ep10.影の英雄編・8話
太田が風春と会うのは陽炎の熊鉢との戦闘以来だった。あの日、風春に責務を任せ重傷を負わせた後悔をずっと感じていた太田。風春の表情をじっと見つめる太田は決意を固めた。
太田 「´´時の天秤´´」
バシュゥゥゥゥゥゥゥウッ
砂浜の上に大きな天秤と太田のシャドウであるクドウが姿を現す。
太田 「風春。銀色のカードを持っているかな?」
風春 「あ、、はい」
ポケットからカードを取り出す風春。
太田 「人影のカードにはクドウの力が組み込まれてる。その事でカードを持っている人間が、今どの座標点にいるのかを正確に知らせてくれるんだ。今、柳田さんと共に戦っている人影の重盛と連絡が取れていてね。向こうの準備は大丈夫だと返信があった」
風春 「重盛さんが向こうに…」
拓磨 「それで」
太田 「僕の´´時の天秤´´は時をかける能力、今回に関しては座標と座標を繋ぐ転送の力だと思ってもらっていい。風春のカードと重盛のカードを繋いで風春を東京の渋谷に転送しようと思う」
巻 「そりゃすげぇ」
その時クドウが口を開いた。
クドウ 「警告する…この使い方には太田の寿命切符を多く必要とするぞ」
拓磨 「どういう事だ?」
太田 「わかってる。じゃあ早速、風春こっちに来てカードを地面に置いてくれないか」
言われた通り風春は太田の側へ移動し銀色のカードを砂浜に伏せた。
太田 「これは重盛との連携作業になる。時刻ぴったりにこの伏せたカードをゆっくりと起こす。そうするとこのカードの影を通して向こうへ転送される」
太田は腕時計を確認する。
太田 「17時14分…あと1分でカードを開くよ」
太田はポケットから金色の玉をひとつ取り出すとコロンと天秤の右皿へ乗せる。
クドウに決意の視線を送った。
太田 「クドウ」
白衣の内側から太く巻かれた連結切符を取り出したクドウ。
クドウ 「…了承しました」
スルスルスル…
長く伸ばされる切符。
ビリッ
切り取られた切符が天秤の左皿に乗せられた。
ギギギ、ギギギィ、ガチッ
少し振れる天秤が固い金属音を立てて左右均等の位置で止まる。
ブワァアァアンッ
その直後、風春のカードを中心に半径5メートルの砂浜の色が藍色に変化した。
巻 「なんだこれ」
ブンッ
そして藍色の砂の上に不規則に現れる白い座標線と数字の羅列が動き出す。
拓磨 「これは、座標?」
秒針を見つめる太田は風春のカードの端を右手で摘まんでいた。
太田 「時間だ…風春。目を瞑って」
風春 「お願いします!」
強く閉じた瞼。
ゆっくりと起き上がるカード。
ズズァアアアッッ!!!
砂浜にカードの影が映った瞬間、風春はその影に一気に吸い込まれた。
巻・拓磨 「消え、た、」
拓磨と巻の視界にいたはずの風春は消えた。そして、しゃがんでいた太田を見たふたりは目を疑う。
ハリのない肌、シミと皺だらけの顔と手。そして髪の毛は白髪へと変わっていた。
太田 「よっこい、あぁ、、腰が痛いぃ、」
そこにいたのは老いた太田の姿だった。




