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shadow  作者: 新垣新太
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ep6.フロストフラワー編・7話

山田達が美術館に向かう途中、大きなブーメランが館内へと侵入し破壊を始めた瞬間を目撃するとすぐさま3人は美術館へ走った。


新井 「山田さん!早くスコープしてください!」


山田は新井に手渡されたシャドウ可視化スコープを掛ける。


山田 「おでましだな」




美術館の側まで走り寄った3人。その時、新井と鈴見は背後に威圧感を感じ振り返る。



すると山田達が走って来た公園の方向10メートル先の所に黒いバンダナで目隠しをした男が立っていた。



新井 「?…なんだ、あの人」


鈴見 「さっきまで何も感じなかったっすよ」




河野森叶(こうのもりかなえ) 「…」




目隠しをした男は、野球帽を被り古着姿で沈黙を保っていた。




すると山田達の側にある美術館のガラス張りの壁面が並ぶうちの1枚のガラスが(かす)みがかる。



パキパキキ、パキパキパキキッ



大谷は霞みがかるガラスに右手を触れていた。

その足元には白い猫が丸いマッドアイの瞳でガラスに近付くとペロリとガラスを舐めた。




パリリイイィイィイィインンン!




その瞬間。霞みがかるガラスの壁が粉々に砕けると、館内から大谷が美術館前の広間に出てきた。




山田 「びっくりさせるなよ新井~」

新井 「いや僕じゃないですよ」

鈴見 「誰か出て来ましたよ」



山田達の左側には大谷が現れ、右側には目隠し男が何もせずに立つ間に挟まれる形となった。




山田 「…ん?、相子ちゃん?、そうだよ誰かと思えば相子ちゃんじゃない!?」


新井 「え?」


急に撫で声に変わった山田は、大谷を見つけると腰が低くなった。



山田 「いやぁびっくりした。こんな所にいるなんて元気だったかい?」



大谷 「…下の名前で呼ばないで」


山田 「またまた相子ちゃんと僕との関係じゃない」



大谷 「…耳…腐ってるの?…次、下の名前で呼んだら本当に耳、腐らせるよ。ここは私のエリア、邪魔しないで」


氷の様に冷たい視線が山田の顔面を突き刺した。


山田 「ンハハハ。ンハハ。…アーァ。こりゃ参ったな…」


新井 「山田さん誰なんですかあの方」

と小声で山田に語り掛ける新井。


山田 「あぁ、要注意人物だ。これ以上会話を続けられねえ。ここは俺達の出番が無さそうだ」


新井 「え?じゃあどうするんですか?」


山田 「俺達は一般人の避難誘導係に徹する。SBTは手配済みだよな?」


新井 「はい」


山田 「じゃあそいつらにも伝えておけ。銀髪の女とは目合わせるな、邪魔するなってな」




コソコソと山田と新井が話していた時。




バゴォオォオォオオオンッ!!!




館内で暴れていた大きなブーメランが美術館の壁面を突き破り広間へ出てくると山田達に向かってグングンと近付いてきた。




ブンブンブンブンブンッ!!!!




山田 「鈴見ー!」


鈴見 「´´砂壁(ゴーレム)level2・(かご)´´」



鈴見が山田と新井の前にしゃがみ両手を地面につける。



ズバァアァアァアアアアッ!!!!



すると突如として山田達3人を取り囲む大きな鳥籠が現れた。籠の骨組み部分には細かな薔薇の砂像が施されていた。




ブンブンブブブンッ!!



大きなブーメランは鈴見が現した鳥籠のスレスレを通り過ぎる。



パシンッ!!



鳥籠に当たらなかったブーメランは、河野森の元へ近付くと軽やかにブーメランをキャッチされてホルダーが付いている背中に引っかけられた。




河野森 「…シャドウの力を感じる」




山田 「俺達は避難誘導係だ!行け!」


山田の掛け声で新井と鈴見は避難に遅れる一般人の元へ向かった。




キイィ!、タ、タッ!




