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第19話

 咄嗟に端末を向けて【観察】する。


【ソルジャー・オーク:レベル10/敵対勢力に創り出された亜人種、オーク族の兵士階級。戦闘能力はノーマルを上回るだけでなく、本能を抑え込んで命令に従う知性がある。全てのオーク族に共通する性質として、形あるものを破壊することを幸福とする。特に聖地と呼ばれる神域を破壊することに生きがいを感じており、全てを破壊しつくした後は同士討ちを始め、最終的に自分の命をも破壊する破壊衝動の塊】


 これが九体。


【ソルジャーリーダー・オーク:レベル15/敵対勢力に創り出された亜人種、オーク族の兵士長階級。戦闘能力はソルジャーを上回り、また高い知性を誇り、ソルジャー・オークを指揮して戦うことができる。全てのオーク族に共通する性質として、形あるものを破壊することを幸福とする。特に聖地と呼ばれる神域を破壊することに生きがいを感じており、全てを破壊しつくした後は同士討ちを始め、最終的に自分の命をも破壊する破壊衝動の塊】


 これが残る一体。


「俺の戦ったノーマル・オークより強いのか」


 さっき見た神子たちの戦闘レベルはシャーナがレベル1、レーヴェが55,ヤガリくんは60、コトラが200と、戦闘力10でレベルが1になるんだろう。


 俺の戦闘レベルは3。ただレベル1だった時も水流ウォーター・フロウでノーマル・オークを蹴散らしたんだから、神の戦闘レベルは少し違うのかもしれないけど。


 で、オークはレベル10が九体、レベル15が一体。数では負けてるけど戦闘レベルでは屁でもないって感じになるんだが……。


 相手は連携攻撃を仕掛けてくると言う。連携どころか仲間とすら認めていないヤガリくんとリーヴェが狙われたら、ちょっと厄介かな……。


 いやでも、コトラ単独でも蹴散らせるレベルだから。


 とりあえず森エルフの皆さんには下がっていてもらおう。


「みんな下がってて」


「いや、我々も戦う!」


「戦わないで! って言うか実験だから!」


「実験?!」


「【援護戦闘】がどうなるか見てみたいから! それにどうせ近いうちにオークが山ほど出てくるから! 嫌でも戦わなきゃならなくなるから!」


 正直説得にもなっていない説得に、森エルフは思わず引っ込む。


 その隙に、ソルジャー・オークが三体、レーヴェに向かって襲ってきた。


「レーヴェ!」


「案ずるな!」


 レーヴェは舞うように剣を振り回す。


 オークたちの豚鼻が切り裂かれ、血が噴き出す。


「ぶひぃいっ!」


「この程度のオークなら、魔法を使わずとも倒せる!」


「そうだな」


 同意したのはヤガリくんだった。


 二体の攻撃をかわし、戦斧を振り上げて一体を真っ二つに切り裂く。


「ぴぎゃあああああ!」


 オークの真っ二つが風に溶けて消える。


「ぎゅい、ぶひひっ」


 装備が少し上等なソルジャーリーダーが口早に命じる。


 すぐにケガをした三体も含めた八体が陣形を組んで、レーヴェとヤガリに向かって攻め込んでくる。二人が助け合うことなんてないと確信した策略だ。兵士長ってだけのことはある、森エルフとドワーフの敵対関係を知っていたのか。


 だから、俺は叫んだ。


「コトラ!」


「ぅな?」


「リーダーをやれ!」


「なぅ!」


「レーヴェとヤガリくんは残りを蹴散らせ!」


「承知」


「了解だ!」


 陣形を組んだソルジャーの背後にいるソルジャーリーダーを、コトラはロックオンした。


「ぅなぅなぅなっ」


 レーヴェとヤガリくんを狙っているソルジャーの足元を、小さな体ですり抜けて、ソルジャーリーダーの前に出る。


 よし、一対一なら何がどうなってもどうにかなる!


 コトラは跳躍する。


 鼻面に噛みついて、首を捻りながら後ろに跳ぶ。


 その勢いで、ソルジャーリーダーの首が落ちた。


 すげ……レベル差ってこういうことなんだ……。


 ていうかコトラ神子にしといてよかった。戦闘力なら俺よりはるかに上じゃなかろうか。


 そして、ソルジャーリーダーの絶命の悲鳴を聞いて動揺したソルジャー八体が、あっという間にレーヴェとヤガリくんに葬られた。


「ぎゃああああああ!」


 血しぶきまで風に溶け、消える。


 オークの先遣隊はあっと言う間に消え失せた。



「おお……」


「オークどもを蹴散らした!」


「我らが騎士が!」


「灰色虎がソルジャーリーダーを一撃で!」


「おまけにあのドワーフでさえ四体を倒したぞ!」


 エルフたちがどよめく。


 次第にそれは歓声に変わっていった。


「復活した泉を破壊されずに済んだ!」


「生神様の御力だ!」


「バンザーイ!」


 万歳三唱の響く森で、俺は顔色が悪い友人に声をかけた。


「ヤガリくん、何か?」


「あ。……生神様か。すまん、考え事を」


「生神様なんて言わなくていいよ。俺の名前は真悟。呼び捨ててくれればいい」


「しかし、仮にも神を」


「俺はヤガリくんのことは友達だと思っているけど」


「…………?」


「この世界で、今まで神子は女性ばっかりだったんだ。コトラは別として」


 俺は頬を搔きながら続ける。


「で、このモーメントに来る前は、正直友達らしい友達はいなかった。俺は家のこととかしなきゃいけなかったし、友達と遊び歩くなんて出来やしない」


「……だから、おれを友と?」


「んー……ヤガリくんが気に食わなかったら引き下がる。ヤガリくんが神子であってくれるだけで俺の【神威】に幅が出るから。でも、やっぱり、友達でいて欲しい。……少なくとも女性相手に泣きごとは言えないだろ」


「……女に泣きごとは言えない、か」


 ヤガリくんは破顔一笑、俺の胸の辺りを叩いた。


「生神様は案外近い所にいらした方らしい。いいだろうシンゴ、おれはお前の友となる。代わりにおれの話も聞いてくれると嬉しいが」


「やっぱり、考え事があったのか?」


「……ああ」


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