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shadow  作者: 新垣新太
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ep9.記憶の森編・7話

一現実の機内では一


柳生のまつ毛が小刻みに動いた。かと思うとゆっくり瞼を開き瞳を見せた柳生。



ガッ



柳生は前の座席を掴み立ち上がる。




柳生 「君の姿は一度見たら忘れないよ。僕には見える」




その時拓磨は柳生の足と風春、巻、鈴見を繋ぐ影が途切れないよう集中していた。



拓磨(心の声) 「起きやがった。風春達、早くしろ。俺が繋いでいる間にシャドウを狩れ」



席に座り集中力を上げる拓磨は目を瞑る。




柳生は歩き出す。そして座席に座る茶髪女性の側まで来ると、その女性が持つ黒い布のかかった物を奪った。



ガバッ



あまりにも自然に奪う柳生の行動に茶髪女性はあっけらかんとした表情で柳生を見つめる。



柳生は風春を見つけていた。その視線は最前列の席に向けられていた。柳生は黒い布を抜き取り、ボーガンを手に持ち構えた。




ガッ!ギギッチ!カチャッ!



柳生は矢をボーガンにセットし、両手で握り照準を定める。




茶髪女性 「あの、ちょっ、それ!」



柳生 「…だまれ♪」




トリガーは軽く引かれた。




バシュウゥンッッ!!!




・・・


一柳生の夢の中では一


機内前方の隙間から勢いよく海水が中に入り込んできていた。




ズブウシャアアッ!!!!!


ビシャチャアァッ!!




一機内に海水が入り込む10分前一


高度1000キロメートルまで下降する飛行機を追いながら巻と鈴見は落下点を見定める。



巻 「もう落下するのは時間の問題だろ!正面は任せたぞ砂女っ!」



バチンッ!



巻はパラシュートとスーツを繋ぐジャックを外した。そして、海上へ着水するとイルカの背に乗りバショウ達の後方に付いた。



鈴見 「任せなさい」



バッサアァアッ!!



すると鈴見の背中から砂で出来た翼が生えるとパラシュートを切り、落下する飛行機の前方へ回り込んだ。




飛行機の重量加速度は凄まじく、どんどんと高度が下がって行く。その先で鈴見はソフトボールの大きさに練り込んだ何かを飛行機の先端へ投げ込んだ。




ブウンッ!!



飛行機の前方でソフトボールが網目を張り巡らせながら広がる。



バサアァアァアッッッ!!!!




鈴見 「´´砂網(スプリングネット)´´」




砂で繋がれた目の細かい網は、大きく広がり飛行機の先端を包み込む。そして網の両端に幾つも付けられた丸い重りが飛行機と網を離さないように引っ張っていた。



その重り達を括る紐が伸びると海面に落下して浮き上がった。




鈴見 「水色頭ー!海面に落とした重りを飛行機の進行方向とは逆に引っ張れー!!!」




巻 「だから指示すんなって言ってんだろうがー!!」




ゴゴゴゴゴオオオオオオオッッッッ!!!!


飛行機のエンジン音が轟音と共に海との距離を縮めて行く。




ピューーイィイッ!!


巻は高音の指笛を鳴らした。



するとバショウを先頭に残して、イルカ達が左右に別れ始める。



バシャンバシャンバシャッバシャッ!



そして海面に浮きの様に浮かぶ丸い重りをイルカ達が咥えると巻のいる方向へ引っ張り出した。




巻 「このままじゃー海面に直撃じゃねえか。…´´海宴(パレード)垂幕鳴(カーテンコール)´´」




飛行機の落下点の位置で泳いでいたイルカ達が移動した為、ぽっかりと空いた青い海に、大きな黒い影が2つ3つと姿を現した。





巻 「よろしくな(笑)」



ブシュシュシュシューーーーッッッ!!!!





ゆっくりと揺らぐ海面から潮吹きが起きた。青黒い肌が浮き上がる。ザトウクジラが3頭現れたかと思うと、海中から更に群れとなったザトウクジラが海面へ現れた。





ビギギギギギイィイィイィイイ!!!!!



鈴見が正面から放った砂網はイルカ達によって引っ張られ、網目は限界まで広がっていた。

そして、風春達を乗せた飛行機が速度を落としながら機体の底面を海中から現れたザトウクジラ達の背中にぶつける。



ドシャアァアァアアアア!!!!!