すると、美術館広間の脇に停められたタクシーの中から巻と風春が降りてきた。



風春 「巻さんが駅前のポスター見つけて美術館に行きたいって関係無いこと言ってたのに、…なんか結果オーライみたいな雰囲気出てますよ」


巻 「マジ?…今日はついてるかもな(笑)」




風春と巻は河野森と大谷がいる広間へ走って行く。明らかにシャドウ使いが何かを起こした状況を把握した巻と風春は、銀髪の大谷に声を掛けようとした。




巻 「そこの銀髪の姉ちゃん!何があった?」


風春(心の声) 「銀髪……岡田さんが言ってた人影のメンバーってたしか銀髪って言ってなかったっけ?」




正に大谷は河野森と戦闘を始めようとしていた所に、巻に声を掛けられて不機嫌な目付きでふたりを睨んだ。




大谷 「…邪魔。…消えて」



巻 「あ?」



大谷 「…邪魔するならあなた達から先に氷にするわよ」


大谷の幼く美しい顔に似つかわしくない言葉が巻と風春に突き刺さる。

その時、風春はここへ来る前に岡田から言われた言葉を思い出した。



岡田 「次向かう所は大谷って銀髪の女が担当するエリアだ。だが大谷は人影のメンバーの中でも一番取り扱いが難しい奴でね。…かえって風春達を邪魔者扱いする可能性が高い。もしそうなったら別の場所へ向かってくれ。その場所は…」



風春は大谷と巻の会話を中断させるべく急いで巻に声をかけた。


風春 「巻さんあの人っ…」



ダダダッ!



その時、巻は風春の側を離れて美術館の中へ突入していた。



巻 「ハル!格好良い奴見つけた!!」


風春 「なんで!?」



大谷の邪魔をしてはならないと感じ取った風春は、広間から巻が入った美術館へ向かった。




ざわめく広間に河野森は再び大きなブーメランに手を掛けると大きく後ろへ振りかぶりサブマリン投法でブーメランを投げる。




河野森 「あんたが特別強そうだ…´´音触(ビートスロウ)´´」




ブヒュンッ!



地面ギリギリを疾走するブーメランは左右にブレながら回転し大谷に向かって飛ぶ。





白い猫 「ミャーオォ」


白い猫が大谷の足元からスタタっと肩の上まで移動すると大きなあくびをした。




大谷 「´´白猫(クールキャット)´´」




大谷の声に反応した白い猫。鋭い爪をニョキリと柔らかい手足から突き出すと肩の上からジャンプした。



すると、大谷の前方にジャンプした白い猫は身体のサイズをチーター程に大きく変化させる。



白い猫 「キシャーーー!!!」



大谷に向かってくるブーメランに対し白い猫の鋭い爪が繰り出された。




ズバアァアァアッ!!!




スタンっ



ブーメランに攻撃を出し終えた白い猫は身体のサイズを元の大きさに戻して着地すると毛繕いをし始めた。




ブン、ブン、、ブ、、、


パ、パキパキ、、パァアアンン!




白い猫の鋭い爪の攻撃を受けたブーメランは、大谷の方向へ向かう途中徐々に速度と回転が緩くなる。

そして、ブーメランは急速に凍り始めると粉雪の様に細かい白い粉となって弾けた。




河野森 「氷の音がした…氷か。初めての相手だ」




ズズズッ



と言いながら影から新たなブーメランを現した河野森。




すると大谷の前には黒い達磨(だるま)が1つ置かれていた。




大谷 「´´黒達磨(ブラックマン)´´」




ドッ



大谷は小さな右足で黒達磨の頭を蹴った。

すると黒達磨は前へ転がり始める。




グルン、グルン、、グルッグルッ、グルグル!



河野森に向かって転がる黒達磨は、回転をすればするほどその形が大きくなっていった。

30センチ程だった黒達磨はいつしか180センチ程の大きさに変わる。




グルン、グルン、、ダンダダン!



すると回転する黒達磨から全方位にトゲが現れるとまるで巨大なウニの様に変化して河野森に転がって行く。




河野森 「´´二重奏(ダブルビート)´´」


河野森は白い大きなブーメランを両手で挟みゆっくりとスライドさせた。



スズスッ



するとブーメランが2枚に分かれた。

河野森は2枚になったブーメランを片方ずつ左右の手で持ち交差するようにしてブーメランを投げた。




シュブンッ!!



勢いよく回転しながら河野森の投げたブーメランが黒達磨の胴体を真っ二つに切り裂いた。




スパァアアン!





河野森 「…?音が止まらない?」



河野森の攻撃で真っ二つにされた黒達磨は、それぞれが独立して新しいトゲ黒達磨となって回転し始めると再び河野森に向かって転がって行く。




河野森 「分裂か、面白いね」




すると河野森が投げたブーメランが方向を変えて帰ってくる。そのブーメランは再び黒達磨をスパスパと真っ二つにし続けて行く。




だが、切られても切られてもトゲ黒達磨は動きを止めずどんどんと数を増して沢山の小さなトゲ黒達磨が生まれた。

気づけば河野森を取り囲むように空中や地面あちこちにチビトゲ黒達磨が回転していた。





グルン、グルン、グルグルグルグルッ!!!!




