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shadow  作者: 新垣新太
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ep5.カラクリの椅子編・4話

巻と風春は´´救護室´´と書かれた部屋に入ると、既に寝台の上に横になる岡田に救護スタッフが手当てを始めていた。巻と風春は横になる岡田の視界に入る所まで移動すると岡田から声を掛けられた。


岡田 「…負けたよ。…それと、すまないね兄さん。せっかく貰った青い棒、綺麗に折られちゃったよ」


最後まで手に持っていた2つに折られたブルーラインを岡田は巻に向かって手渡した。


巻 「アイツ…強かったか?」


岡田 「まぁ。…今日が初めての対戦だったから、勝つ確率は低いとは思ってたけど。…折れたその子はもう使えないんだ。だからまた、新しい相棒を作ってくれ。申し訳ないね」


救護スタッフ 「この後も治療が続きますので、お連れ様はお帰りになって下さい」


そう告げられた巻と風春は、帰り方が分からないんですの表情を見せると、すぐにそれを読み取ったもうひとりの救護スタッフが出口まで案内してくれた。



救護室を出る巻達。



岡田 「明日、またシャドウクラブで待ってるよ。次は兄さんが試合に呼ばれるかもしれないよ…」


風春 「お大事に…」



寝台の上で白い天井を見つめながら、左手の指先で摘まんでいた木の破片を視界中央に入れた岡田。

しばらくその破片を眺めながら治療を受けていた。




救護スタッフ 「ここがシャドウクラブの内部専用エレベーターになります。このまま´´1階´´のボタンを押せば、地上1階の従業員専用出口の脇に出ますので裏手からお帰り下さい。次回入場頂く際もこのエレベーターを使用下さい」


救護スタッフに連れられて黒塗りのエレベーター入口で開いたドアから巻と風春は中に入った。


風春 「はい」


巻 「…え?、ちょっとま、」


巻の呼び止めの声を聞かずに、救護スタッフはその場からいなくなってしまった。



エレベータードアが閉まる。



巻 「ハル、今の人の話じゃ、俺達がわざわざ落下しなくてもここまで来れたって事だよな?」


風春 「……あ。そうか、そうですよね!じゃああの人わざと」


巻 「やりやがった…ハナっから俺達を落下させるつもりで案内したんだな」


風春 「そう言えばあの人の名前知らないっすね」



´´1階です´´



エレベーターのスピーカーから小さな女性の声が到着を知らせる。巻と風春はキャラメルポップコーンの香り漂うフクロウフォレストの裏手から出ると宿泊するためのホテルを探しに歩いた。




・・・


一その翌日一


午前11時。救護スタッフからシャドウクラブの開場時間を聞いていた巻と風春は再び内部専用エレベーターを使用して地下へと降りていった。



巻 「わりぃなハル。今日も俺はエントリー出来ねぇ。新しい銛を作らないといけなくなったからな」


風春 「そうっすね。俺いつ呼ばれても戦えるように準備運動してきたんすよ!」




シャドウクラブの内部通路に到着した巻と風春は、昨日来た通路の記憶を頼りに闘技場を目指して進む。通路をすれ違う人の多さは昨日程ではなかった。



通路先に明るい照明を放つ広い闘技場が見えた。



ワアァァ!ワアアァ!ワアァー!!!



場内は6割程客席が埋まり、既に闘技場では試合が行われていた。巻と風春は空いている客席に座ると風春は選手エントリーのナンバーシールを右胸に貼り付けた。



風春 「意外に席埋まってますね」


巻 「にしても信じられねぇ。俺達の知らない所で、シャドウ使いがこんなに闘ってるなんて。…早く闘いてぇな(笑)」


風春(心の声) 「なんかやっぱ主旨がズレてんだよなぁ巻さん」




すると試合をしていた選手が闘技場からひとりだけ歩いて退場した。もうひとりの選手は救護スタッフに運ばれながら闘技場を後にする。




ドッドッドッドッドン




選手の退場が終わると、直ぐに場内に重低音が響くと共に照明の光がかなり弱くなった。そして闘技場マットの上にスクリーンが投影されると、そこにランダムに数字が表示され始めた。



