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shadow  作者: 新垣新太
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ep9.記憶の森編・6話

一現実の機内では一


拓磨は眠りに落ちる風春、巻、鈴見、柳生の様子を見て回っていた。柳生の表情に変化が現れたのはその時だった。



ピクピク、ピクピク



拓磨(心の声) 「まずいな…眼球急速運動が始まってる。もうレム睡眠まで来てるのか」


柳生の瞼が小刻みに揺れる。


拓磨の顔には焦りの汗が流れる。



拓磨(心の声) 「意識が戻りやすくなってる…」



一柳生の夢の中では一


風春の雷拳・瞬により乗客達は気絶をしていた。だが、異形アーチェリーを使う茶髪女性と刀を使う男だけは意識を取り戻し立ち上がろうとしていた。



風春 「ゾンビだから効かないってか」



柳生 「う~ん♪そうだなー。ちょっと今は君達には眠ってもらいたいかな?」



と言うと柳生は手の平から紅白色のカプセル錠剤を幾つも現した。

そして、柳生の影から紫色の液体が入った注射器が次々と現れると柳生の周りに浮遊する。




目を細めて笑顔を見せる柳生。



フッと風春の視界から柳生が消えた。

と思うとすぐに元の場所に柳生が現れた。



何も状況は変わっていないと風春が思った時、立ち上がろうとしていた茶髪女性と刀男の口に詰め込まれた紅白のカプセル錠剤が爆発した。




パンパンバンバンバンパンパッッッ!!!!!



口からボタボタと血を出しながら床へ倒れたふたり。



風春 「おい、何がしてえ」



柳生 「なんだか?良いじゃないか話の邪魔が入らないんだから」



爆竹の様に弾けたカプセル錠剤の煙で機内は少し白ける。風春のこめかみに太い血管が浮かび上がった。




・・・


一その頃、巻と鈴見は一


非常扉から空へ飛び出した巻と鈴見は、高度1万メートルから急速に落ちていた。



巻 「チッ!寒いな!´´鱗面(ハードスキン)´´」



ズアズアズアッ



巻の体表に半透明の魚の鱗が徐々にコーティングされて行く。



巻 「まぁ、これでいいだろう。あの砂女は?」




と巻が上を見上げると、黄色い砂のマネキンがこちらを向いて微笑んでいた。



鈴見 「やるわね(笑)」




雲を抜け青い海が眼下に現れるとふたりはパラシュートを開いた。ふたりが見つめる先には、乗っていた飛行機が機体を右に傾けて高度が先程よりもゆっくりと下降していた。



空中で平行して落ちる巻と鈴見。


鈴見 「水色頭は機体の底面を守って!私は正面から止めにかかる!」



巻 「うっせえ!指示すんな!、、なあバショウ。海に来るのは久しぶりじゃねえか?」



バシュウゥウゥウゥウッッ!!!



巻の足影からバショウカジキが姿を現す。するとバショウは大きく身体をひねらせると広い海へダイブした。



巻はその姿に満面の笑みだった。



巻 「愚問だな、じゃあみんなで遊ぼうぜ!´´海宴(パレード)´´!」



海面を泳ぐバショウの魚影に、後方から次々と現れる別の魚影達。その数、十になり、百となり、千もの数になった。




バシャン、バシャ、バシャッ!



バショウに続く魚影が海面から跳ね上がり姿を見せた。




鈴見 「わぁイルカだぁ!キュンキュン♪」



千頭のイルカを引き連れたバショウは広い海を悠々と泳ぎ、進行方向を落ち行く飛行機の真下へと向ける。




飛行機の高度は1000キロメートルまで下降していた。




・・・


一機内、柳生と風春は一


柳生 「君、電気を使うんだね♪今までの子達にいなかったよそんな能力は」


無邪気に語る柳生の目は光り輝いていた。



やがて呻き声も消した茶髪女性と刀男。



風春は自分の耳で聞こえる程奥歯をギリギリと噛んでいた。



風春 「、叩き潰す!!」



柳生 「イヒイイ表情だ~!もっと怒ってくれないかな~!そうだ!僕ね陽炎って組織にいるんだけど、なんかやたらと変な奴等に狙われるんだ。そいつらがね、こぞって足首を狙ってくるんだけど、あれって影を斬ったら僕達は能力を失うからみたいなんだよね~!わかりやすいよねバカばっか!、だから僕ね、足首に集中する能力の場所を変えたんだよ天才じゃない僕♪だからここだけの話、君には僕の弱点を教えて上げるよ~♪」



そう言っている柳生の周りで浮遊していた注射器が、風春に向かって飛び始めた。




ビュビュビュビュビュッッッ!!!!




ンダダッ!!



風春は必死に座席の後ろに隠れた。



風春 「クッ!」




一部の注射器が座席に突き刺さる。



ブスブスブススッッ!!




