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shadow  作者: 新垣新太
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ep8.偽造編・2話

水道橋にある昭和ホール周辺では´´秋祭り´´が開催され街は賑わっていた。祭りの出店の射的屋では小学2年生の夢子(ゆめこ)が店主の男と何やら話をしていた。



夢子 「ねぇおじちゃん!´´ドリームガール´´のフィギュアが全然取れないよ!、さっきっから何回も当たってるのにー!」



夢子は小さな射的銃を手で叩きながらご乱心だった。´´ドリームガール´´は毎週日曜日の朝に放送されているアニメのキャラクター。夢子はそのアニメを欠かさず見るほど好きな故にフィギュアが取れないと苛立っていた。



店主の男はパイプ椅子に座ったまま夢子の抗議を聞いていた。缶コーヒーを一口飲むと椅子から立ち上がり´´ドリームガール´´のフィギュアの所まで移動する。



その店主は黒髪オールバックにスカジャンとダボついたジーパンの格好をしている。夢子に背を向け何やらフィギュアをいじっていた。



稲荷享士郎(いなりきょうしろう) 「…あ、」



夢子 「的が倒れないようにしてあるんじゃないの?」




稲荷は3段ある射的台の2段目にある´´ドリームガール´´の足の裏に貼り付けられた両面テープを夢子に見られないように剥がした。




稲荷 「銃が良くなかったか…」


そう言うと稲荷はスカジャンの内側に手を入れると焦げ茶色の拳銃の形をしたモノを取り出した。



カチャッ



そして稲荷は右手に持った拳銃の形をしたモノを夢子に構えた。



稲荷 「払えんの?」




夢子 「(何?倒れなかったのはこの銃の威力が弱かったから?)……当たり前よ!銃を1段階上げるわ!母さん!」



夢子は銃を構えた稲荷を睨みながら声を出した。



夢子の母・(のぞみ) 「もうこれで最後よ」



母・望は財布から1000円札を出すと稲荷に渡した。


稲荷は黙って母・望からお金を受け取る。




稲荷 「…はい。…玉は3発」


稲荷は持っていた射的銃を夢子に渡すと直ぐに座っていたパイプ椅子に腰掛ける。



夢子 「さっきのより少し重たい…」


夢子は射的銃を両手で掴み´´ドリームガール´´にしっかりと照準を定める。



母・望 「大丈夫?」



夢子 「今集中してるから!」



夢子は´´ドリームガール´´の左肩を狙うことに決めた。引き金にゆっくりと力を入れ、息を止めると目を細めて最終調整に計る。



パァンッ!


放たれたコルク玉はブレながら飛んだ。



カッ!



´´ドリームガール´´の左肩にコルク玉が当たり、輝く目がゆっくりと正面から天を仰ぎ、´´ドリームガール´´が射的台からストンと落ちた。



母・望 「すごーい!当たったよ夢子!」


夢子 「よっしゃぁあーー!!!」



夢子は飛んで喜び母・望と抱き合った。喜びも束の間。


稲荷 「はい」


少しぶっきらぼうな声で稲荷は、白いビニールに入れたフィギュアを夢子の前に差し出した。



夢子 「楽勝だった!」


夢子は稲荷に勝者の笑みを見せながらそれを受け取った。夢子と母・望は射的屋を離れ、夢子は袋の中を確認した。




夢子 「え?お金入ってるよ」


夢子は袋に入っていた1000円札を取り出して母・望に見せた。



母・望 「あら本当。なんで?」


夢子 「返さないと」


と夢子が射的屋へ向かって1000円札を返しに行こうと射的屋の稲荷を見た。




こっちに来るな。




と稲荷は右手で夢子達に向かって手を払っていた。



夢子 「お母さん良いの?」


母・望 「そうねぇ。何回もチャレンジしたからサービスしてくれたのかもねぇ」


夢子 「…じゃあまた今度来ようよ!」


母・望 「またってここ初めて来たんじゃない。お祭りはすぐ終わっちゃうわよ!」


夢子 「来年!」



夢子は母・望よりも先へ進み、スキップをしながら袋に入った´´ドリームガール´´を眺めていた。




その頃、山田と別れて外に出てきた鈴見は、何か嫌な臭いを感じて辺りを見回していた。


その視界には夢子達がいた射的屋があった。



鈴見 「…あっちから(にお)ってる?」


そう言いながら足を射的屋の方向へ進めた。



すると、


鈴見の目の前を図々しくも横切る団体に足止めをくらった。その団体は、全身プロレスグッズで彩られ、鈴見を見る事なく話ながら直ぐ側の昭和ホールの入場口へ吸い込まれていった。



鈴見 「っあー!微かな臭いだから今行きたいのに行けないー!、オコだよ」




その頃、稲荷は夢子達を手で払った後椅子の下に置いた缶コーヒーを取って口をつけた。



稲荷 「…あ」


缶コーヒーの中は空っぽだった。



稲荷 「一服して帰るか」


稲荷はジーパンの尻ポケットから取り出した煙草に火を付けて店を離れると、ふと誰かの視線が気になり後ろを振り返ろうとしたがそのまま近くの喫煙所へ向かった。


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