場内マイク 「続いて行われる試合の選手ナンバーを発表します」



風春の右胸に付けられた番号は´´115´´。場内にいる全員がマットに投影されるランダムの数字に注目する。



巻 「ハル…呼ばれると良いな」


風春 「そう言われるとなんか緊張しますよ」




ランダムに動く数字が止まる。




場内マイク 「エントリーNo.7、No.7。闘技場に入場してください」



風春 「…違った」



すると再びマットに投影された数字が動き出す。水色の円形の中に浮かぶ黄色い数字が次々と表示を変える。




そして


まもなくしてランダムに動く数字が止まった。




場内マイク 「続いてエントリーNo.115、No.115。闘技場に入場してください」




巻 「行ってこいハル」

風春 「呼ばれんの早くないっすか?」


巻 「良いから行け」



風春は席を立ち階段を降りながら暗い通路を歩いて行く。すると、徐々に場内が明るくなると初めに風春達が闘技場に入場した時の明るさに戻った。



風春は闘技場の黒い金網の柵が一部開けられた所で場内スタッフに声を掛けた。



風春 「すいません、俺の番号115番です」



場内スタッフは風春の右胸に付けられた番号を確認するとボディチェックと口の中をライトで照らされると闘技場内に入場するよう指示された。



風春 「おぉ…マットは気持ち張りがあるな。思ってるより金網の柵が高い」



まだ誰もいない闘技場にひとり入った風春は、闘技場内の雰囲気を確かめていた。







すると







白いスーツに身を包み車椅子に乗って闘技場の入口に近付いてくる人の姿を風春は金網越しに確認した。




青緑色の髪の毛はワックスで整えられ、微かに微笑みの表情が金網の内側からでもわかった。




風春 「もしかして……」







風春は覚えていた。



ギャンブルストリートでの記憶が蘇る。



あの姿。



あの表情。




風春 「……鷹取(たかとり)…」




入口でボディチェックを受けた鷹取は、車椅子からゆっくりと右足を床に降ろす。

そして左足を次に降ろすと下を向いて立ち上がり、顔を上げて風春に恐怖を与える圧のある表情を見せる。




ゾワゾワゾワゾワッ!




風春の全身に鳥肌が立った。




あの時初めて鷹取と対峙したときの記憶が鮮明に蘇る。




狂気。




笑いながら殺気を放つ鷹取の表情と身体全体から放たれる狂気。




風春(心の声) 「…あれ?…おかしい。…あの時アイツの手足は俺達が奪ったはず。…何で立ってる。何で手足が付いている」




鷹取 「んふっ♪風春、君。奇遇かなぁ。……それとも運命かな♪」




鷹取は手首に残る縫い跡を指でなぞりながら舌舐めずりをした。



ガラガラガラガラッガシャアァン



金網の柵が音を立てて閉まった。




鷹取 「その顔。…何でボクの手足が付いてるのかって動揺でもしてるのかい?…んふっ。ボクの手足はちゃんと君達に奪われたまま。だから他の人の手足を借りてるんだ。ここでリハビリも兼ねて遊んでたんだけど。まさかそっちからボクの前に現れてくれるなんてね♪」




風春(心の声) 「あれはアイツの手足じゃない?じゃあ誰の……そうだとしても早すぎる。この数ヶ月であんなに手が動かせて立ってるなんてあり得るのか?」




場内マイク 「只今より、No.7とNo.115の対戦を始める。時間は10分1ラウンド。この試合に掛けられた合計金額が勝者の報酬とする。…問題がなければ両者拳を合わせて試合を始めてください」




コッコッ、コッコッ




滑らかな足取りで闘技場中央まで進む鷹取。




風春 「コイツ…狂ってるだろ」


風春も闘技場中央へ足を進める。




鷹取 「風春君。ここはゲームを楽しむ場所じゃないからね。…どれだけ強くなったかな?」



風春 「うるせえ」




コッ




両者の拳が付き合わされた。



金網上部の電光掲示板のタイマーが時を進める。



風春は後方に下がり鷹取との距離を取る。




鷹取 「んふっ!」




ズヒュッ!




鷹取は離れた距離を埋めるように、勢いよく飛び出すと風春に急接近した。



風春の耳元で鷹取が(ささや)く。



鷹取 「ねぇ…早く返してよボクの手と足」



風春 「クッ!…ソが!!」



風春は右の裏拳で右にいる鷹取の顔面を狙うが、華麗に避けられる。風春は背後に回った鷹取に目掛けて右の拳を振るう。



風春 「ナックル!」


ボシュウゥウゥウゥ!



ナックルが風春の横に現れる。



風春 「´´斬拳(ソニックナックル)´´!」



ブザアアンッ!!



黄色い斬撃が右の拳から放たれる。半月状の斬拳は鷹取の足元を切り裂く様に飛ぶ。




鷹取 「フッ…美しい技だ。それが君のシャドウ。君の力か」



ダンッ!



