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shadow  作者: 新垣新太
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ep3.時の天秤編・5話

風春と太田は熊鉢が放った金色の卵から出来るだけ離れる為に走っていた。


ピキ、ピキピキピキッ!、、ガッ!!


太田 「時間が切れる、風春君屈んで、」

先に走る太田が風春の方へ振り向いた瞬間。空から落ちる金色の卵が強烈な火花を噴き出した。


火花を噴き出す卵の中から、小さな黄色い鳥が火を纏いながら辺り一面を飛び回る。


ビュンブボボォボボォオオッ!


風春 「あっっつう!!」

飛び出した黄色い鳥の一羽が、走る風春の背中ギリギリを通った。

太田 「風春君こっち!」


先に地下鉄銀座線の地下階段の入り口に避難した太田が風春を呼び込む。入り口の壁に隠れ辺りの様子を伺うと、卵から出てきた10匹の鳥達が縦横無尽に火花を散らしながら飛び回っていた。


太田 「火の鳥か」


姿を隠した太田と風春に向かって熊鉢が声を上げる。


熊鉢 「隠れたって無駄だよ。どうせこの街一帯燃え尽くすんだ。邪魔しに来たんだったら、ちゃんと俺に負けてから燃やされなよ!」


飛び回る黄色い鳥の一羽が、太田と風春の隠れる階段の壁に激突した。


ゴボボボウウゥゥッ!!!


風春 「あっぶな!」

太田 「、まずいねー」

風春 「何がです?」


そこに、巻が交戦中の所を抜け出してきた蔵屋が大通りに戻ってきた。


風春 「エビちゃん。悪いけど敵の攻撃で焼き鳥になる前に俺から遠くに離れてくれ」


すると、風春の肩に乗っていたシマエナガが小さな翼を羽ばたかせて飛び立った。


風春 「俺がおとりになるんで、あの人をお願いします!」

太田 「了解、僕のシャドウの力には誓約があってね。正直余程の窮地にならない限り使わないと思う。あとは、巻君や警察の応援が来るまで何とか耐えてくれればいい」

風春 「わかりました」


そして太田は蔵屋の元へ急ぎ、風春は大通りにいる熊鉢の方へ走った。


大通りには尚も黄色い鳥達が飛び続けている。風春は火花を散らしながら弧を描いて飛ぶ鳥達の奥に立つ、半袖半ズボンの熊鉢を視界に捉えた。


熊鉢 「やられに来たか、若いおっさん」

風春 「俺は若くもねえし、おっさんでもねえ」

熊鉢 「ははっ!何その答え、お前が一番弱そうだよな。さっき見たおっさん達の方がよっぽど強そうだったぞ」

風春 「バカか、お前は俺ひとりで十分って事だよ」

熊鉢 「へーー。そう、じゃあ早く殺してみなよ」

風春 「ったく生意気なんだよっ!」


と言うと風春は体勢を低くすると熊鉢に向かって走り出した。その瞬間、大通りを飛び回る黄色い鳥達が風春に向かって次々と飛び掛かってきた。


ズビュンッ、ズビュンズビュンッッ!!!


風春は右に左に走りながら飛んで来る鳥達を避けて行く。


風春 「くっ!…真横を通り過ぎただけで火傷しそうな熱さじゃねえかよ!」


熊鉢 「´´青羽舞(ブルーウェーブ)´´」


その時、熊鉢がいつの間にか手にしていた青い羽が施された風車(かざぐるま)を風春に向けて息を吹き掛けた。


フウウーーー!


クルクルクルクルー


息が掛かった風車がクルクルと回り始めると、音楽記号のクレッシェンドの様に風が広がりながら風春に向かって行く。その風と共に風車から剥がれた青い羽がふわふわと舞う。


ビュンンッ!

黄色い鳥が一匹、風春の顔面に飛んで来ると左の裏拳で思い切り弾き返した。


風春 「おらっ!」


ブウウゥワゥアアッ!


風春 「ぅ熱っっ!!」


鳥を弾き返した直後、風車から発せられた熱波が風春の真正面から吹き掛かった。風春は両腕をクロスして身を守るが、全身の産毛が一瞬にして燃やされる程の熱さを感じた。


風春 「んの野郎!ナックル!」


ブシュウゥッ!

