ep11.ブラックアイズ編・6話
蔵島は歩いていた。歩いて歩いて歩き回り、気付いた頃には台東区内を徒歩だけで歩き尽くしていた。その先々に点在する神社を訪れては指を鳴らす。
蔵島(心の声) 「この土地を実験地にしてよかったですよ。神々の多い浅草には根強い怒りの力が溜まっています。人間の怒りにはもう飽きました。神の持つ怒りにこそ至高のエネルギーが宿っていますから。…まずは浅草の地直しです。使えそうな人間は後からでも間に合います。今日は拠点となる浅草寺を下見しておきましょう」
ザ、
蔵島は雷門を正面にして真ん中で立ち止まった。
足を進める。
雷門をくぐり人だかる仲見世通りに入り込む。
蔵島は怪しまれない程度の目の速度で辺りを見た。
視界のなかで何人かと目線が合う。
仲見世通りを抜けた。
蔵島 「手薄に感じます。わかっていましたが、SBTのメンバーでしょう。疑われるのは周知の事実。あとはいつ来るかですね」
仲見世通りの人混みに紛れて雷おこしを食べる山田が袖口に付けたマイクに声を送る。
山田 「奴さん到着だ、新井、一般人の避難は俺達に任せろ。派手にやれ躊躇したら命は無いと思え」
仲見世通りに来ているSBTチームの顔つきが険しくなる。
響 「了解」
ト、ト、ト、
宝蔵門を蔵島が通り抜けると浅草寺の前に立つスーツ姿の響が待っていた。
蔵島 「…あなたですか」
響 「わかってんのか?」
蔵島 「ええ、私は一度見た顔を一生忘れませんから」
響 「ダセェ服だな」
響は蔵島の着ている蛇柄の上着に黒の綿ズボン姿をいじる。
蔵島 「SBTに所属していながらその言葉使いは軽いですね。警察は教育不足過ぎます。いじるならこの左手をいじるのが先」
蔵島は義手となった黒い左手を顔のそばに持ち上げる。
響は蔵島の姿・表情・話し方全てに怒りを感じざるを得なかった。肚から沸き起こる感情が口から飛び出す。
響 「変わってねえなぁああおおおおいいっっっ!!」
蔵島 「いきなり大声ですか。犬じゃあるまいし…」
響 「てめぇは俺が潰す」
血走った響の目が蔵島を凝視する。
蔵島 「…その目付き。何かを思い出しますね」
響は構えた。
響 「´´波解´´」
白と黒の世界に包まれる響の視界に、蔵島の波動が鬼の形相となって蔵島に纏う。
響 「ンフハッ!鬼殺しだっ!!!」
ドッ!!!
響は石畳を強く蹴り蔵島に向かって飛び出した。
ガッ!!
だが直後。響は蔵島に後ろ首を掴まれ体が地面から離れていた。
蔵島 「犬よりも遅いですね、」
響 「!?て、めえ!」
右手一本で響を掴んだ蔵島は側にある常香炉の中に響を突っ込んだ。
ドザァアゴンッ!!!
バキバキキッ
そして蔵島は常香炉の中に響を残し、真上の屋根を支える4本の柱を手刀で素早くへし折った。
ドゴッ
ト、
そして常香炉の屋根の上に乗った蔵島は左手の義手を強く握り響が埋もれる真下に突き下ろした。
ドゴッゴバキバキバキバキィイィイイッッッッ!!!!!
バカラカラカラァアァアァアァアンンンンッッッッ!!!!
突き破られる屋根。常香炉は粉々に割れて中から灰がこぼれ出した。
ト、ト、ト、
義手の具合を確認しながら蔵島はゆっくり常香炉から離れる。
蔵島 「人は神を侮りすぎです。困った時だけすがるとは都合が良すぎる。弱者は弱者なりに振る舞えばいいんですよ…もう、終わりですか?」
その時壊れた屋根が斜め上に吹き飛んだ。
ガドゴォオオッッ!!!!
灰色になった響が立ち上がっていた。
響 「ゴッホオ、ゴッホホッ!、準備運動よろしくなんだよバカがっ!!」
蔵島 「威勢はいいですね」
響 「、へへっ」
時間は充分だった。
響と蔵島のいる浅草寺から斜めの方向にそびえる五重の塔。
一番上の反り建つ屋根の中心で雫が銀色の傘の先端を向けて構えていた。
雫の左目が傘の先にいる蔵島を捉える。
雫 「´´一傘流・銀傘光´´」
小さな呟きに相反する様に空気を響かす稲妻と稲光が一直線に放たれた。
バチチ、バチバチ、バガチチチィイィイィイイイイイイッッッッ!!!!!!
地上に立つ蔵島が白い光に包まれる。
ズォオ、
雫の放った銀傘光が蔵島の背後から腹部を貫いた様に響は目視した。
その直後、響は銀傘光の勢いに押され浅草寺まで吹き飛んだ。




