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第17話

 世界を滅ぼすための勢力。


 いわゆる魔王ってヤツ?


 いや、生神に対抗するんだから、相手も神……なんだろうか。


 神を殺すのは神殺しの武器しかないって言うけど、神殺しの武器を作れるのは……人間じゃ無理だろう。神が創らないと。


 そして、確かこの世界は神が見捨てた地と何人もの人が言っていた。


 だったら、神の中には滅ぼそうとする神もいるんだろう。


 そんな神にとって、生神は不倶戴天の仇だろう。


 だから、俺を殺そうとする神がいてもおかしくはない。


 問題は、《《生》》神である俺は、殺されたら死ぬってことだ。


 だからこそ、神子に戦わせて身を守る戦い方があるんだろうけど、今、神子は必要最小限しかいない。信仰心が高くて戦闘力がある神子を探すことも必要だってことだ。


「と、なると」


 俺は最悪の結論に思い当った。


「大樹海や無窮山脈が敵対勢力の攻撃目標になるってことも考えられるんじゃないか?」


「確かに……」


「生神が降臨し、再生した聖地。豊かな森と復活した鉱山。……確かに敵対勢力が狙ってきてもおかしくはない」


 レーヴェの言葉に、俺は唸る。


「まずいな……防衛手段を考えないと……エルフもドワーフも人数少ないんだから、襲われたらアウトだ……」


「とにかく、大樹海へ急ごう」


 ヤガリくんが肩を叩いてくれた。


「レーヴェが森エルフの騎士なように、おれも誇り高きドワーフの戦士だ。神の援護があればおれたちも戦える」


「ちょっと、森まで急いで戻ろう。信仰心が上がったから、もっと長距離を速いスピードで移動できるはずだ」


 再生のためにロースピードで走らせていた自在雲を速める。


「レーヴェ、君、剣を持っていたよね」


「無論。騎士が剣を手離すはずがない」


 もっとも、とレーヴェが付け加えた。


「錆びて折れないのが不思議なくらいの代物だがな……」


「うん、試してみる」


 俺は、レーヴェの錆び付いた剣を受け取って、M端末を向けた。


「【再生】!」


 光が剣に吸い込まれ、錆びた剣は研ぎたてのような鋭い剣に変わった。


「どう?」


 レーヴェに剣を返すと、レーヴェは軽く柄を握って剣を振った。


「懐かしい……ここ二十年はなかった感覚だ……。この剣があれば、私は戦える」


「おれの斧も試してくれないか」


「もちろん」


 【再生】は見事に効いた。どんな樹でも切り倒せそうな鋭さとどんな岩でも叩き割れそうな力強さを兼ね備えた斧。


「さっき戦っていたのはノーマル・オークだが」


 レーヴェが口を開いた。


「この剣と私の腕であれば、あの程度一撃で倒せる」


「あ、要するにザコなの?」


「雑魚だ。大樹海に棲みついていたが、何度も聖地の泉を襲ってきてその度に私と仲間で追い返していた。……世界が破滅の道を歩み出し、泉の水が濁ってしまってからはちょっかいを出してきては錆びた剣を嘲笑って逃げて行ったものだが……」


「うわやることがザコ」


 と、俺は考えた。


「大樹海が復活したと聞けば、泉を狙って襲ってくる可能性がある」


「無窮山脈も同じだ」


 ヤガリくんは顔を曇らせる。


「ラスト・モンスターが復活するかもしれない」


「らすと・もんすたー?」


「文字通り錆を食べる魔獣だ。それだけならまだマシだが、自ら鉱石を錆に変えてしまう」


「げ」


「元々いた魔獣ではない。世界が破滅になっていった時に、唐突に無窮山脈に出没しては鉱脈を錆させて食って行った。無窮山脈を土くれと錆の塊に変えてしまった後、食べるものなく餓死していったが……」


「餓死したのであればいいのではないでしょうか?」


 シャーナの言葉に、ヤガリは首を横に振る。


「世界を滅ぼそうとする勢力があると言うことは、生神に等しい能力を持つ何かがあってもおかしくない。かつて、そんな勢力が無窮山脈を破滅させるためにラスト・モンスターを送り込んだとしたら、今も……」


「つまり、この世界を再生しようと思うなら、敵対勢力との戦争を覚悟しなければゃいけないということなのですね……」


「ちょっと待って。援護戦闘について調べてみる」


 M端末を動かし、全員に周囲に追いかけてくるような連中がいないか監視してくれと頼んでから援護戦闘の説明を見る。


【援護戦闘は、神子に戦わせる戦闘です。生神は神子に力を与え、神子の戦闘を援護します。【属性】で、神子を強化したり援護したりできます。やはり神威名をつけなければなりません】


 これもネーミングか……と挫けかけて、見本の援護戦闘神威があるのを発見した。


【援護戦闘神威:[攻撃]武器強化エンチャント・ウェポン・鉱石+大地/[回復]回復ヒール・聖】


 なるほど、仲間を援護して強くして戦ってもらうわけだな。


【直接戦闘は生神の戦闘レベルを、援護戦闘は神子の信仰心と戦闘レベルをアップします。仲間と自分のどちらの戦闘力を上げるかを考えて戦いましょう】


 ……ってわけか。


 自分を強くするか神子を強くするか。


 とりあえず自分のステータスを見てみた。


【遠矢真悟:生神レベル33/信仰心レベル12000/戦闘レベル3

 神威:再生10/神子認定4/観察6/浄化6/転移1/増加4/創造2/直接戦闘5/援護戦闘1

 属性:水5/大地3/聖6/植物4/獣4/岩3/鉱石3

 直接戦闘神威:[攻撃]水流ウォーター・フロウ・水/[防御]木壁《プラ

ント・ウォール》・植物

 援護戦闘神威:[攻撃]武器強化エンチャント・ウェポン・鉱石+大地/[回復]回復ヒール・聖

 固有スキル:家事全般/忍耐

 固有神具:自在雲/導きの球】


 あのノーマル・オークってのを楽勝で倒せるくらいには強いってことだな。


 じゃあ、神子は?


 【観察】を使ってみてみる。


 シャーナが戦闘力10。レーヴェが550。ヤガリくんが600。そして……。


 コトラが2000?!


「一番強いのがコトラか?」


「おれの三倍以上の戦闘力か」


「ぅなっ」


「こんな小さくて戦闘力2000だったら、成長したらどうなるんだ……」


「だから岩山の聖獣なんだ」


「敵ではなくてよかったですね……」


 シャーナは最初から戦闘向きではないと思っていたから特に何とも思っていなかったようだけど。ヤガリくんの三倍以上強いって言うのがものすごい。


「しばらく、おれたちが戦ってみる」


 ヤガリくんが言った。


「神には援護を頼みたい。いいか?」


「分かった。次の戦闘は援護にする」


 その間も猛スピードで移動していた自在雲は、豊かな森の端に辿り着いていた。

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