風春の後ろにナックルが現れる。


右腕を後ろに引いて思い切り拳を握った。

風春 「´´斬拳(ソニックナックル)´´!!」


ブブンッッ!!


風春が低い体勢から放った斬拳は、黄色い三日月状の閃光となって空気を切り裂き熊鉢に向かって速度を上げる。


熊鉢 「ファイア」


声を掛けた熊鉢の前にジュラルミン・ファイアが現れる。


熊鉢 「´´炎壁(カーテン)´´」


するとファイアが炎に姿を変えて熊鉢の前にカーテンを閉めるようにして炎の壁を作る。


ブバアアァンンッ!


斬拳は炎の壁にぶつかると散り散りに消えてしまった。風春と熊鉢の間の距離は5メートルまで縮まった。


風春(心の声) 「くそっ!斬拳が効かない。なんとかここまで近付けても、あの熱波でアイツに近付いて直接打撃を食らわすのは厳しいか」


熊鉢 「なんだー。手も足も出ないか」


銀座の大通りは、熊鉢のシャドウの攻撃で建物の窓ガラスや街灯は所々割れ落ち、道路にはひび割れやコンクリートが一部変形する程に被害が広がっていた。辺りには焼け焦げた臭いとムッとした暑い空気が漂い、息をするのも辛いくらいの状態になっていた。


その中、大通りに戻ってきた蔵屋は、制作途中のまま歩道に置き去りだった大きな紙まで走って戻ると、筆を墨に付けて紙に走らせた。


蔵屋 「俺は、何があっても描き続ける。この墨には、俺の魂が入ってるんだ」


蔵屋の元へ駆け寄った太田は、蔵屋の描く墨絵を目の当たりにする。紙は火花によって所々に穴が空き、黒く焼けている場所もあった。だが、その躍動的な筆で描かれた世界観に引き込まれるように見入ってしまった。


太田 「蔵屋さん…なぜそこまでして」


太田の呟きに蔵屋は耳を貸さない。ただひたすらに紙に向かって全集中していた。


風春は左手を地面に付き、熊鉢を睨み付けていた。肺に入ってくる空気は生ぬるい煙りのようだった。火の粉と黄色い鳥達が舞い、熊鉢は揺らめく炎を纏いながら風春を見つめる。


風春 「お前が何で歌舞伎座に現れたのか、理由なんか知らねえけど」

熊鉢 「あ?何か言った?」

風春 「歌舞伎座がどんだけ凄い場所なのかは俺でも簡単に調べられる。日本の歴史ある伝統文化を守る人達が、銀座界隈(かいわい)がこんなに大火事になったのを知って、どんな思いになってると思う?」

熊鉢 「知らねえよ」

風春 「お前が火を使って苦しめた人達は、ただお前の事を(あわ)れに思うだけだぞ。ちっぽけな怒りにもならない」

熊鉢 「ふざけんなよ…」


熊鉢は風春の言葉を引き金に、頭の中に過去の記憶がフラッシュバックする。


・・・


一「なぁ、お前んち燃えちゃったんだろ?不運だな」

と言う男子の口元には微かに笑みが浮かんでいた。

一「凄い野間(のま)君!勉強も出来て、運動神経良くて、歌舞伎も頑張ってるんでしょ!?かっこいぃ」

女の子達は、教室の席に座るひとりの男子の回りに集まり話している。

一「野間、昨日の夜燃やした家、あそこ熊鉢の家らしいぞ」

と男子トイレから聞こえた声を熊鉢は廊下で耳にした。


・・・


ギィギギ、ギリリィ


口の中で歯軋(はぎし)りをする熊鉢。


熊鉢 「何が哀れだ。アイツがいなければ俺の人生は狂わなかった」

風春 「人のせいにするなんてまだまだ子供だなー」

熊鉢 「弱いくせにぶつくさうるさいなお前。わかった、俺を怒らせたことを後悔させてやるよ」

風春 「おぉそうか!、こんなクソ蒸し暑い空気に負けない位、俺は今パッションがギラギラと溢れんとばかりでよ。誰にも負ける気がしねえぞ!」

熊鉢 「ほざけおっさん」


風春 「オォオォオオオオオオオオ!!!!!」


全身に力を入れて雄叫びを上げた風春は、藍色の布で巻かれた両拳をコンクリートの地面に連続で殴り付ける。


ガッガッガキッガキッガバキガバキッ!!!!


