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ダンジョンマスターに生まれましたが人間やってます  作者: 猫の靴下
二章 成人の儀
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6.肉・にく・お肉パーティ

僕がメルクル街に戻ってくると、レッドもちょうどギルドに顔をだしていた。


「お?ショウおかえり。仕事だったのか」

「うん。新しい村の感想を言う仕事だった」

「よくわからない仕事だな。まあいいか。デイジーたちとチーム組んで狩りに行こうって話になったんだ。ショウも行こうぜ」

「ひぃ」


初めての狩りの時、山ネズミの血を見て僕は心底向いてないと思っていた。

ちくしょう。笑ってもいいぞ。怖いんだよ。


「そんなにビビるなって。慣れだよ慣れ。狩りの時は隠れててもいいぞ。ショウがいると荷物持ちで助かるんだよ」

「そお?荷物だけなら・・まあいいか」


力だけは結構あると気が付いたので、血は勘弁だけど荷物だけならいいか。

なんて思った僕が甘かった。

荷物って血だらけの魔獣じゃないか!ぎゃあああああ!


そう気が付くのはもう少し先のことである。





翌日。


朝早く貼られたギルドの掲示板から人をかき分けることなく、素早く依頼票をむしりとってくる赤髪のケイトさん。

『俊足』『気配察知』などなど忍者に必要そうなスキルと『弓術』をもっているうらやましすぎる。


その依頼をみて「チームの役割の練習だから平原の狩りはちょうどいいわね」などどいってる銀髪のデイジーさん。

『氷魔法』『治癒』『槍術』その他いろいろ持っていて万能型なのかな。


レッドが受付に提出して、了承をもらって出発だ。

前衛は近接戦しかできないレッドと僕、後衛はケイトとデイジー。


え?僕前衛?

「おれたちは今のところこれでしか生きる道がないんだ。腹くくれ!」

僕だってわかってるんだ。でも、でも・・こわいんだよぅ。




タマちゃんのいた渓谷からずっと川下にある街の隣の平原が今日の狩場だ。

僕が薬草をはじめて取りに来たのもこのへんだった。冬が近かったせいで何も生えてなかったんだけどね。


レッドが獲物を探しながらどんどん進んでいく。

彼には槍の才能がなかったので僕のダガーを貸してあった。

軽い武器なのですぐ使い方をおぼえてしまったらしい。

最初に見つけたのは『気配察知』のあるケイトだ。

角があるウサギで、ジャンプして僕に向かって来たので無意識に盾で叩いたらコロリと逝ってしまった。


3人が顔を合わせて頷いた。

え?

もしや僕が一番弱いから狙われたか?

でも怖くて皆のように動けない。突っ立っているだけ。



次は魔獣になりかけの猪がレッドを見つけて襲って来た。

「いくぞショウ」

攻撃をひょいひょい避けながら僕のほうに向かって来た。いやなんで?こっちくんな!!


思わず土魔法で地面に穴をあけたら猪は見事に転んだ。

そこに矢と氷が突き刺さる。ひぃぃ。やめて。血が血が・・・。

ピクピクしてる猪にレッドがダガーで仕留める。うわああああああ。

ひっくり返る僕。

ち、ちびるかと思った。



「やったじゃん!やっぱりショウは強いんだよ」飛び上がって跳ねまくるレッド。ウサギかよ。

「ショウさすがね!ものすごく楽なチームだわ」デイジーはニコニコしてる。

じゃんけんのチョキ、Vサインを出すケイト。

いややめて。もう僕の心はボロボロよ。

何度も獲物が来るたび「ぎゃあああ」と叫びつつ手を無茶苦茶に振る狩りを続ける。


涙目になりながら僕だけ狩りっぽい何かをして、結局帰りは大きな猪2匹を担ぐ僕。

小さい獲物はレッドが袋にいれて持っている。

「肉♪肉♪」いいながら僕以外は上機嫌だ。





街に入ってすぐにある解体所に持ち込んで交換カードをもらう。

僕は魂が抜けたようにへたりこむ。


しばらくぼーっとしてる間に皆がさっさと報酬を受け取ったりしてくれたみたいだ。

役立たずですまない。


レッドが食事に誘いにきた。

悪いけど食べる気なんて起きるわけが・・・・・あれ?


なんかものすごい量の肉がある。

鉄板の上でジュウジュウと美味しそうな音がしている。


「この肉どうしたの?」僕が口開けてびっくりしていたら、

「いいから食え」と熱々の肉を突っ込まれて、口の中いっぱいに幸せが広がった。

「もしかしてあの猪?」

「それ以外なにがあるんだよ。ショウのおかげで懐もあたたかいぜ」


知らなかった。そうか猪って美味しかったんだ。


「ショウのおかげ。魔法で動いてる獲物狙うの難しいのよ。足止めしてくれるから集中できるの。

 ケイトの弓も同じだとおもうわ」デイジーの言葉にコクリとうなずくケイト。


「正直、俺たち3人じゃ苦しませるだけで仕留められないと思ったんだ。ショウの馬鹿力がないとな」

「なんだよ。荷物持ちでいいって言ったくせに。馬鹿力で悪かったなっ」

「悪かったよ。すまん。怖がってばかりじゃ生きていけないと思ったんだ」

「そうね。ショウに魔獣を集中させたのは悪かったわ。ごめんなさい。私がもうちょっと強ければ」

「ワタシ、弱かった。ゴメンナサイ。次がんばる」

「あ、いや実は怖くて動けなかったんだ。ごめんなさい」


ごめんなさい大会になってしまったが、レッドがすぐに大量の肉を置いて

「まぁまぁ、ほら食え食え」と、どんどん肉を僕の使ってる取り皿に乗せてくる。


くやしい。だったら最初から言ってくれよ。もぐもぐ。でもうまい。

まあ、最初言われてたら断ってた。もぐもぐ。うまいな。

それから自分からバクバク食べた。やけ食いだ。





ものすごく都合がいいようだけど、それから僕は血が少しだけ大丈夫になった。

少なくとも猪は平気だ。


レッドにダガーを貸す代わりに、手にはめるタイプのナックルを買ってもらう。

いいのかな?

小さな盾を持った殴り専門、モンク僧じゃないぞ。

なんか不格好だ。


あの王国騎士のように大きな剣のほうがいいんだけどな。





それから僕たち4人は平原をメインにお互いの動きを確認しあった。

僕はやっぱり皆のようにサクサク動けないのだが、逆に「そっちに追い込むから動くな」と言われてしまう。

これはラノベなんかでいう主人公は役に立たないが周りがすごいってやつだろうか。

一番いらないのが主人公だよな。


主人公じゃないからどうでもいいか。

開き直って追い込まれてきた魔獣を一撃で叩き倒すショウであった。




「ショウってすげーよな。大人だって一撃で倒せる人そうそういないぞ。むかつくから言わないけどな」

「このチームショウ抜きでは考えられないわよね。私ももっと精度をあげてがんばらないとだわ」

「弓以外・・・・あと何ができるんだろう。置いて行かれそう」


ショウだけでなく悩んで頑張る3人であった。


そしてコアのタマちゃんも、魔力を魂に合わせて最適化する作業に追われていた。



お読みいただき、ありがとうございます。


少しでも続きが気になる、と思っていただけたら、

『ブックマーク』と【☆】何卒応援よろしくお願いします。


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