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第37話

「ここが神鉱炉だ」


 案内されたのは、採掘区からも居住区からも離れた開けた場所だった。


 何か大きな建物と熱気を期待していたけど、熱気もないし建物らしい場所もない。……確かに鉱山の中だから建物を建てる必要はないだろうけど……。


「がっかりと言った顔だな」


「あ、ごめん」


「いや、謝られる必要はない。あちらに普通の溶鉱炉はあって、そこは稼働しているんだが、鉄や金銀が限度、神聖銀やその他の特別な鉱石は神鉱炉でしか加工できないから、まだ完璧にこの鉱山は再生されたわけではない」


「う~ん……」


 俺は思わず考えてしまった。


「属性のことか?」


 ヤガリくんに言われて、俺は頷く。


「神鉱炉に足りないのは熱……つまり炎。俺の属性の中には炎がない。となると、神鉱炉を復活させるのは……」


「とりあえず見てはくれないか?」


 言われ、俺は炉の中を覗き込んだ。


 炉には……穴?


 深いぞ。


 かーなーりー深いぞー?


「神聖なる炎水えんすいが、昔は無窮山脈の一番奥に眠る「炎の道」と呼ばれる場所から導かれていた」


 エンスイ?


 即座に端末でタップしたところ、「溶岩」と言う回答が出てきた。


 なるほど、溶岩ね。


「世界が滅びに導かれ、炎水も沸き出す量が減り、終いにはこの通りだ。炎水がなければ神の鉱石は加工できない」


「う~ん……」


 俺は頭をガシガシ掻いた。


「溶岩……炎水が枯れ果てたって可能性もあるぞ……。とすると、やっぱり炎の属性がいるなあ……」


「炎水果てる時、神は炎の守護獣を目覚めさせる」


 ぼそりと鉱山長が呟いた。


「何それ?」


「無窮山脈に昔から伝わるおとぎ話だ」


 炎の守護獣。


 炎の属性を持つ神獣?


「工場長さん、詳しく教えてくんない?」


「……俺もしっかりとは覚えてないんだが、この無窮山脈にずっと伝わっていてな」


 ……無窮山脈の真の財宝は、炎水である。


 世界の始まりの時、ドワーフの守護神は、炎の守護獣を使わして、地の最も奥底に流れる炎水を神鉱炉まで導き上げた。


 炎の守護獣はそれを認めて長き眠りについた。


 地の滅びの時、炎水が枯れ果てたなら、新たなる神の訪れを待て。


 神は地の奥底へと赴いて、炎の守護獣を目覚めさせ、世界の再生と共に炎水を導き上げるだろう。


「……って話だ」


「あー……つまりだ」


 俺は頭を抱えたくなった。


「俺はこの山脈の一番地下まで降りて行って炎の守護獣を起こして炎水を持ってこなきゃならないってことか」


「おとぎ話だけど本当かどうかは分からない」


「神が実在していた世界でそこまでしっかり伝えられた伝承がただのおとぎ話ってことはないだろ」


 はあ~。


 思わずため息が出た。


「下まで潜るしかないかあ……」


「ぅなー」


 っと、そう言えば。


 灰色虎は岩山の王者とか神の獣とか呼ばれていたけど、守護獣とはどう違うんだろう。


 ヘルプをタップすると、すぐに回答が出る。


 聖獣、神獣は、人間が神の使いとして崇める獣。神に等しい力を持つこともあるが、神そのものではない。


 守護獣は、神の創り出した存在を守るために生まれた獣。守護神の力を受けた守護するものの化身でもある。


 つまり、炎の守護神は炎の化身でもあるってことか。


 神が去ると共にほとんどの守護獣もモーメントより去ったが、特に人間に親しい守護獣は眠りについたりしてこの神亡き破壊の時をやり過ごしていると言う。


 炎の守護獣も、そんな一頭なんだろう。


「う~ん」


「今更悩むことはないのでは? シンゴ様」


 レーヴェが声をかけてきた。


「真悟様はこの世界を再生するために降臨されたはず。ドワーフの守護でもある炎の守護獣様を見過ごすつもりはないだろう」


「まあね。ただ……」


 俺は息をついた。


「俺一人で行くしかないらしい」


「シンゴ?!」


「ぅなお?」


「何故だ」


「多分、この地下は溶岩地帯だ」


 俺は神鉱炉の穴を指して言った。


「溶岩ってのは俺の世界での炎水のことで、この底ではマグマがぐらぐら沸き立っていると思う。俺はこの服で守られるけど、水の属性魔法を持っていても全員熱と炎から守れるとは思えないし」


「そう……か」


「ドワーフのことを任せきりにするのは心が痛むが……」


「気にすんな。【再生】は俺の仕事だ」


「それなら、あれが役立つかもしれんな」


 鉱山長が「持って来い」と子供ドワーフに合図した。


 ドワーフ……最初にアシヌスを受け取ったあの子だ……は栗毛のアシヌスに乗って駆け去り、すぐに戻ってきた。


「これ! リウスと一緒に見つけたお宝!」


 ヤガリくんが目を見開く。


「まさか、神具か?」


「多分そうだと思う」


 ボロボロの布のようなものと、枠だけ残った眼鏡。


「ボロボロなのに破れないし壊れないから、もしかしたら神具かも知れなくて置いといたんだ」


 早速浄化する。


 ボロボロは落ち着いた灰色のマントと、金色のフレームの眼鏡に変わった。


「【観察】!」


【観察結果:神具「透過のマント」レア度S

 生神のみが装備できる大地の力を秘めたマント。大地を操ることができるが、それ以上に大地やそれに類するものを透過して進むことができる。透過中に呼吸困難になったりすることはなく、足元を透過してそのまま落ちることはなく、透過中は浮遊状態で前後左右に移動できる】


 なるほど……もいっちょ【観察】!


【観察結果:神具「見通しの眼鏡」レア度B

 生神と神子が装備できる、全てのものを見ることができる眼鏡。完全に光のない場所でもそこにある物の形を把握できるし、遮蔽物を通り抜けて向こうにあるものを視認できる。強い光や目つぶしと言った視界を遮るものからの防御もある。ただし闇の中では色の判断はできない】


「どうだ?」


「ああ。ここに俺が来ることを知っていて、その為に置いていた神具なようだ」


 俺は肩から足首までをすっぽり覆うマントを羽織った。


「これで、地下まで無事に行けるな」


「シンゴ、行くのか?」


「こんなものまで用意して俺が起こしに行くのを待っているんだ、起こしに行かないとな」

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