硬いコンクリートが風春の拳で割れてゆく。ふたつの(ひとみ)から鋭い眼光で睨み付ける風春。


熊鉢 「全力で来いよ。ファイア、´´孔雀炎(ピーカック)´´」


熊鉢の一声(ひとこえ)で、炎に姿を変えていたファイアが熊鉢を炎で包み込むと、少し炎が縮まり大きな火の粉を噴き出した。


バァアアアフアアァァァンンンッ!!!!!


すると、熊鉢のいた場所には黄色と赤色に揺らめく羽の孔雀が姿を現した。同時にその孔雀が火の粉を散らしながら扇状に尾っぽを広げると、風春に向かって熱波が襲い風圧で後ろに5メートル飛ばされる。


風春 「くあぁっ!!」


ズザザアァ!


片膝を付き何とか体勢を整えた風春。その視線の先には、体長2メートルはあると思える大きな孔雀が火の粉を散らし、広げた扇状の尾っぽの模様一枚一枚には青や赤の炎が揺らめき、堂々たる佇まいで風春を睨み付けていた。


風春 「でっけぇ火の鳥か」


黄色と赤色で燃え盛る孔雀の中には、微かに熊鉢の姿が透けて見える。


太田が絵を描き続ける蔵屋を守るため、作品の前で立って戦況を見ていた。


太田 「風春君、もう少しだ。もう少しで警察とSBTが来る。なんとか、」

蔵屋は必死になって紙に墨を流し描いて行く。その作品の中には、白い満月が浮かび、空には大鷲が飛び地上には白虎(びゃっこ)が咆哮をあげていた。


風春 「お前の過去に忘れられない怒りがあったとしても、それを理由に関係の無い人達を巻き込んでまで街を燃やしていい理由なんて無い。やられてもやり返すな、、俺だって…」


風春は頭の中に一瞬だけ、シャドウに腕を切られた恵里の姿を思い出す。

その時蔵屋の筆が止まり、手から筆が離れた。


蔵屋 「こんなところで終れっかよ」

小さく口の中で言葉を発した蔵屋。そして視線を作品から目の前の戦場に移すと、再び口を開いた。


風春・蔵屋 「こんなところで終れっかよ!!!!」


その時蔵屋が描いた墨絵がズズズッと動き出す。大鷲と白虎は白い紙を抜け出してコンクリートの地面へと移った。すると墨絵は黒い影の様に地面の上を動き風春の方へと進んでいった。


ズズッ、ズズズッ、ズザバァ


太田 「!?、、あれは、」


風春が片膝を地面から離しゆっくりと立ち上がると、両拳に巻かれた藍色の布に、地面から黒い影の様なモノが沸き上がり染み込んで行く。


蔵屋 「あれ、俺の絵が」

その声に反応した太田は振り返り地面にある大きな紙を見た。

太田 「もしかすると、蔵屋さんの墨絵がシャドウとなって風春君の両手に乗り移ったのかな。…だとしたら風春君、君には正義(ジャスティス)の力が備わっていると言うことか?」


風春 「おぉ、何かわからねえけど、微かに動物の香りを感じる。力が()いてくるぞ」


すると、風春は地面に向かって握った右手を振り下ろした。


ズガンッ!!


ズルルッ!ピキィイイイイッ!!!


地面を殴った風春の右拳から黒い影が地面を這うように流れ出し、その動きはウネウネと地面を進みながら孔雀の方へ向かう。そして黒い影は地面から飛び出すと大鷲へと姿を変えて大きな鳴き声を上げた。


風春 「行くぞ!!ナックル!!!」


ブシュウゥッ!

走り出す風春の後ろにナックルが現れる。


地面から現れた大鷲は翼を大きく広げ勢い良く孔雀に突き進む。


熊鉢 「うるせえハエだな」


バシュバシュバババババシュッ!!!!


すると、孔雀の尾っぽの羽が一枚ずつ炎を纏いながら切り離されると羽ばたく大鷲に向かって突き刺さり、大鷲を燃え上がらせた。


ボオフウゥゥウッ!!


大鷲は孔雀の攻撃を受けると墨液となって地面に散った。


風春 「まだまだこれからこれからーー!!!」

大鷲の後ろから全力で走っていた風春が、藍色と黒色が混ざった両拳に力を込めて孔雀に近付いてきた。


バシュバシュバババババシュッ!!!!

