ep11.ブラックアイズ編・7話
浅草寺辺り一面に砂煙が立ち込める。蔵島の姿は未だ見えない。響の体は灰色から砂色へ変わっていた。薄い酸素が肺を苦しめる。
響 「ンゴッホッ、ゴッホオ!…」
響は浅草寺の床に伏せていた。
雫 「立て、響!」
響は前方から聞こえた雫の鋭い声に反応し、浅草寺の壁に手をつきながらなんとか立ち上がる。
響 「姉、さん、」
砂煙がゆっくりと薄れて行く。響は前方に現れる雫の後ろ姿と、その奥に浮かぶ人影に気づく。
雫 「まぁ、融合済みだろうな」
響(心の声) 「姉さんの銀傘光が貫いたはずじゃ、」
ザ、、ザ、、ザ
響は痛めた腹部に片手を当てながら一歩一歩と足を前に出す。
その時蔵島の背中から黒焦げた巨木が剥がれ落ちた。
ゴト、
ズズズゥ…
黒焦げの巨木は蔵島の影に消えて行く。
蔵島の周辺にあった砂利と石畳が吹き散っていた。
傷ひとつ負っていない蔵島の目付きは鋭い。
蔵島 「迷いが無い一撃でしたよ」
蔵島はへこんだ足元から抜け出すと肩にかかる砂を払った。
雫は影から一本の鉄傘を抜き出す。
雫 「お前のシャドウは私が解放した」
蔵島 「…そう…合点がつきました」
コンコンッ
雫は鉄傘の先端で石畳を2回叩いた。
そして隣に来た響に目線をやる。
雫 「機を待て、」
シュンッ
響の隣から雫が消えた。
雫は低空飛行で前方に立つ蔵島の方向へ踏み出した。
シュビュンッ!
蔵島は迫る雫を上から目線で捉える。
そして両手を拳銃の形にし、顔まで上げて上に構えた。
ズズズ…
その時、蔵島の左顔に三網模様の痣が現れる。
雫は蔵島に近付きながらその痣を目撃した。
雫(心の声) 「なんだ、痣?」
ズズ…
蔵島が拳銃の形で構える両手人差し指と中指がくっつき白い万年筆へと形を変えた。
鋭く尖る筆先。
蔵島 「´´筆弾´´」
ヒュガガガガガガガッッッ!!!!
蔵島が放った筆弾が次々と雫を狙う。
トッ!グルッ!ドグルングルグルッ!!
迫り来る筆弾から雫は鉄傘の先端で地面を突き出しながら体を回転させて避ける。
回転する勢いで雫は鉄傘を蔵島に振り抜く。
蔵島(心の声) 「さっきの犬よりは速いですね」
蔵島 「´´字覇´´」
ガァン!ガンガガガガガガガガァアンッッッ!!!!
雫の鉄傘による連撃は字覇の数ある文字に防がれる。
字覇の文字が蔵島の回りを球体の様に包む。
蔵島 「人間はなぜ理想を美徳の様に語るのかわかりません。私は物事の事実を何よりも重視します」
体勢を整える雫。
雫 「取り付かれた愚か者。…事実より人の感情を大事にする事が私の信念だ」
ズブゥウワアッ!!
雫 「クッ」
蔵島を守る字覇が一気に球体を押し広げると雫は後方へ押しやられた。
ザザァアッ!!
雫は再び姿を見せた蔵島を確認するとすぐに言葉を放つ。
雫 「レイン、防げるか?」
広がりをみせた字覇は瞬時に蔵島の両手の中に集合凝縮を始めた。
レイン 「何のための傘だと思ってる、」
雫 「、よこせ」
蔵島の手中に黒い球体が渦を巻いていた。
蔵島 「´´言魂´´」
グン、グン、ググン
蔵島の構えた両手の中で黒い球体が3段階で徐々に大きくなり、球体の直径が45センチを迎えた瞬間蔵島は雫へ向けて放った。
ドギュンッ!!!
そして雫は影からレインが現した傘を抜き出した。
ズバァアッ!