沈むザトウクジラと機体の下腹部。白い飛沫が辺り一面にシャワーの如く吹き上がる。着水する瞬間、機体はやや前方に傾いていた。その為水圧が操縦席や客席の窓にかかり、ひび割れて機体に亀裂が起き海水が中へ入り込んだ。




一柳生の夢の中、機内では一


突如機内へ流れ込む海水に風春は足を取られないよう注意して通路へ移動した。


風春(心の声) 「アドレナリンが出て緊張感を持続してたせいで気付けなかった。機体が海に落ちたって事か。機体が沈没する前にアイツを倒さないと…」



柳生は何も語らず、手に持った白く長いメスを風春の方へ構えていた。



操縦席室へ流れ込んだ海水の量が満杯に達した瞬間。客席最前方突き当たりにある鍵のかかった扉が激しい音を上げて海水と共に客席へ吹き飛んできた。



ドバガアアアアッッッ!!!!



風春は吹き飛んでくる扉1枚と海流を振り向き様に見た。



風春(心の声) 「好機」




ズダッ!、ダンッ!!



風春は押し寄せる波に流されてくる壊れた扉の上に飛び乗った。通路に流れる海水の波に乗り機体後方で構える柳生に近づいて行く。




風春 「じいちゃんが言ってた…」



城戸元 「いいか風春。わしが突いているのはサンドバッグではない。正確には、」



ズリュゥウアァアッ!!



扉に乗ってやってくる風春に微笑み垂れ流す柳生。



柳生 「どうぞいらっしゃい♪」




柳生は両手で構えたナイフを後ろへ回すと瞬速で風春の首を狙った。




ヒュウゥウンッッ!!!


ナイフは風を斬った。



柳生(心の声) 「僕の´´切開(メス)´´の速さは陽炎イチのスピード、それを避けた♪」




風春は柳生の攻撃をかわしながら壊れた扉からジャンプする。そして一回転捻りを加えて機内天井に両足を付き、柳生の方へ向かって正拳突きの構えをとった。




風春 「目の前の空間ごと前に突き出すつもりで拳を打ち出す…」




ビキビチッ、ビキビキビキイィイィイッ!!!!!!



風春の拳から今までとは違う電気の弾ける音が鳴り出した。右の拳からは青い電流が飛び散っていた。




柳生はよだれを垂らしながら興奮していた。再びナイフを後ろで構えて今にも飛び掛かろうと準備を整える。




風春(心の声) 「あの時、じいちゃんが突き出した拳は光を放っていた。白い光り、俺は、そこにじいちゃんの好きな青を混ぜるよ」



ゆっくりと右の拳を握り締め、手元に引き寄せると息を整えて柳生を睨み付けた。




柳生 「待ちきれないよ!」


と言って先に飛び掛かろうと足を踏み出そうとした。



柳生 「!?」



動かない足。



地面から上半身だけ姿を現したナックルが柳生の両足首を押さえていた。




風春 「´´青い稲妻(ブルーサンダー)´´」



その時、ふたりの立つすぐ側まで大量の海水が流れ込んでいた。その波に飲み込まれようとする寸前。



風春の突き出した右拳が目の前に存在する空間を揺れ動かした。



ズググンッ!!



柳生 「空気?が身体にぶつかってるのか?…押し、潰、される」



柳生と風春の間の空間が柳生にのしかかってゆく。



風春が打ち込んだ空間の空気が振動する。すると空間に青い稲妻が起き、稲光(いなびかり)を四方八方へ飛び散らした。



ビキバチバチバチバチチチチイイイィイィイィイイイイッッッッ!!!!!!!!



柳生の目の前は一瞬にして青白い光りに支配された。


柳生(心の声) 「大丈夫。外傷だけなら僕は僕を治せる。影は内側に隠してある」



ズブッ



柳生 「!?」



ナックルの指が柳生の足首に入り込んだ。

そして、ナックルの指の中へ風春が放った青い稲妻が流れ込む。




その稲妻は、柳生の血管の全てを通ると柳生の首もとに隠された黒い影を焼き付くした。




一現実の機内では一


ビュンォオオッッ!!!!


空気を揺さぶる音を上げながら柳生が放った矢が風春の頭部を襲おうとしていた。








ドッ!








音を聞き、目を開いたのは拓磨だった。集中力を上げる為に目を瞑っていた拓磨は急いで立ち上がり状況を確認した。




通路に倒れた柳生。その手にはボーガンが握られていた。そこに矢が無いことに気が付き、先に前方に座る風春の方へ視線をやる。




風春は右手にボーガンの矢を握ったまま正面を向いていた。すんでの所で現実に戻り柳生の放った矢を掴んだのだ。

そして、次に客席中間に位置する巻を確認する。巻は目を覚まし、大きく伸びをしていた。


最後に後ろにあるバックヤードの入口を確認する。

そこにはCA姿の鈴見が上着の下に来ている白いシャツの裾を掴んで立っていた。




拓磨と鈴見の目が合った瞬間。



ガバッ



鈴見は白いシャツをスカートから引き抜いた。




バタバタバタッ




拓磨 「?」



鈴見の足元には柳生が搭乗口で配っていた大量のマシュマロが落ちていた。




どや顔を見せる鈴見であった。


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