バシュバシュバババババシュッ!!!!


すると、孔雀の尾っぽから更に追撃の羽達が飛びだし、走ってくる風春に向かって猛スピードで進む。


熊鉢 「ハエはハエらしく散れ」


風春 「くらえよ俺のパッションをよー!!!」


孔雀から放たれた燃え盛る羽達に向かって風春は地面を蹴りあげて飛び、拳を引いた。


ビシュビシュビシュビシュシュッ!!!!


風春の拳が飛んで来る羽達に向かって連打された。


風春 「ギラギラギラギラギラギラギラギラギラギラーーーーッッッッ!!!!」


風春の拳に纏う蔵屋のシャドウが炎の熱さを防ぎ、拳に当たった羽が次々と火の粉を上げて散ってゆく。


風春 「俺のパッションのギラギラは止まんねえぞ!ギラギラギラギラギラギラギラギラギラギラーーーーッッッッ!!!!」


バチバチバチバチバチバチバシュウウゥゥンッ!!!!


飛んで来た全ての羽を拳で打ち消した風春は、視界の先にいる孔雀が大きく口を開いたのを見た。


ボッボッボッボボボボボッ!!


熊鉢 「灰になれ´´炎玉(スピリッツ)´´」


孔雀が開いた口に赤黒く渦巻く炎の玉は、野球ボールサイズから徐々に大きくなって行き、1.5メートルの炎の玉に変わった。


風春 「やってやるよ、」

蔵屋 「鷲が出た。…虎が出てない、、」

太田 「?虎?、、風春君!!!、、虎だ!!!」

蔵屋の呟きに気付いた太田は大声で風春に届ける。


風春 「、?、この黒い色があの絵描きの人の力って事なら、次は虎だってよー!!!!」


ボォボォボブウゥウゥウウウッ!!!!


その時、孔雀の口から大きな炎の玉が風春に向けて放たれた。風春は残りの力を振り絞り再び地面を蹴ると右腕を大きく後ろに引き下げてから全力の右ストレートを繰り出した。


風春 「ン出ろよっ!虎ーーーー!!!!!」


ズズズッ、ガァウウゥルルッ


すると、風春の拳に巻かれた布から黒い筆で描かれた白虎が顔を覗かせた。それを確認した風春は大きな炎の玉に向けて右拳を突き出した。


シュビュンッッ!!!


風春の突き出した拳の中から影が流れ出すと、影が白虎に形を変えて炎の玉に鋭い牙と爪を出して掴み掛かった。


ガアアオォオオウウウゥッッッ!!!!


炎の玉に牙を食い込ませて引きちぎると、その間に両手の爪を引っ掻けて真っ二つに引き裂いた。


ガブチッ!、ブチブチブチブチッッッ!!!!


炎の玉が引き裂かれ火の勢いが弱まろうとする。


熊鉢 「なんだあのハエ!!、ファイア、火力が足りないぞ!、!?」


ボォウゥワァアアアッッ!!!


すると、白虎が引き裂いた炎の玉から風春が飛んで現れた。そして孔雀の中にいる熊鉢に向かって突き進んできた。


ビシュビシュビシュビシュシュッ!


熊鉢 「くそっ!消えろっ!!、!?」


風春 「´´斬拳(ソニックナックル)´´」


ズバッ、ズバァアア!!!


風春は左アッパーで孔雀を切り裂くと、中に入り込み熊鉢の両足の影を右フックで切り裂いた。風春は勢い良く飛び込んだあまり、右フックを振り切ったまま地面に身体ごと滑り込み仰向けに倒れた。


その時、蔵屋と太田の側を沢山のカラスが横切った。


バサバサ、バサバサバサバサッ!!!


太田 「!?」


そして夜の大通り上を旋回するカラス達は、たちまちに姿を黒い折り畳み傘に変えると次々と開き始める。


バッバッ、バッバッバッバッババッ!!!