鷹取は華麗なステップで風春の斬拳を避けると再び風春に迫る。




風春 「速い…準備する間もなく近付いてくる」



迫る鷹取から右の拳が風春の顔面に繰り出される。



シュンッ



風春は上体を低くしてそれを避けると素早く右フックを鷹取の顎に目掛けて繰り出した。



バシッ!!



風春 「んっ!?」



風春の右フックを鷹取は微笑みながら左手で受け止めた。




風春 「なろっ!」


シュッ!




風春は瞬時に左ストレートを鷹取の顔面を狙って打ち出す。



ガシッ!




鷹取 「…強いパンチ♪」



鷹取は更に右手で風春の左ストレートを受け止める。




グググッ、ンググ、ググッ



静かな顔の両者は、両手の力を全力で使い合い力比べをする。




風春 「…ぐっ、離せお、らっ!!」




すると鷹取が右足を上げると風春の胸板に足底を向け思い切り蹴り出した。風春は勢い良く飛ばされて黒い金網にぶつかる。




ガッシャァアァアァアンンン!!!




鷹取 「う~~ん♪」



鷹取は自分の両手を開いたり閉じたりして何かを確認していた。


鷹取 「…まだボクとの連動がうまくいっていないみたいだね。それとも女性の手だから柔らかいのかな♪」




風春は胸を蹴られ苦しそうにするも、なんとか立ち上がろうとする。




風春 「てめぇ……その手…誰の手だ…」




ニッと笑う鷹取は何も答えない。



鷹取 「シン」



ボシュウゥウゥウゥ!



鷹取の後ろにシンが現れた。

首に十二音符のタトゥーを覗かせる。



鷹取 「まだ手の調子がイマイチなんだ。…´´女王の(クイーンズロック)´´にしよう」



シン 「わかった」



バシュウゥゥ



そして鷹取が胸の前で柔らかく両手を開くと、一瞬だけ手首から先に光が帯びた。


すると、鷹取の両手の甲に数字がランダムに表示された。






金網上部に表示される試合経過時間は5分を告げていた。






鷹取 「残念だけど時間が無いからね。ボクは早く自分の手足が欲しいんだ。遊びはここまで♪」




風春 「倒せるもんならな…来いよっ」



鷹取 「お言葉に甘えて♪」



ダシュッ!!



鷹取は力強くマットを蹴り出すと一気に金網の前に立つ風春まで近付いた。




向かってくる鷹取を両腕のガードを上げて待ち構える風春。



風春(心の声) 「近距離戦ならこの間使った´´雷拳(ライジングサンダー)´´を打ち込めるかもしれない。ここはアイツを引き付ける…来る、左のボディか…」



距離を詰めた鷹取は風春の右の脇腹に向けてパンチを出そうと振り出した。



ピタッ



だが鷹取は風春の脇腹寸前でパンチを止めた。



鷹取 「まずは右のプラスを決めるよ♪」



風春が鷹取の繰り出す左パンチを防御するために固めたガードむなしく。鷹取は瞬時に攻撃を右フックに切り替え、ガードが低くなっている風春の側頭部目掛けて振り切った。





ガズンッ!!!





風春(心の声) 「くっそっ!逆だった…切り替えやがった!」



風春は鷹取の右フックが側頭部に当たるギリギリの所で左の拳を間に挟んだが、打撃力が強すぎて右に身体を動かさざる得なかった。




鷹取 「よく反応したね……まぁいい。プラスは´´8´´」



鷹取は右フックを終えた自分の右手の甲を確認した。そこには黒い数字で´´8´´と表示されたまま残っていた。




鷹取 「次は左のマイナス♪」



左へ逃げる風春を追い掛けて鷹取が距離を詰めようと動く。



風春は右フックを受けた勢いを逃がしながら体勢を元に戻すと、すぐに鷹取がこちらへ向かってくるのを確認した。




風春 「んなろぅ」




鷹取が風春の(ふところ)に入ろうとした瞬間。



巻 「バックハンドブロー」



風春は身体を反時計回りに動かし右手の裏拳を鷹取の顔面に目掛けて振り切った。



シュッ!!



鷹取は顔を後ろに引き下げて風春の裏拳を避けようとする。


鷹取(心の声) 「う~ん♪腕が短くてそれじゃ届かないよ」



その時



ブウゥゥン!




風春 「´´隠し(ナックラー)´´」



鷹取 「!?」



風春の中から現れたナックルが風春の右手から更にリーチを伸ばしてバックハンドブローを繰り出すと鷹取の顔面を捉える。




ガッ!