大谷 「さよなら」



河野森を取り囲むチビトゲ黒達磨達が一斉に飛び掛かった。






河野森 「´´反抗(アラブルビート)´´」



チビトゲ黒達磨達が河野森に飛び掛かる寸前。

河野森が影から銀色のブーメランを取り出した。


すると



ズズズズッ



そのブーメランの中から全身をダイヤモンドで包んだ化身が姿を現すとブーメランを振り回しチビトゲ黒達磨を粉々に砕き散らした。




ガッガッガッバキバキバキバキイィイィイィンンン!!!!





ダイヤモンドの化身が黒達磨達を弾き飛ばすと、持っていたブーメランを目隠し男に渡した。



パシン!



目隠し男は受け取ったブーメランを振りかぶる。

銀色のブーメランはキラキラと光を反射させながらメキメキと硬いダイヤモンドへと変化する。



その瞬間河野森は素早い腕の振りでダイヤモンドブーメランを大谷へ向かって投げた。




ブヒュンッ!!!




低空飛行でダイヤモンドブーメランが大谷へと迫る。





大谷 「´´湖花(フロストフラワー)´´」





大谷が小さく呟いた途端だった。



大谷と河野森が立つ美術館の広間が一瞬にして氷の地面に変わる。



そして、氷の地面の所々から白い氷の花が盛り上がると1.5メートルサイズの大きさにまで成長する。




大谷 「知ってる?…影って凍るの」




河野森 「…何か嫌な感じだ」



河野森は背筋(せすじ)にヒヤリと冷気を感じた。




大谷 「湖花(フロストフラワー)に影が触れるだけで影は凍って粉と化す」




河野森の背後には1.5メートルサイズの湖花(フロストフラワー)が咲いていた。



その白い花には河野森の影が半分掛かっていた。





河野森の影が端から白く凍り始める。



凍り出した部分から影が粉となって地上に散る。




ドン!




片膝を地面について苦しむ河野森。




ヒュンヒュンビュン、ビュ



パキ、パキ、、パアァアァアアアンンンッ!!!!




放たれたダイヤモンドブーメランが大谷に当たる手前で、瞬時に氷となると破裂して粉々に散ってしまった。




ビュォオォオォオオッ!!




粉々に砕けたブーメランが氷の粒になり風に乗って大谷の全身に吹き付ける。

大谷の銀髪が棚引く。

ブーメランに残るダイヤモンドがキラキラと空に輝いて舞う。




河野森 「…身体が…動か……ない…」




ドサッ




河野森は身体を硬直させたまま意識を失い地面に倒れた。






大谷 「……」




大谷は河野森の側に来ると白い正方形の紙を薄まる影に落とした。




・・・


一美術館館内では一


我先にと館内へ侵入した巻が向かったのは、自分の身長よりもはるか2メートルも高い銅像だった。その銅像の姿は上半身裸の男で右手に赤い銛を持ち勇ましく構えていた。



´´海を統べる伝説の漁師´´



その銅像の台座部分にはネームプレートが付いておりタイトルだけが表示されていた。




巻 「………ぉおう…こりゃ良いもん見れた」




タッタッタッタッ!


そこへ走って駆け付けた風春が巻の腕を引っ張る。




風春 「巻さんここはあの銀髪の人に任せて次の場所に行きましょ!」


巻 「おぉっ……離れて見ると尚良いな」




・・・


一その頃、とある温泉浴場施設のサウナ室では一


木目調の室内には雛壇型の座席が広がり、サウナを愛する猛者達が全身から粒の汗を流していた。



定期的に岩石に注水が行われると蒸気が室内に充満し猛者の身体を刺激する。



汗を流し終えた猛者。木の扉を開けて入ってくる猛者。入れ替わりが行われると扉の隙間から入る涼しい風が猛者達の心を一時(ひととき)だけ癒す。




そのサウナ室の最上段ど真ん中で目を瞑り呼吸を整え額から汗粒を溜める柳田が座っていた。




スーーッ。フーーッ。スーーッ、フーーッ




柳田はサウナ室にいる誰よりも長く座り汗を流した。

呼吸を乱さず熱い空気を喉から全身に流し込み、筋肉をほぐし和らげて行く。




ガッ、スゥウゥウゥ




柳田は木の取っ手を押して扉を開け外へ出る。

直ぐ隣に設置された水風呂から手で掬った水を胸に2度当てる。




スブウゥン




頭の先まで水風呂に浸かるとゆっくり息を整えて静かに冷水から身体を出した。




筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)の身体を強く絞った白いタオルで丁寧に拭き取る。




柳田 「フゥーー。……熱い」


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