太田 「これは、」


(しずく)傘壁(さんへき)´´(からす)´´」


大通りに現れたのは、赤紫色の髪の前髪を整える雫だった。白虎が引き裂いた炎の玉が大通り沿いにある建物等にぶつからないように、雫のシャドウの黒い傘達が大きな壁となって防ぐ。逃げ場をなくした炎は、ぽっかりと空いた上空に向かって大きな火柱を上げていた。


熊鉢が意識を失いコンクリートの地面に倒れた瞬間。熊鉢を包んでいた孔雀が大きな火花を散らして風春の上に大きな火の雨を降らせた。


太田 「まずいね、蔵屋さん絶対ここから動かないで下さい!」

と言うと太田は急いで風春の元へ走った。


風春 「ぅ…ぅう…ぁあ」


バッバッバッバッババッ!


ダ、ダ、ダダダダダダダダ!


すると風春に火の雨が落ちようとした時。10本の黒い傘が開き、風春の上空に綺麗な正方形の隊列を作ると降り注ぐ火の雨を防いだ。その傘の下に歩いて近付いてきた雫は、仰向けに倒れた風春を見下ろす。


雫 「なってないなー。風春。まぁ、私も格好悪い登場になったんだがな」


風春の耳には、微かに聞き覚えのある声が届いていたのはわかっていたが、それよりも、熊鉢と孔雀に攻撃をする寸前に孔雀から繰り出された羽が身体の胸部を中心に突き刺さっており反応出来る状況ではなかった。


タッタッタッタッタッ


雫 「ごめん、太田っち遅れた」

風春の元に到着した太田に雫が声をかける。火の雨から助かった風春を確認した太田は、先に熊鉢の影に正方形の白い紙を落とし影移しを済ませた。


太田 「いやいや、僕が何の役にも立てないもんでね。近くにいるのが雫ちゃんで助かったよ。でも、警察達が遅いような」

雫 「アイツ等には私が行くから来るなと言っておいた。数が増えても大して戦力にならないからな」

太田 「なるほどー、それで」

雫 「思っていたより風春が早く敵を倒していたんだな」

太田 「うん。ただ傷が大分深そうだから早く救急車で運ばないと」

雫 「少しでも話が出来ればと思ったんだが」


すると、ふたりの会話を遮るように救急車のサイレンが大通りに鳴り響いた。


太田 「申し訳ないね」

雫 「話があるって言ってたね太田っち」

太田 「そう、別件でこの間、東京駅に捜査に行った時に偶然にも盾仲さんに会ったんだ」

雫 「東京駅で?」

太田 「うん。全然質問に答えてくれなくてね。でも関西の方で何やら事件があったから行くとか言っていたよ」

雫 「盾仲さんが行っても応援にならないんじゃ…」

太田 「どうだろうね」


風春と熊鉢が横たわる側でふたりが話していると、バタバタと救急車から降りてきた救急隊員達が駆け寄ってきた。


太田 「じゃあ僕は風春君を病院に連れていくから。また」

雫 「わかった。こっちはこのガキをSBTのおっさんに渡してくる。じゃあ」


ふたりは別れると、そこにちょうど戦いから戻ってきた巻が、雫をギラギラした目付きで見つめていた。


巻 「お前、強ぇ奴だな。俺と勝負しろ!」

雫 「誰だお前さん」

巻 「俺は巻。救急車に運ばれたハルの先輩だ」

雫 「風春の先輩、そうか、じゃあ」


と言うと、雫は持っていた銀傘(ぎんさん)を素早く動かし、その先端を巻のみぞおちにめり込ませた。


巻 「、!?、くっ!いつの間にっ」

雫 「私のスピードに反応出来るだけの神経は通っているのか。でも、不用意に私の傘を触らないことだ。充電不足ではあるが、この銀傘には帯電能力がある。そんなに強く握っていたら、あっという間に、」


バタンッ!


巻 「やっぱり、、お前、、強ぇ奴…」


雫が素早く突き出した銀傘に反応し、巻は左手で傘を強く握ったのだが、感電を起こして気絶してしまった。


雫 「近頃の若いもんは、生意気な奴が多くて困る。…調教の楽しみが増えるのは問題ないが、、また会おう、巻」


と言葉を吐き捨てた雫は、近くで倒れている熊鉢の後ろ首を掴んで大通りを引きずりながら去っていった。


タッタッタッタッタッ


蔵屋 「だ、大丈夫です?」


気絶した巻に蔵屋が駆け付けると、大通りに入ってきた2台目の救急車にふたりは乗り込み焦げ臭い銀座の街を後にした。

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