表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/155

第18話

 自在雲を飛ばして辿り着いた、森エルフの聖なる泉は、幸いなことにまだ襲撃を受けていなかった。


「皆、無事か?」


 レーヴェに、森エルフたちは頷いた。


「無窮山脈はどうにかなったのか?」


「どうにかなったが色々なことが厄介になってきた」


 レーヴェは深刻な顔。まあそりゃそうだろう。


「道中でオークに襲われた」


「オーク!」


 エルフたちがざわめく。


「あいつら復活してたのか?!」


「と言うよりは、連中は生神様と敵対する勢力として存在しているらしい」


「生神様と?」


「敵対する?」


「だから、オークがここに攻めてくる可能性も高い」


「?」


 意味が分からず首を傾げる俺と森エルフに、レーヴェがまず俺に教えてくれた。


「オークは昔から泉を狙ってきたんだ。私たちはずっとそれは泉を羨ましく思い奪い取ろうとしているのだと思っていたが、先の戦闘で分かった。オークは自然や聖地を破壊したいんだ」


「確かに……木壁を使った時、何で忌まわしい植物がとか何とか言ってたし……」


「そう言うことだ。自然の恵みを破壊したいと思っているんだ」


「なるほど……ラスト・モンスターの鉱石食欲もだな。自然を破壊したいオークと、鉱物を食い荒らすラスト・モンスター。あるいは敵対する存在が森エルフとドワーフの聖地を荒らす為に送り込んだとも考えられる」


 ヤガリくんの言葉で、森エルフたちはやっとその存在に気付いたらしい。


 全員、ヤガリくんがドワーフだと確認して、露骨に嫌な顔をする。何か言おうと口を開きかける気配を感じたので、俺は念を押しておくことにした。


「はい嫌な顔しない、ヤガリくんは俺の神子だからねー。農具とか再生するのヤガリ君が必要だからねー。農具なくていいって人だけケンカ売れるからねー」


 ぐ、と森エルフは引き下がる。


 ヤガリくんは無言でそれを聞いていた。


「ぅな」


 コトラがヤガリくんの腰に頭をぶつける。


「ああ、コトラ。大丈夫だ。おれのことは心配しなくていい」


 コトラの頭を撫でてから、ヤガリくんは雲から飛び降りた。


「ドワーフのヤガリ・デイだ。今は神子となっている」


「…………」


 森エルフたちは黙り込んだけど、やっぱりヤガリくんに好意的な対応はしない。


「あ~あ、農具なしになるかなー」


「気にするな生神様。元来ドワーフと森エルフはそう言う関係なんだ」


「仲良くなれないってわけでもないんだろ?」


「敵対関係にはならないと言うだけだ」


「仲良くしてくれよー。樹海にオークが、山脈にラスト・モンスターが湧いて戦わなきゃいけないかもって時に、バラバラで行動してうまくいくわけないだろー? 第一ドワーフは食糧、森エルフは鋼が必要なんだ、仲が悪くてもこの場合手を組まなきゃまずいんだってことは分かるだろうに」


 ぐぐ、と一同が唸る。本当に戦闘にならないだけでお互い嫌い合ってるんだなあ。


 敵対勢力が判明した今、復活した大地に住まう森エルフとドワーフには仲良くしてもらわなきゃいけないんだが、どうすればいいのかねえ。


「頼みがあるのだが、これを【再生】してくれないか?」


 レーヴェがボロボロの木の枝のようなものを出してきた。


「何これ」


「森エルフの最大の武器、弓だ。子供でも弓の扱いには長けている」


「子供も戦うのか? とすると……援護神威って神子以外にも使えたっけ」


 確認の前に、ボロボロの木の枝に【再生】を使う。


 白木の繊細で美しい弓が、弦付きで【再生】した。


 森エルフが目を輝かせる横で、オレは端末で調べてみる。


【援護神威は基本的に神子を援護・防御するためにしか使えませんが、範囲系の神威であれば、範囲内に無差別に効果を与えるという形で神子以外の援護が可能です】


 うん、つまり、個人回復魔法なら無理だけど、全体回復魔法なら神子じゃなくても効くってことかな? そう言うことかな?


 その時、導きの球が光った。


「ん?」


 赤い光が煌々と灯っている。


 その光は北の方を指している。


 なんだこれは?


【観察のレベルが上がった場合や新しい能力を手に入れた場合、観察で見抜ける能力が増えます】


 と書いてあった。


「つまり【観察】してみろってことだな」


 端末を導きの球に向け、【観察】してみる。


【観察:導きの球/戦闘神威を身につけた時、導きの球は敵対勢力の接近を感知することができるようになる。青い光は近くに敵対勢力がいることを、赤い光は敵対勢力がこちらに向けて接近していることを示す】


「……ってことなんだけど」


「オークか?」


「敵の種類は分からないけど、赤い光だからこっちに向かってきていることは確かだ」


「よし、今度は神子に任せてくれ」


 レーヴェが剣を抜いて前に出た。


 ヤガリくんも戦斧を構え、赤い光が示す方を見る。


「ぅな!」


 コトラが飛び降りる。


 長い尻尾をゆっくりと振って、レーヴェとヤガリくんの前に出る。


「ま、さか、灰色虎?!」


「あの岩山の聖獣が?!」


「全滅したんじゃなかったのか?!」


「間違いない灰色虎で俺の神子だ、仲良くしてやってな」


 ピリピリした感じがする。子供の頃しょっちゅう受けた敵意とは段違い。これが殺意か。


「戦闘力的に、コトラが主戦力。レーヴェとヤガリくんはそのフォローを頼む。シャーナは」


「私も神官の端くれ、回復ヒール防御ガードくらいの魔法は使えます」


 よかった、シャーナは魔法が使えるらしい。


「分かった。無理だったら俺の直接戦闘に切り換える。……コトラが要れば大丈夫だろうけど」


 その時、錆びた武器を持った豚面……オークが十体、現れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