柳生 「´´死亡接種(ヘルピストン)´´♪、、僕の弱点はココ」



と言った柳生は、右手に持っている注射器の針を自分の首の右側面部(みぎそくめんぶ)に当てる。




ブ、スッ


針は柳生の首の中程まで入る。




注射器の中に入っていた紫色の液体が減る。

よだれを垂らして微笑む柳生。




柳生 「首だよ♪」




座席の影から柳生を伺う風春。



風春 「なんだあの注射器。不用意に近付けない。近距離じゃなくて中距離攻撃でアイツをぶっ潰す方法…」



その時、風春の脳裏に祖父・城戸元の正拳突きの姿が(かす)める。




・・・


一丸茂の研究室では一


深田は丸茂の机にいつものバウムクーヘンとコーヒーを置いた。その時、深田は自分の目に入った呪文の様な言葉が書かれたたぬきの陶器に意識を奪われた。



深田 「先生~?可愛いたぬきですけどお腹に何て書いてあるんです?」



丸茂 「ん、これかい?、´´臥薪嘗胆(がしんしょうたん)´´って読むんだ」



深田は更に顔を困らせた。


深田 「がしん、呪文ですか?」



丸茂 「ハハッ、ある種そうかもね。、人影の皆は自身の辛い過去を原動力にして恐ろしいシャドウ達と日々戦ってくれている。自身が使うシャドウの能力に、その辛い過去が特徴として現れるんだ」



深田 「へえー。みんながんばってる」



丸茂 「うん。拓磨君なんかはまだ若いよね、その純粋さが過去に強く引き寄せ過ぎる危うさも恐い。だからこそ私は拓磨君には強くなって欲しいと願っているんだ」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


一赤澤拓磨・12歳の頃一


俺の両親は俺が小学校卒業と同時に離婚した。夜になれば父親と母親はいつもケンカをしていた。理由は様々だったが、俺からしたら大した事でケンカしてるとは思えなかった。ただふたりともやたらと声がでかかった。それが耳障りでしょうがなかった。


平日は学校が終わって友達と暗くなるまで遊び。家に帰ったら用意されている晩御飯を食べ、風呂に入って布団に入って毛布で耳を塞ぐ。


土日は何故か両親は家にいなかったからひとりでテレビを独占してゲームし放題。夜帰って来たふたりがリビングに来たら布団に入って毛布で耳を塞ぐ。



その繰り返しだ。




両親のケンカが日常から消え去れば、何ら他の友達と変わらない普通の家族なのに。

何で普通じゃいられないのだろう。




その内俺は人から距離を取るようになった。

川や山。誰もいない所で遊ぶようになった。

ケンカの記憶を隠すことが出来れば、どれだけ幸せな日々を送れるだろうかと強く思うようになった。




そして、その願いは変な形となって叶ってしまった。




ある日、母親と手を繋いでスーパーへ買い物へ出掛けたとき。明日友達の家に泊まりに行くからお菓子を沢山買って欲しいと俺はお願いした。母親は了解してくれスーパーでお菓子を買ってくれた。その帰り、再び手を繋いで帰る途中、俺は気分を良くして母親にジャンプさせろと要求した。



母親は笑顔で了解した。


俺と母親は両手を繋ぎ、俺だけがしゃがむ。

母親は俺の腕を強く引っ張ると特大ジャンプでフワッと身体が浮き上がる。


俺はたまらなく気持ちよかった。

大人の力を借りて飛ぶジャンプは底無しの可能性があると感じた。



すると、


拓磨の母 「あ、そーだタク!明日友達の家にお泊まりするんでしょ。スーパーでお菓子買って持っていかないと!買いにいこ!」



拓磨 「え?さっき沢山買ったじゃん」



拓磨の母 「買ってないわよ!お母さん買い忘れちゃった」



俺は母親の記憶の一部を隠すことが出来てしまった。




母親のせいではないと、中学1年になった自分でも理解できた。



俺は可笑しい人間だ。



翌日俺は母親に頼んで病院へ連れていってもらった。ちゃんとした病院で、しっかりと調べてくれる病院で。


俺の手はどうして可笑しくなったのかを。





初めて会った先生は、とてもにこやかで柔らかい口調の人だった。



何度も通院する中で、先生は俺の手の事を話してくれた。


自分と相手の手の平を片方ずつ合わせると瞬間的に相手の頭の中にある記憶を隠す事ができる。又、相手の潜在意識に隠れた見られたくないモノを具現化し相手を混乱させる力があると説明された。



ブラック・アウト・メモリー。



これが俺のシャドウと呼ばれる可笑しな現象を起こす名前らしい。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


一現在、拓磨が監視する機内では一


眠っている柳生の手の平に、自分の手を合わせていた拓磨。そっと手を離して柳生の状態を見つめる。


拓磨の後ろには人型ロボットのメモリーが現れていた。



その時柳生の口元からくぐもった言葉が発せられた。うまく言葉になっておらず聞き取ることは出来なかった。



拓磨 「寝言…。浅いな」



どうやら柳生の記憶を隠し切れなかったと悟った拓磨は誰かにメールを送った。




一柳生の夢の中では一


機内に飛び交う注射器の数々。柳生は風春がどういう反撃をしてくるかと考案巡らせる最中ふと何かの違和感を感じた。


柳生(心の声) 「愉快愉快♪、、さっきから少し気になってはいたが、数が合わない。何処かへ隠れた様子もないし気配がない。気を狂わせている間に外にでも逃げおおせたのか?前髪一直線女のCAと水色頭のふたりがいない。…ん?そもそも、さっき女が放った矢が機体前方に穴を開けた時から今まで、何故機内の空気は平穏なのか」




その時、ハッと目を見開いた柳生。


柳生 「…僕とした事が」




ブンッ!!



ズバアッ!!



柳生は自身の右手に影から瞬時に現した180cmの白い手術用メスを握ると目の前にある座席6席分の背もたれ半分から上を削ぎ消した。




柳生 「誰だ?、僕の頭に勝手に入ってきたのは?」



風春 「まずいぞ気付かれた。時間がない」


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