雫が正面に広げた傘は白い骨組みだけの状態。
レイン 「´´傘鴉´´」
すると雫の影から黒い鴉が現れ白い骨組みの傘へと止まり羽を広げる。
バサ、バァサァ、バサ、バ、サァ
瞬く間に白い骨組みは見えなくなり、直径3メートルの黒光る盾が出来上がる。
雫 「面白い」
蔵島の言魂が石畳をえぐり空気を揺るがせながら雫の持つ傘鴉にぶつかった。
ズシャガガガガガゴゴゴォオオオオオッッッッッ!!!!!
踏ん張る雫の足が徐々に後ろへ押し込まれる。
その時、
バグジュウッ!!
盾となる鴉達の間から白い骨組みが出現すると形を網状に広げ言魂全体を包み込んだ。
ギュギュギュ、ギュッ、ギュリギュリギュリリリリィイイイイ
硬い骨組みの中で言魂の球体が螺旋方向に回転を続ける。
だが言魂は白い網に力を押さえ込まれたのか球体の大きさが小さくなりサッカーボール程まで縮まる。
フリーになった雫は片足を言魂の上に乗せた。
ト、ズンンンッッ!!
雫は上げた片足を思い切り踏み込み言魂を影の映る地面へ押し込んだ。
蔵島 「感情など演技材料のひとつに過ぎません」
消える言魂。
ズズグゥウオォオォオォオオオンンンン!!!!!
蔵島が話終えた直後。地面が脈を打つように盛り上がり振動した。激しい爆発音が轟き渡る。
雫 「フッ、呆れる。そこまで落ちると、もはや別人だな」
ピタッ
蔵島はしゃがみ黒い義手となった左手を地面に翳す。
蔵島 「そうです。もう私は人ではない。神の領域に足を踏み入れたのですから…」
蔵島 「?」
雫 「ん、」
その時、蔵島と雫は上空から舞う雨粒に気がついた。
蔵島(心の声) 「こんな空天気の日に雨…」
雫は更に気が付いた。宝蔵門の上から不自然に伸びる黒いパイプと噴霧口。
雫 「じじい、」
宝蔵門の脇には黒いSBTの特殊トラックと山田の姿があった。
スッ
雫は鉄傘をしまい、足元から藍染めの傘を2本取り出すと前方と上方へ広げる。
雫 「´´二傘流・沈黙の霧´´」
雫は人差し指を口に当てる。1本の傘を上方へ投げた。
パシッ
蔵島の視界にはふたりの雫が傘を持って現れた。
ズズズ…
蔵島は影から大きな白色の万年筆を取り出すと立ち上がり、器用に回して雫を挑発する。
フッフッ!
一瞬にしてふたりの雫がその場から消える。
蔵島(心の声) 「遅いですね。さっきと同じ速度。今度は分身の類いでしょう、!!?」
蔵島の周囲に現れたのは8人に分身した雫だった。
蔵島(心の声) 「、そぅ。本気にさせるのが上手いですね」
蔵島は首が折れるのではと思うほどに自身の首を右にしならせて雫1体が繰り出した傘を避ける。
ブン!
1本の白色の万年筆を持った蔵島は、
雫達の持つ8本の傘と相対する。
太く長い万年筆は蔵島の捌きによってヌンチャクの様にしなりまわり全方位から来る雫達の攻撃に的確な防御を浴びせる。
ブンヒュンブブブン、ヒュゴヒュゴヒュゴゴッ、ズバキバキバキバキバキッッ!!!!!!!
そして蔵島は鋭い突きで周囲の雫達に攻撃を仕掛けた。
ブシュウ、ブシュシュウゥゥ、
万年筆で突かれた雫達は1体、また1体と黒い霧となって姿を消す。
ブンブンブンッ!
残り1体となった雫は蔵島から離れた位置で傘をさしていた。
バガゴォオッッ!!
突如蔵島の背後に現れる響。
地中から地面を突き破り蔵島の真後ろに出現。
ガッシイィイッ!!
響は眼流で力を四肢に分散させ蔵島の体にしがみつく。
蔵島(心の声) 「姿が無いと思ったら迂闊だっ」
身動きが取れない。
背後に出来た隙を突かれた蔵島は、響にしがみつかれた時に万年筆を地面に落とす。
雫(心の声) 「さっきの爆発のタイミングでレインに穴を掘らせておいてよかった」
響は両目を瞑り必死で抑える。
響(心の声) 「姉さんっ!早く!コイツを抑えられるのは」
雫は蔵島に言葉を放つ。
雫 「その痣は、なんだ」




