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shadow  作者: 新垣新太
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ep0.ペンと鍵編・9話

蔵島は盾仲の´´無限鍵錠(ストローズ)´´の空間をゆっくりと眺めていた。



蔵島(心の声) 「これは、鏡合わせの様なものですかね。しくみを理解すれば、」



盾仲 「聞こえてんのか?」



蔵島 「それで何でしたっけね。そう、私は早く帰りたいんですよ」




蔵島に睨まれた盾仲は強く鍵剣を握り直して構える。




蔵島 「´´字覇(スペルズ)´´」



ズァアァアアァアッ!!



蔵島の影から様々な黒い文字が砂粒となって周りに現れ浮遊し始めた。




蔵島 「この空間、どこまでが偽物ですか?」




ズリズリズリズリッ!!



蔵島の周りに浮かぶ黒い文字達が少しずつ盾仲の創り出した内壁を削り始めた。




盾仲 「気付くのが早いな」



ダシュッ!!



盾仲は力強く床を蹴り出すと一気に蔵島の側まで近付いた。鍵剣を乱舞させて蔵島に斬りかかる。




ガギイィ、ガギ、ガギギギギイイィイッ!!!!!




盾仲の鍵剣は蔵島の字覇にガードされて防がれる。




蔵島 「無駄ですよ」




鍵剣で何度も何度も斬りかかるも、黒い文字が蔵島を守ってゆく。固まっては散り、散っては固まる。




その時、黒い文字達が大きな塊となって斬りかかる盾仲を強く弾き飛ばす。




ズオオオッ!、バドゥウンッ!!





盾仲(心の声) 「チクショウ、なんだあの黒文字。蔵島に鍵剣が届かない」





ズズズ、ズズズゥ、ズウゥウゥウゥ、




盾仲 「!?」



字覇で飛ばされた盾仲は、蔵島が何かを仕掛けようとしている事に気づく。




蔵島は右の懐に構えた両手の中に、浮遊していた黒い文字達をどんどん吸収、凝縮していた。



その手中に収められてゆく文字は黒い玉へと変わる。蔵島はうつむき集中力を上げていた。





盾仲(心の声) 「ふざけんな、アイツ俺の空間ごとぶっ壊そうとしてるな」



ダンッ!!!



盾仲は両手で床を強く叩いた。すると影から白と黒の鍵がひとつずつ飛び出す。それを左右の手で掴むと同時に床に突き刺し内側へ回した。



ガチャッ!



盾仲 「´´厚事園(ブックシールド)´´」




盾仲の影から無数の細かい鍵が飛び出す。

左右に飛び出した鍵達は盾仲の正面で繋がると白と黒の巨大な辞書の壁を創り出した。



ブシュシュシュァアアアッ、



カチカチガチガチ、ガッチガッチガチガチ、




そして重厚な壁が盾仲の正面に構えられた。




ガッチンン!!!!






蔵島はゆっくり長く息を吐き、強く酸素を吸い込んだ。



スウゥゥゥゥゥゥ、、、ズウゥウアアッ!!!!




蔵島 「´´言魂(グラフィティ)´´」




蔵島は宣言後両手に創り出した黒い玉を盾仲の真っ正面に放つ。




ビゴォオォオォオォオオオオオオオオオ!




吹き飛ぶ景色。白ける視界。




バキ、バキ、ビキ、キ、バキキキキキキキィイイイイイイ!



盾仲の´´厚事園´´に亀裂が入る。隙間から黒い玉の内部から漏れた黒い文字が入り込む。





盾仲 「、こいつ!、俺の´´厚事園´´は戦闘機のトップスピードの直撃にもびくともしないんだぞ!」






ガゴッ



その瞬間´´厚事園´´を創るパーツの一部が崩れた。





シン…





盾仲が次に目を開けた時、視界は白くぼやけていた。´´厚事園´´は蔵島の´´言魂´´によって粉砕され盾仲は両膝から下を失った。




´´無限鍵錠´´は解除され、盾仲は仰向けで天井の無い空を見つめる。




ト、ト、ト、ト




倒れる盾仲に落ち着いた表情の蔵島が近付く。



蔵島 「…派手にやってしまいました。警察が来るのも時間の問題ですね」





ト、タ


蔵島は盾仲の側で足を止める。


そして左手を肩の高さまで上げると親指と中指を合わせた。



盾仲は目を閉じ呼吸を整えていた。



盾仲 「フゥー、フゥーー」




蔵島 「質問に答えていませんでしたね、人の過去をみて楽しいか。…答えはノーです。過去をみて良い事などありません。私には目的を達成する為に人の過去をみているに過ぎない。料理をする上で必要な材料だから使っているまでです…ですが今だけは、あなたが私にここまでの力を出させた事に対して敬意を表して過去をみさせてもらいます。他の人間相手なら会話もせず立ち去る所です、」