鷹取はナックルの裏拳が当たる瞬間に顔を横に動かし打撃を逃がしたが、鼻から血が飛び出し飛沫が白いスーツに少し付いた。



鷹取 「ん~気持ちいい♪」



右手の親指で鼻血を拭き取ると、その指をペロッと舐めた。


鷹取はナックルの攻撃を受けながらも勢いは止まらず、左の拳を風春の土手っ腹にめり込ませた。




ドスウゥゥッ!!




風春 「ぐうっ!…やべぇ」



風春は鷹取の拳が自身の内臓を徐々に捻り潰すような感触を感じた。



ガシャアアァンッ!!!




黒い金網に風春の身体がぶつかる。



鷹取の左手の甲には´´-1´´と数字が表示されたまま残っていた。



鷹取は風春に背を向けて歩きながら、お腹の前で両手を握り拳を中央でくっつける。




トンッ




鷹取 「´´審判(セット)´´」






岡田 「…劣勢だね兄さん」


巻が座る隣の席に岡田が腰を下ろした。


巻 「おぉ…ハルの相手も強ぇ奴だ」






すると拳を合わせた鷹取の手の甲の数字が動き出し、右手の甲には´´7´´の数字が赤く表示され左手の甲には何も表示されなくなっていた。



鷹取 「んふっ♪ラッキーセブンだ。ありがとう風春君♪」




ムクッ、ヨロ、、ヨロ






風春 「…あぁ。今のは効いたぜ…」


風春は身体をよろめかせながら金網に寄りかかって立ち上がる。




鷹取 「うん♪手の順応も良くなってきた。…さみしいなー。もう離れてしまうよ。でも、綺麗にして部屋に飾るから大丈夫だ」




風春 「…無視すんなよ」




バチ、バチバチッ




風春が両手の拳を握り締めた時。黒い電撃が音を小さく立てた。




鷹取 「?…何か言ったかい?」




風春の方へ振り返る鷹取はスーツのジャケットを脱いだ。ジャケットの中から強靭な肉体を包む白いワイシャツが露になる。




鷹取 「もう闘える余力も残ってないでしょ♪…恨まないでね」



そう微笑むと鷹取は再び風春の元に瞬時に移動する。



フッ



虚ろな目付きの風春はしっかりと鷹取の動きを目で捉えていた。



ノーガードの風春の左脇腹に向けて鷹取の右拳が襲い掛かる。




ブンブンブブブンッ!




その瞬間。鷹取の右手の周りに黒い拳が7つ現れると、その拳が鷹取の右手の中に入り込む。



鷹取 「´´倍々(ロックンロール)´´。これでお・し・ま・い♪」



けたたましい形相で強烈な一撃を狙って鷹取がにやける。




グンッ




風春の脇腹に鷹取の拳が食い込み始めた。



その時。風春の両手の周りに黒い霞みがかかり、黄色い電気がバチバチと激しく鳴り始めた。




鷹取 「ん?何の音?」




風春 「バイバイ鷹取、´´雷拳(ライジングサンダー)´´!!!!」




風春は左足を踏ん張りに踏ん張って鷹取の脇腹への攻撃を耐え、ほぼ同時に雷拳を発した左拳を鷹取の胸部にぶつけた。




バチバチバキバキバキイィイィイィッッッ!!!!



激しい雷撃音と威力ある打撃が鷹取の全身を襲う。




鷹取(心の声) 「全身を突き抜ける雷の様な痺れ」



鷹取は恐ろしくも可笑しな笑みを表す。




鷹取 「エクセレントッ!!風春君♪!!」




風春の打撃に反応するかのように、鷹取は左フックを風春の顔面を狙い繰り出す。




すると



ダンッ!!


鷹取 「…んぐ!…かはっ!!」




すぐさま鷹取に右足を一歩踏み込んだ風春は、雷拳を発する右拳を振り上げて鷹取の顎に強烈なアッパーを食らわせた。

風春の雷拳が鷹取の顎から脳天へ突き抜けると鷹取は天井を見上げ白目を向く。




鷹取(心の声) 「なに!?…明らかにさっきよりも…打撃スピードが上がった…」




ドンッ



両膝をマットに落とした鷹取。



シン 「…まだ、終わりじゃ、」



倒れる鷹取の後ろに立つ金髪坊主のシンが風春に近付こうとした。



風春(心の声) 「アイツの打撃で脇腹が死んでる。…雷拳の衝撃でまた身体がしびれてるってのに…」



右膝をマットに付いた風春は、唯一動かせる右腕をシンに向けて振り抜く。



風春 「´´斬拳(ソニックナックル)´´」




ズババアアァッ!!!



