宇☆宙☆世☆紀☆REIWA
登場人物
艦長
山本
山本「航海日誌。宇宙世紀アールイーアイダブリューエー4年3月9日。みずがめ座デルタ南流星群空域にて遭遇せし敵艦隊との激しい戦闘により、我、乗艦せし宇宙巡洋艦、損傷甚だしく、二光年先の友軍と合流すべく単独航行中なり……。」
山本「お呼びですか、艦長。」
艦長「やあ、待っていたよ山本副艦長。実は、極秘に手に入れた情報によると、我が艦に敵国のスパイが潜入しているようなのだ。」
山本「何ですと!?」
艦長「そう、今までの我が艦の行動は全て敵に筒抜けだったのだよ。」
山本「くそう、それで行く先々で敵に先手を取られ……迂闊でした!!しかし、一体、誰が……はっ、さては、砲撃手の鈴木二等航海士だな!こないだの飲み会でウチ給料も安いし労働時間も長いし超ブラックで時給に換算したらコンビニでバイトするのと変わらないってぼやいていたからな。」
艦長「違う。」
山本「違いましたか。うーむ、では誰が?はっ、それなら田中一等機関手か?奴は常々親の介護と子供の教育費と老後の蓄えで今の給料では不安だと……」
艦長「違う。あとね、山本君ね、今、宇宙世紀だから。ここ、宇宙巡洋艦だから。さっきから親の介護とか子供の塾代とか、話題が全然宇宙世紀っぽくないから。もっと設定活かして。」
山本「いやしかし、老後問題と教育問題はいつの世も変わらぬ普遍的なテーマで……。」
艦長「いいから。」
山本「は、失礼致しました。では、誰が?あっ、わかった、これで間違いない、香取操舵手だ、そうでしょう!?あいつはこの頃、やれ、これくらいの仕事リモートでいけるとか、他所はとっくに光通信なのにウチの通信環境最悪とか、SNSで拾ってきた話をさも、リア友から聞いてきた話のように……」
艦長「全然違う。違うし、まだ宇宙世紀活かしきれてない。」
山本「いや、光通信とか、ちょっと近づいたかなって。」
艦長「全然ダメ。」
山本「はっ、失礼致しました。では、誰が…うーむ、はっ、もしや、紅一点のアンドロイド・キャサリン通信兵だな!彼女は特に思いあたる事はないが、スパイと言えば女の武器を最大限に利用する美女と相場が決まっている!」
艦長「言葉を慎みたまえ、山本君、女の武器とか、今そういうの色々うるさいから。」
山本「はっ、申し訳ありません、艦長。」
艦長「それから、アンドロイドが無理やりっぽい。努力は認めるが。」
山本「はっ、申し訳ありません、艦長。
しかし、そうなると私には皆目検討がつきません。艦長はもしや、そのスパイの目星はついているのでありますか。」
艦長「実は既についている。」
山本「さすが艦長。して、その者は?」
艦長「今、私の目の前に立っている。」
山本「目の前?……はっ、ま、まさか、艦長は私をお疑いなのですか!? どこにそんな証拠が!?」
艦長「その航海日誌を見せたまえ。」
山本「うっ。」
艦長「さあ。」
山本「ふふ、気づかれたのならば仕方がない。しかし、もう遅い!この巡洋艦の内部図面はこのマイクロフィルムに全て入っているし、今後の作戦も既に打電済みだ。」
艦長「山本君!」
山本「何だ!?」
艦長「宇宙世紀は諦めたから、せめて令和の言葉で話したまえ。マイクロフィルムとか打電とか言われても、若い人は何のことやらさっぱりだぞ。」
山本「ほざけ、くそっ、これが見えるか!?」
(山本、懐から何か出す。)
艦長「むっ、手榴弾を持っていたのか!」
山本「ははは、ばかめ!今は宇宙世紀だぞ!
これは超電動反重力量子爆弾だ!」
艦長「何いっ!
超電動反重力量子爆弾!?
いや、むしろ昭和感満載だわ」
【終わり】
読んでいただきありがとうございました。
書いててとても楽しかったです。
異世界年の差恋愛ものも連載していますので、読んでいただけたら嬉しいです。






