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shadow  作者: 新垣新太
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ep9.記憶の森編・5話

一柳生の夢の中、飛行機内では一


柳生は持っている特別ドリンクを飲み干すと席を立った。


柳生 「今日は実験をしたかったんだ♪配ったマシュマロに入れたのは3倍濃縮の怒りの蜜。凡人が口に入れたらひとたまりもないでしょ。ただ、僕は他の陽炎とは違って満足度が高いんだ。もっと楽しませてもらわないと♪」




すると、柳生のマシュマロを食べた一部の乗客があちこちで意識を朦朧としながら苦しみの声を上げた。近くに座る正常な乗客からは悲鳴や怒りの声が上がり、機内は混乱を招き始めていた。




巻 「ここじゃあアイツと戦うには乗客がいてやりずれぇ」


風春 「でも、早くアイツの影を切らないともっとひどい状態になりますよ」




風春と巻が打開策を模索する中、マシュマロを食べた乗客達に変化が訪れた。




柳生 「ただで死なれても面白くないでしょ?こっちは丹精込めて作ったお菓子をあげたんだから、ちゃんと恩返ししてもらわないと~♪…だから、お菓子を食べた君達には、僕の奴隷ゾンビになってもらうよ」




機内から沸き立つ小さな(うめ)き声、ゆらゆらと席から立ち上がった顔色の悪い乗客達。何処かへ動き出す様子はなくその場で足踏みをしていた。




風春 「人間を制御不能にする能力?」


巻 「まるでゾンビみたいだぞ…ゲームなんかじゃねえぞ」




その時。




ギギギッ、ズビュンッッ!!!




機内で立ち上がる乗客の隙間を縫って空気を裂く音を鳴らしながらボーガンの矢が風春の顔面を狙って飛んできた。




風春 「なん!?(やり)!?」



風春は襲い来る矢を顔面スレスレで避けたものの、矢は勢いをさらに加速させると飛行機前方の操縦席方面の壁に手の平程の大きさの穴を開けて突き抜けた。




ガバキバキバキンンッッッ!!!!!




ガンクンッ!!!




その直後、機体が右に少し傾くと乗客達は右側へよろける。風春は矢の来た方向を見た。



ズズズズッ




風春の視線の先には、茶髪の女性がアーチェリーの様に異形に変形した弓を持って風春の方を向いていた。その顔は明らかに正常とは言えないものだった。




風春(心の声) 「なんだあれは?敵じゃない、乗客だよな、でもみるからに」


巻 「おいハル!、まさかパイロットはゾンビになってないだろうな?」




柳生はゾンビとなった茶髪女性の矢の腕前に興奮する。


柳生 「エクセレント♪素晴らしい能力の持ち主だ君は」




機内に焦げ臭い香りが漂う。そして機長から機内アナウンスで機体の前方に位置する大切な基盤が損傷した為コントロール不能となった事を告げられた。このままだと機体は海へ墜落すると言う。




その時、鈴見が巻に向かって声を上げた。



鈴見 「水色頭!外出ろ!」




巻 「おうおう誰が水色頭だって?」



巻は声がする後方バックヤードから姿を出す鈴見を見た。鈴見はジェスチャーで通路中央の窓側を指差しパラシュートを装着する動作をした。




巻 「そうか俺とやっと戦う気になったってか!」





その直後、



ズバガアアァアッッッ!!!



前方から悲鳴と血飛沫が上がった。振り向く巻と風春、そこには右手で刀を持って下から横に振り上げる乗客がいた。



風春 「刀!?なんでそんなもん持ってんだよ」


巻 「ハル!俺は外出て機体の墜落を何とかする。中は任せたぞ!」



風春 「巻さん!?」


巻 「死ぬなよ(笑)」


そう言うと巻は自分が座っていた非常座席に移動すると、頭上にある色が変わった天井を殴った。



バガッ!



そこから落ちてきたのは緊急用と書かれたパラシュートスーツだった。巻は初見ながらも着用すると次に窓を囲う小さな扉の取ってを両手で力一杯握ると下に下ろした。




ブシュゥゥゥーーーー



巻(心の声) 「まぁ普通だったら非常扉を開けた途端、乗客や機内の機材が一気に開けられた扉に一極集中して外へ排出しようとするだろうな。…でもここは夢の中、あの紫野郎にそんなつまらない終わり方が意識の中にあるとは思えない。ならこの扉を開けた所で、なんの問題もないだろ」



外気が音を立てながら機内へ入り込む音を聞きながら巻は思い切って扉を開けた。



ガチャンッ!



高度1万メートルを飛ぶ機体の非常扉がいとも簡単に開くと、機内の状況には何の変化もなかった。




巻 「やっぱり」


ドン!



すると巻は誰かに腰を蹴られると予想もしないタイミングで外へ放り出された。



鈴見 「さっさと出る!」



犯人は鈴見だった。既にパラシュートスーツを着た鈴見は巻を蹴飛ばすと非常扉を閉めて自分も後に続いて空へ飛び出した。




巻(心の声) 「夢だからと言っても飛行機を墜落させるのは一般人に影響がゼロとは言えない。下は海だ。ハルには悪いがここは俺と砂女で飛行機を何とかした方が勝算が高い。ゾンビになってるだけならハルの力で充分戦えるだろう。問題はあの紫野郎がどんな技を持ってるかだ」




機内ではゾンビとなった乗客が増え、呻き声も増し柳生の笑い声が高らかにこだましていた。



風春 「この地獄みたいな状況でアイツを、倒す。ゾンビったって元は普通の人間」



風春は通路中央でしゃがむ。


そんな風春を再び茶髪女性のゾンビが異形アーチェリーの弦をしならせながら矢を引いている。



ギギギッ



そして、風春の5メートル後ろからは刀を持った男性ゾンビが居合い斬りの構えをして風春を狙っていた。




風春は右手だけを床に付けると目を閉じた。



鈴見から機内入口で耳打ちされたのを思い出す。


鈴見 「もし乗客を柳生が手駒として使うような事があった場合。兄さんの電気が一番有効的かも」


風春 「え?」


鈴見 「私の調べによるとね、0.1秒の電気ショック程度なら一般人に後遺症を残さずに気絶させられるって話。忘れても私を恨まないでね♪」






風春(心の声) 「乗客に被害が出ない最小限の方法。アイツを倒すにはこれしかない」




バチバチッ!



風春の右手から微かな電気が流れる。



その時、



ズビュンッッ!!!


異形アーチェリーから矢が飛び、


ズダタッッ!!!


刀を握る男が俊足で走り出した。




風春は鼻からゆっくりと息をはき、

瞼を開き目に力を入れる。




柳生 「ゾンビって楽しいね~♪」


柳生はひとり狂っていた。




機内が少し暗くなった。



その瞬間。




風春 「´´雷拳(ライジングサンダー)(またたき)´´」




雷光と共に弾ける電撃が乗客と柳生を襲った。




ハチバチハチバチハチバチハチバチチチチチチチチチチッッッッッ!!!!!!!





放たれた矢は吹き飛び、走り出した刀男を含めた乗客全員が気絶をして倒れた。




唯一意識があったのは風春と、





柳生 「うわあぁ……何だ?…血管がピクピク振動して血液がビリビリした。フフ、初めて感じたよ……」





柳生だった。





柳生 「君♪興味深い子だねぇ…」



柳生の瞳は異常に血走っていた。


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