ドドンッ!



シンの太い両足がマットにズレ落ちる。鷹取とシンを繋ぐ影、シンの両足首が斬拳によって放たれた斬撃で引き裂かれた。




鷹取(心の声) 「待て……まだ終わってない……終わらせないぞ!」




風春は動かない身体を必死で動かし、ほふく前進で鷹取の影に向かう。




風春(心の声) 「…影移しを…早くしないと…身体が痺れて」




ポケットから白い紙を取り出す風春。




ガッ!


風春 「!!?」




前へ進む風春の左足を鷹取の手が強く握る。




風春 「があぁあぁあっ!!!」



物凄い握力で鷹取は風春の足を潰す。風春は苦痛の声をあげた。




紙を持った手を伸ばす。




鷹取(心の声) 「…くっ!ふざけるなよ…何でお前みたいな…子供に」




風春 「んっ!あぁあああ!!届け!!!!」




ピタン




風春の指先に挟まれた紙が鷹取とシンを繋ぐ影の間に落とされる。



白い紙は端から徐々に黒く色を染め始めた。




するとシンの姿が粉のように崩れ影の中に消えて行く。




黒く染まる紙は半分の範囲を染め終わる。




風春(心の声) 「痺れが…足の先まで来てる…ダメだ…もう…1ミリも動かせない…」




ゴト


痛みの余り意識を失った風春。




鷹取 「…んぐぐっ……」




鷹取の身体は限界を越えていた。




身体を支える筋肉は風春の雷拳によりズタズタにちぎれ、痺れが全身を襲い感覚すら感じられない程だった。




だが、鷹取は身体を震わせながらも立ち上がろうとしていた。




シャドウの力を失い。




全身の筋肉機能を失っても。




鷹取の中に棲み付く何かが鷹取の脳内に´´動け´´と信号を送っているようだった。




鷹取(心の声) 「…雷を使うシャドウ……」


鷹取の記憶のひとつがふと、頭のなかを(よぎ)る。



・・・


鷹取 「話があると。何の話でしょうか?」


橘 「鷹取の意見が聞きたくてな。実験に近い試みを考えてる。それは…ウイルスを電気信号に組み換えて人に感染させる方法。…俺のシャドウには無い力が必要なんだが」


鷹取 「なるほど、、では電気の力が無いと試しようが無いですね♪」


橘 「あぁ。…俺もまだ遭遇した事が無くてな」


・・・


マットの上に脱ぎ捨てた白いジャケットを手繰り寄せスマートフォンを取り出した鷹取。


鷹取 「…メールを、作成」


弱い声に反応した鷹取のスマートフォンが、電子音を2回鳴らすと続けて鷹取は何かを話しかけた。



スマートフォンの音声アシスト 「橘様にメールを送信しました」




鷹取(心の声) 「…んふっ」




バタ




マットにうつ伏せになったまま鷹取は意識を失った。




その直後。場内には歓声が沸き起こり揺れる程の活気で溢れた。




ドッドッドッドッドン


場内に重低音が鳴り響くと直ぐに場内マイクが声を発した。



場内マイク 「只今の試合。両者相討ちと判断した為、ノーゲームと致します。掛けられた賞金は両者に半分ずつ報酬金として与え、同意が得られれば後日再試合と致します」



ワアァァ!ワアアァ!ワアァー!!!



巻 「ノーゲーム?ハルの勝ちだろ」



岡田 「珍しいパターンだ。身体が心配だ!兄さんの元へ行こう」



歓声に包まれるなか、巻と岡田は闘技場に向かった。開けられた金網の柵から風春と鷹取を運ぶ救護スタッフに続き闘技場を後にする。



・・・


一シャドウクラブ管理室一



パチパチパチパチ



シャドウクラブ主催者の銀山は満足げに拍手を数回叩いた。


管理室では試合をモニタリングする黒いスーツ姿の集団があった。




銀山 「見応えある試合だった。…あの鷹取と同等に闘ったあの青年。…紫猿とぜひ手合わせして欲しいな」




モニタリング映像に映る黒い金網上部に流れる電子掲示板。



´´ノーゲーム。ノーゲーム。No.7とNo.115の両者に再試合の依頼と100万円の報酬金を与える´´



と掲示板に表示されていた。


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