ep0.ペンと鍵編・8話
盾仲は背後で瀕死状態の丸茂を確認した。丸茂の息は浅く、傷痕が痛々しかった。長期戦は難しいと判断した盾仲は覚悟を決めた。
盾仲(心の声) 「使うならここだ…」
蔵島は本日の収穫は手から溢れるほどの量だったと満足していた。
蔵島(心の声) 「何を考えてるか知りませんが、先に帰らせてもらいます」
タ、タ、タ、タ、
蔵島は部屋から出ると廊下を通り、次の部屋へ移動した。
盾仲は近くにあるドアを見つけると部屋を出て廊下を歩き、蔵島が移動したであろう隣の部屋のドアを開ける。
ガチャ
いない。ドアを閉める。
盾仲(心の声) 「どんだけ広い家なんだここは?」
蔵島(心の声) 「目眩ましには調度良すぎる広さ。一般家庭の一軒家が10個くっついたような家ですから」
盾仲(心の声) 「だが有難い。どのドアにも鍵穴が付いてるなんてな。秀さんの事も考えてたら時間なんてかけられない」
盾仲は廊下を進み5メートル先の突き当たりにあるドアの前で止まった。
そして自分の影に手を突っ込むと赤い鍵を取り出した。
目の前にあるドアの鍵穴に赤い鍵を差し込む。
盾仲 「´´無限鍵錠´´」
盾仲は赤い鍵を右へ回す。
カチャン
その時、蔵島は廊下終わりにあるドアを開けた。
蔵島 「?」
蔵島の前には1本の廊下が続く。
蔵島が開けたドアの先には鍵剣を肩に担ぐ盾仲の姿があった。
盾仲 「人の過去みて楽しいか?」
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一盾仲隼人・25歳の頃一
高校時代の友人から放たれた言葉に俺は心を砕かれた。
友人A 「隼人ってあれでしょ?性同一性障害なんでしょ?」
心にしまっていた箱の中身を知らぬ間に高校時代の友人6人に共有されていた。
高校時代の友人6人とは今でも付き合いがあるグループだった。その内のひとりである長嶺は親友と呼べる程、信頼できる男だった。
よく俺の家で漫画をタダ読みに来ていた長嶺が、何かと俺の部屋を物色していた時。
長嶺が高校時代の教科書達の間に挟んでいた俺のノートをパラパラと読んでいた。
そのノートは俺の本当の心のうちを少しずつ日記として書き記しているモノだった。
俺は長嶺がそのノートを見たあとすぐ元の場所にしまっていたので特に気にはしていなかった。別にその直後から長嶺の様子が変わった訳でも無かったから心配などあっという間に消え去っていた。
それが、時を経て25歳となって久しぶりに集まった高校時代の友人グループでの飲み会の時に明かされた。
長嶺 「あれ、隼人に言ってなかったっけ?別に隠す事でもないと思って、俺達良くつるんでたから、その時にしゃべったんだよ」
俺は、、
私は、小学校を卒業した頃から自分が女性である事に自覚を持って行動していた。
体は男性でも、心は女性であると。
でもずっと打ち明けられずにいた。
友人や家族、今まで出会った人たちとの関係を変えたくなくて、というより、私を変えようと思う勇気が出なくてずっと過ごしていた。
きっかけが欲しかったのはたしか。
告白は意図せずして高校時代の友人に、親友によっていつの間にかされていたのだ。
私はその時の、その瞬間の事を覚えていない。ただ、その帰り道。帰り道の途中で私は私を心の中の箱に閉まった。その箱に鍵を付けて。
俺は、怒りと悲しみの混ざった液体を沢山飲み込んで、涙を流し、決意し、
勇気を出して自分を変えた。
秘密にはしっかりと鍵を付けて。
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