ep0.ペンと鍵編・4話
ガラガラ、ビシッ
店内に入った丸茂は、にこやかな表情のまま引戸を閉めると司の斜め前の席に座る。
司(心の声) 「虫の気配すら感じなかったぞ…いつの間に俺の間合いに入った?」
丸茂は興味深そうに店内を眺める。その時、カウンターの壁に貼られた小さな案内に目が止まる。
´´一おことわり一席に着きましたら店主の指示に従いコースメニューを最後までお召し上がりください。飲食マナーをお守り頂けない場合はそれなりの対処を取らせて頂きます。料亭 司 店主´´
司は丸茂の顔を見る。
司(心の声) 「読んだな…ウチのルールを知った以上、余計な事は出来ないからな」
丸茂(心の声) 「…ほう。裏には誰もいなかった。さっきから感じるこの能力は店主が持つシャドウの力って事か。微弱だがこの建物全体にシャドウの力が帯びてる。僕のシャドウはどうやら押さえ込まれてる様だ。推測するに場を仕切るシャドウが入客した人間をルールで縛りつけてるってとこかな。店に入った客が引戸を閉めた時から席に着きおことわりの文言を読む。この一連の動作で相手に縛りを付けてるとしたら、巷のシャドウの知能レベルが急速に上がってきてるって事ね」
コン、
丸茂 「ん、煮こごり?」
丸茂の前に、菅田に出した料理と同じ煮こごりを提供する司。
司 「お通しだよ」
丸茂 「クンクン、」
丸茂は礼儀正しく着席した姿勢のまま鼻を動かす。
丸茂 「人の肉でしょ!」
煮こごりに指を差し司を見る丸茂。
菅田 「ぅうっ…ゲボォオッ!」
さすまたに掴まったまま嘔吐してしまう菅田。
丸茂 「食べた後だったか、ごめんごめん」
バッキイィ!!
すると丸茂は手刀でさすまたの首を折るとさすまたを掴み壁から引き抜いた。
ゴガッ!、ドスッ
菅田は汚れた口を腕で拭いながら尻餅をつく。
ガランガランッ
さすまたを床に放る丸茂。
司(心の声) 「…速い。間違いない。この男も俺と同じ力があるのか」
丸茂は首をぐねりと動かし両手を握って柔軟を始めた。
パキ、バキパキッ
丸茂(心の声) 「能力が閉じられたとなると、こっちが選べるのは肉弾戦一択だよね」
司 「お客様。席にお座り下さい」
丸茂 「フィジカルには自信あるんだよなぁ。…あと、わかっちゃうんですよこの臭い、僕手術師なんで」




