ep0.ペンと鍵編・3話
一2時間後一
第十班は各所への聞き込み調査を終えて再び八王子駅コンコースに集合した。
佐田 「お疲れさん。結果はどうだ能口」
能口 「私はバスの運転手に当たれるだけ当たりましたが、ここ3ヶ月で見た不審者はおらずほとんどが酔っぱらいや痴漢、突発的な言い争い程度しかない様子でした」
佐田 「はい次、北美」
36歳の北美が手帳を開きながら答える。
北美 「私は駅周辺に停まる宅配車の運転手に聞いて回りましたが、こちらもめぼしい情報は掴めませんでした」
佐田 「少しでも違和感に思った事は?」
北美 「たまたまかもしれませんが、宅配車の荷台に蛍光色の段ボールが何個か積まれてました。それはどの宅配車の荷台に1個は必ずありました。そのくらいです気になったのは」
佐田 「わかった。じゃあ若手3人組、お前らは何か掴めたか」
佐田の目線の先にいる26歳・南野と25歳・小木が不安な面つきで立っていた。
小木 「菅田が戻ってません」
佐田 「しょんべんか?」
南野 「いや、違うと思います。集合直前まで何度もスマホに連絡を入れてたんですが電源が入っていないみたいで繋がらないんです」
佐田 「菅田の担当はどこだ」
小木 「僕がJRの駅員担当で、南野は京王線駅員に聞き込みに」
南野 「菅田はロータリーに停まるタクシーの運転手に聞き込みに行っていました」
能口 「佐田さん、菅田のスマホに付いているGPSは生きてるみたいです」
佐田 「どこだ?」
佐田は能口から見せられたスマホ画面に映る地図を確認した。赤い丸で点滅する上には´´菅田´´と記されていた。
佐田 「…おぉう。先に菅田が何か見つけたかもしれねぇぞ~。車出せ!」
北美 「はい!」
・・
一佐田班が菅田の不在に気付く20分前一
28歳・菅田は最近できた予約のとれない料理店があるとタクシー運転手からの情報を聞き、その店に案内してもらうとタクシーから降りた。どうやら運転手によると、一日一客限定の営業で店主が選んだ人しか入れないと言う。
菅田(心の声) 「変わった人なら特別な情報を持っているかもしれないでしょ」
降り立ったすぐ目の前に店はあった。看板に照明が当たり´´料亭 司´´と趣ある木目調の板に木彫りの文字が書かれていた。
菅田(心の声) 「日本料理屋っぽいな」
ガラ、ガラガラ
引戸を開けるとカウンター席の店内に白髪混じりの店主がいた。
店主・司 「いらっしゃい」
菅田は会釈をした。刑事だと名乗る事を忘れ、差し出された店主・司の手に誘われ店主正面の席に座った。
司 「菅田さん、ですね?」
菅田 「え、なんで?」
司は手を出して菅田の言葉を遮る。
司 「話は聞いています。まずはウチの料理を食べてからでも良いですか?」
菅田(心の声) 「…もしかして、連れてきてくれたタクシーの運転手さんが連絡してくれてたのか?…まぁ丁度腹も空いたし食べてからにするか」
菅田 「じ、じゃあ、お願いします」
司 「はい、こちらお通しね。´´希少部位の煮こごり´´」
灰色の皿に乗せられた薄透明色の煮こごり。中には金箔とダイス状の赤い肉の様なものが散りばめられていた。
菅田(心の声) 「ぉ、おぉ…うま、そう」
菅田は箸を持ち、司から振る舞われるコース料理を次々と戴く。どれも美しいお皿に盛り付けられ、目にも鮮やかな料理に箸が止まらなかった。
司 「よく召し上がりますね」
菅田 「あ、すいません。お腹が空いててつい勢いよく食べてしまって…」
司 「いやいや、見ていて気持ちが良いです。最後、ウチからのサービスです」
コンッ
菅田の前に置かれた白銀の小皿には白玉のような球体が一粒乗せられていた。
菅田は小皿に顔を近付ける。
菅田 「おぉ~。何だろう?デザートですか?」
司 「当ててみて下さい。一口でパクっと」
菅田は持っていた箸で白い球体を掴み持ち上げた。
口を開ける。
菅田(心の声) 「あ~…?、ん、?」
口元で箸が止まる。菅田は掴み上げた白い球体の底に黒い何かが見えた。それは、その形は、今掴んで口に入れようとしたものが何かを理解してしまった。
人の目だった。
菅田 「…これは?、!?、ングッ!!?」
その瞬間、菅田の首に黒いさすまたが食い込んだ。
ガッ!、ドゴッ!!
メキメキッ
菅田「く、、苦しいっ!」
黒いさすまたは菅田の首ごと店の壁に食い込む。両手でさすまたを握る菅田の体は浮いていた。
司 「当たりです。よく気が付きましたね」
ガラ、ガラガラ
司・菅田 「?」
その時、店の引戸が開くと暖簾をくぐり人が入ってきた。
丸茂 「まだやってる?」
司 「いらっしゃい」




