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shadow  作者: 新垣新太
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ep4.赤い刀編・3話

SBTの山田は浮島組に聞き込みに向かう途中で鈴見がトイレに行きたいと申し出たので仕方無く近くの公園にあったトイレの前で鈴見を待っていた。


山田はタバコを吹かしながら虚空(こくう)を見つめる。


山田(心の声) 「警察の上層部は北千住の抗争をどうしても止めたいと思ってる。理由は判ってる。抗争が引き金で暴力団組織の解体を招けば、警察との長い癒着が露呈してしまう事を恐れてるからだ。まぁ一般的に考えれば警察と暴力団は水と油。だがそれはメディアが誇張しすぎた情報のせいで暴力団の全部を悪として国民に刷り込ませてる部分がある。…猿橋組は他の暴力団とは全く違う組織なのにな……チッ!」


山田 「おい鈴見!、クソでも踏ん張ってんのか?……あー、いねえなこりゃあ」


山田が待つ公園の女子トイレの中には、空気と光を取り込む為の天窓がついていた。その天窓の開口部分は人がひとり十分通れるスペースが空いていた。


山田 「はい、見つけ次第´´バニーちゃん´´一口貰うからなー」


山田は口に咥えた新しいタバコに火をつけ、ひとりで聞き込みに向かった。


・・・


小菅周辺でシャドウ探しをしていた巻と風春はこれと言った手掛かりもなく夜を迎え、近くのビジネスホテルに泊まることにした。風春は丸茂に貰った銀色のカードを使用し、巻とは別々の部屋を借りて今日は休むことにした。快適なホテルだと思っていたのも束の間。風春がホテルのベッドの中でウトウトし始めた頃。耳元を嫌な音が通り過ぎる。


プウ~~~。プウゥ~~~ン


パチッ


風春 「んぁあ!もう!また捕まえ損ねた」


左手で自分の耳元を叩いたが、嫌な音の正体である蚊を捕まえ損ねた風春は眠りを遮られイライラしていた。


暗闇の中、見えない蚊の音だけを頼りに退治をするのは風春にとってストレスでしかなかった。その為だけにわざわざ部屋の電気を点けるのも面倒に思った風春は柔らかいタオルケット生地の掛け布団を頭まで被り防御に努める。


プウ~~~ン。プウ~~~ゥ~


蚊の音は再び現れる。今度は防御していたはずのタオルケットの中から音が鳴っていた。


ガバアァ!!

風春 「んあああ!!もうどこにいんだよ!」


気が付けば風春がセットしていたエアコンの冷房タイマーは既に切れていた。首筋にうっすらと汗が滲むのを感じて余計にストレスが増す風春。


部屋の中で蚊と格闘する声を、風春の泊まる´´303´´と表記されたドアの外側で聞きながらアイスを食べる男がいた。


渡辺(わたなべ)ケニー 「へっへっへっ。イライライライラしてるしてる♪」

ニヤニヤと笑い胡座をかきながら口にアイスを放り込む。右手でクイッと眼鏡を上げると、手元にあるキャラメルポップコーンの入った袋の中に手を突っ込み、アイスの上にそれを乗せた。


渡辺 「寝付けないイライラ声を聞きながら食べるアイスとキャラメルポップコーンの組合せは最高最高♪」


坊っちゃん刈りの髪型に黒いマスクをした渡辺の影が、ホテルの廊下にある照明の灯りによってルームドアに映っている。その影の中から、ズズズッと真っ黒な蚊が一匹。また一匹と現れると、ルームドアと床の隙間から次々と入って行く。


風春 「あったまきた!飲み物買ってくる!あと蚊取り線香もなー!」


どんどんどん!


力強く床を踏み鳴らしながらルームドアまで来た風春がガチャッと開けるとすぐにドンッと何かにぶつかる音がした。


風春 「ん?」


渡辺 「へっへっへっ。じゃあイライラの回収といきますか♪」


渡辺は身体にルームドアがぶつかったのを合図に立ち上がると、渡辺の影から大きな蚊が姿を現した。


ドアを開けて出てきた風春は、目の前にいる渡辺とその後ろにいる蚊の姿をしたシャドウに出くわした瞬間。我慢の糸がプツンと切れた。


風春 「ナックル!」


ボシュウウッ!!


瞬時に風春の真横にナックルが現れた。


渡辺 「へ?な、なっ、何だお前は!?」


風春 「てめぇが犯人だな!!」


ボクシッ!!


ドッ!ズバアアァッ!!


イライラを抑えきれなかった風春は、渡辺の顔面に右フックを、ナックルは大きな蚊に´´斬拳(ソニックナックル)´´を繰り出すとすぐに渡辺の両足首の影を切り裂いた。


ド、タタン。


シャドウを倒され影を切られた渡辺は、意識を失い廊下に膝を付き横に倒れた。その側には、渡辺がさっきまで食べていたアイスとキャラメルポップコーンが転がる。


風春 「…ハァ…もう寝る」


風春は渡辺の影から影移しを完了させると直ぐに部屋へと戻った。


・・・


浮島組に潜入捜査中の三条は、マンションのベランダでタバコを吸っていた。


三条(心の声) 「まだ十色(じゅっしき)程の強い気配は感じられない。ただ、(もと)猿橋組の組員がいる赤羽組が隠れる様にして北千住に潜伏してるって情報が確かなら、シャドウが現れずとも暴力団同士の均衡が崩れ兼ねない。昼間にサイドミラー壊したあの若いのふたり。シャドウの臭いが強かったな、」


フウウゥゥーーー。


暗い夜空に三条が吐き出したタバコの煙が広がる。三条はベランダに立ててある火消しスタンドにタバコをジュッと入れると部屋の中に戻った。

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