盾仲 「´´…´´」


盾仲が何かを呟いたのを確認した蔵島。



蔵島 「何ですか?」



何も答えないとみるや蔵島は指を鳴らそうとした。


ふたりの言葉が重なる。


盾仲 「´´奇錠(イリュージョン)´´って言ったんだよ」


蔵島 「´´影裏(フォーカス)´´」




蔵島(心の声) 「…?、鳴らない」


蔵島は指を鳴らしたつもりが音がしないことを知るや否や左手を見た。




スゥ…




その時、蔵島の左手首に細く赤い筋がリストバンドの様にくるりと現れる。




蔵島 「指が、、動かない」



ズル



すると蔵島の左手首が赤い筋を境に横にズレた。




盾仲(心の声) 「それがお前のトリガーなんだろ?、だからずっと俺は待ってたんだよこの瞬間を。…初めに見たのは秀さんが俺を突き放した寸前。お前が指を鳴らした瞬間に秀さんが暗闇に包まれた。あの時俺は、間違いなくお前がシャドウ使いである事を確信し、さらに指鳴らしが技のトリガーだと踏んだ。だがそれ以降お前は指を鳴らさなかった。理由は戦闘向きでは無いからだと今ならわかる。相手の過去をみる力。その力を使う時にだけ使用するトリガー。簡単に死ななければお前は俺を勝手に強者だと認め、価値のある人間だと決めつけ過去を覗こうとするだろう。生憎の結果、俺はこんな無様で弱者にふさわしい負けっぷりで諦めかけてたが、最後にお前は指を鳴らそうとした。…これが俺の前を横切る女神の(たてがみ)ってやつか」




´´奇錠´´。これは、盾仲の影から放たれた特殊な鍵(ブーメラン状)が、相手のシャドウの能力発動のトリガー部分と相手のシャドウの両足首を通過させる事が条件付きの封印技である。その条件をクリアすれば、奇箱が発動し相手のシャドウを封印する(相手のシャドウの能力は無効化される)。但し奇箱に封印できるシャドウは1体のみである。




蔵島 「貴様何をした!」



ズズッ!



蔵島は瞬時に右手に現した白い万年筆を握り盾仲の顔面へ向けて放った。




ズビュッ!!



ズパッ!



その寸前、盾仲の´´奇錠´´が蔵島の両足首の影を切り裂いた。




フッ



その瞬間煙を巻いて蔵島の放った白い万年筆が姿を消した。




蔵島 「…なんですか…なんだ…なんなんだ?いつもの力が湧いてこないっ」




トンッ


その時、赤色と紺色がコントラストに配置された奇箱が盾仲の横にコロンと現れると蓋が開いた。




ススウゥ、ズズズズ、ズルズルズルズルル




すると蔵島の影が液体のようになり、隅から奇箱の中へ吸い寄せられてゆく。





盾仲 「…終わりだ」





煮えたぎる憤怒を腹に押し留める蔵島は表情を崩さず盾仲の顔面を殴ろうとした。




サクッ




蔵島のうなじに手術用のナイフが1本刺さると、蔵島は意識を失って横に倒れた。





盾仲は首だけを動かし誰かが来たことを確認した。



盾仲(心の声) 「…あれ…秀さん、」




丸茂 「フゥ、ごめんごめん。自己再生に時間とっちゃってねー」



蔵島にナイフを投じたのは丸茂だった。丸茂は壁に手をつきながら右手を包帯で巻かれた体に当てながらゆっくりと歩いていた。



丸茂(心の声) 「´´縫合(ミシン)´´を自分に使ったのは初めてだけど、案外役には立ったかも。…麻酔なしでやるのはこれっきりだね(笑)」




バタンッ


丸茂は盾仲の横に仰向けで倒れた。足元には蔵島が横たわっている。



盾仲 「…俺…死にますかね」


丸茂 「大丈夫…特別救急車を呼んでおいたから、すぐ来るよ」





それから5分も経たずに黒いヘルメットに黒い白衣を着た救急隊員が数名で盾仲と丸茂を邸宅から運び出した。蔵島は警察に任せましょうと呟いた丸茂の指示で蔵島だけはその場に残された。




・・・


一丸茂達がいなくなってから1分後一


冷夜にパトカーのサイレンと赤色灯が邸宅の周りをざわめかせた。




その時、蔵島の指が少しずつ動く。切られた左手首を支えにして起き上がる。首に刺さるナイフを抜き捨て、落ちた左手を拾う。




蔵島 「…首は、鍛えておくものですね…」




部屋の照明に当たり床に浮かぶはずの蔵島の影が消え去っていた。




蔵島は警察が邸宅に入る前に姿を消した。


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