第24話
「【転移・原初の神殿】!」
ドワーフたちの御見送りを受け、俺たち一行はまずエルフの泉に集合し、そこから一番最初に来た原初の神殿に【転移】した。
俺とヤガリくんとブランは三回目だけど、シャーナやレーヴェ、コトラは初めてなので、クラっと来たら違う場所にいるという感覚に驚いていた。
「便利なのですね、転移は……」
「俺は自在雲も好きだけどね。景色流れていくあの感覚がいい」
神殿の一番神聖な場所らしい、祭壇を治めた小部屋に降り立った俺たちの、ブランの鼻が大きく広がった。
「どうした? ブラン」
ふんふん、とドアの向こうに鼻と視線を向けた。
「どなたかがここに辿り着いているのでしょうか」
シャーナが小さく首を傾げた。
「この神殿は神を信じる者にしか見えないし辿り着けない神殿です。つまり、神を信じ、そして困っている人しか入れないはずなのです」
「そういう人が辿り着いてる可能性があるってことか?」
「そうですね。まずはわたくしが出ますので、皆様方は後から」
レーヴェとヤガリくんは頷いて、いつでも攻撃できる体制を取りながらシャーナの背後につく。
俺は飛び出したがっているコトラとブランを撫でながら落ち着かせて、様子をうかがうことにする。
シャーナは扉を押し開けた。
ぎぎ、ぎぃ、と音がして、扉が開く。
びくり、と竦む気配がした。
「に、逃げ……」
「逃げる必要はありません」
シャーナが静かに言った。
「この神殿は、神を信じる方にしか開かれません。貴方達はここにいるのですからその条件は満たしています。そして私はリザーの神官長。貴方達を受け入れない理由がありません」
「リザーの……そうか、生き残って……」
ほっと息をついたのは、人間の家族連れ数組だった。
「だけど、ここにあるパンも尽きて……すみません、空腹が過ぎて予備の食料を全部……」
「大丈夫ですよ。お気になさらず」
「シャーナ、そいつらは安全なのか?」
リーヴェとヤガリくんが入って来たので、家族たちは更に後ずさる。
「安全です。ここは創造と再生の神をお祀りする唯一の神殿ですもの。世界の破滅の時、生神様を信じる者のみが入れる唯一の聖域。生神様の御認めにならない人は目にすることも出来ません」
「最大の聖域か」
リーヴェは不機嫌そうに呟いた。エルフの泉がオークに侵攻されるのが腹立たしいんだろう。
ヤガリくんも同様のようで、少し顔が不機嫌。
さて、どうフォローするべきか。ここで人間対森エルフ対ドワーフだなんて公式は作りたくないし。
右手でコトラを、左手でブランをモフモフしながら、俺はぼんやりと考える。
「シンゴ様」
「? ああ、何、シャーナ」
「神殿の周りを、今度は植物も再生していただけませんか?」
「おう」
俺は一歩踏み出す。
「誰、この人」
「変わった格好をしてるね」
そりゃあそうだろうなあ。俺は現代日本のリク◯ートスーツ姿だし。汚れてないからそのままとは言え、風呂に入って着替えてえなあ。
「この方は……」
「ああいい、いい、シャーナ。説明しても分かってもらえるか不明だし、俺の力が分かれば一発で分かるし」
俺はコトラとブランを従えてスタスタと外に出る。
一組の夫婦と、二人の子供を連れた母親と、娘を連れた父親と言う組み合わせが、不思議そうに続いて出てくる。
外に出れば、エルフの森に行く前に大地だけ【再生】して、植物がない地面が広がっている。
「じゃあ、【再生:大地/植物/獣】、行くぞ!」
光がぶわりと巻き起こり、俺から円状に広がっていく。
大地が割れ、木々が生え、小さな野ネズミから大きな狼までが【再生】された。
鮮やかなまでの緑。
「これ……森ってヤツ……?」
「死んだおじいちゃんが言っていた、これが、緑……?」
「【属性:獣】もあるから、動物も蘇ったみたいだな」
「大地を再生……?」
「これは……まさか」
「本当に、生神様?」
皆がこっちを見てる。
「一応そういうことになってる。まあ、大したことはしてないけど」
「大したこと、なんて」
レーヴェが言った。
「森エルフの聖域を再生したのが大したことでなければ何なのだ」
「無窮山脈も再生した正真正銘の生神が何を知らん顔して」
「だって俺自身がやったことってタブレット端末ポチっただけだもん」
「灰色虎をお助けになったでしょう」
「ドワーフにアシヌスを創ってくれたのも真悟じゃないか」
「だから俺ってポチっただけだもん。どっちかって言うとこの端末が偉い」
あ、と思いついて、俺は家族たちに端末を向けた。
「とりあえずキレイにしとくか」
「え?」
「【浄化】【再生】」
汚れも落ち綺麗に再生した服を着た家族が、呆然と立っていた。
「え……この服って、こんな色をしてたの?」
「身体がこんなにきれいになったのは初めて……」
「もうちょっとキレイにしたいなら、そこに川があるから、そこで体洗っても」
「川?!」
「これが水の色?!」
俺が指した川にまで驚く家族。
それだけで、余程大変な目に遭ってきたのだと分かる。
ブランがぽっくりぽっくりと歩き出した。
「どうした、ブラン」
ヤガリくんが一緒に出てくる。
ブランはぽっくりぽっくりと水辺まで行くと、川の水に口をつける。
「何だ、喉が渇いてたならそう言え」
「ふしゅう」
器用に口で水を飲みながら鼻息を吐き出すブラン。
「あっ、あのっ」
娘を連れた父親が、前に出た。
「本当に、貴方様が、生神様なのですか」
「そう呼ばれてはいるけどね」
「ならば……ならば」
父親は叫んだ。
「お願いです、どうか、私たちの村を助けてください! ……今すぐに!」




