】に関わったかを探りたいんだ。


 でも、バレるわけにはいかないしな。


 生神だってバレたら色々厄介になる。これ以上生神の正体を知っている人間は増やしちゃいけない。


 申し訳ないけど……ミクンとは途中で別れないとな……。

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