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47.帰還

無事にフローリア国エスピ街のある港へ寄港する。

今回は大型海獣に会わなかったな。

ケイトがものすごく残念な顔してた。


いや、あいつらすごく怖いからね?

船ごと上下に揺さぶられて、気持ち悪いんだからね?

体験してみないとわからないんだろうけど。



僕が研究所にもどってみたらケサパサ先輩方もいた。

いくつか装置が直ったので僕の帰りを待っていたそうだ。


二人にフレッシュな木苺ジュースとお土産を渡す。

トマト師匠には海流のレポートとお茶のお土産だ。

ニコニコして子供みたいな目でレポートを読んでいる。

本当に研究が好きなんだね。




異国デルッセンへ短期間に行けることがわかったので、国も商人も盛り上がってるみたいだ。

そこは政治的なものが関わるだろうから僕にはわからない。

でもその情報で師匠は国とパトロン商人からお金を大量に引き出したらしい。

さすが師匠だ。


小さなアイデア造船所だったドワンさんも大忙し。作業場も広くなっていた。

もっと簡単に操縦できるよう試作品もできている。

あと荷物を運べる中型船も試作中だが、そちらはかなり難航している。


僕はダンジョン化して簡単に操縦したけど、実際はかなり難しかったんだとか。

ケサパサ先輩方がヘタってわけじゃなかったんだ。

それに今の船は陸に沿って移動するので大型海獣に激突される心配もない。




大量生産するには問題もあった。

あのクラゲの頭部分。

ドラゴンの透明な抜け殻を使っているが、透明な石では重量や強度が足りないんだとか。

しょせん石だよね。


強いガラスみたいなものはないだろうか?

眩しくないよう、純度の高い黒曜石なんか一部だけならよさそうだけどね。

ドラゴン焔さんに早速問い合わせてみたら、羽が生えるときに一回脱皮するだけなんだって。

そういえばリュウって始めは羽がないからトカゲみたいだったっけ。


有効利用してくれるならとドラゴン仲間に声をかけてくれた。

捨てるに捨てられず記念にとってあったいくつかの抜け殻をいただいた。

お礼は甘いものが希望。珍しいお菓子好きなんだそうで、ここでも木苺は大活躍だ。


大量生産するなら別の素材を見つけてくださいと丸投げしてきた。

そういうのは専門家に任せたほうがいい。



改良型『クラゲ改』を操縦してみる。今までのより少しだけ大きい。

ものすごい楽だ。これなら1人でも操縦できる。

帆も自動で出し入れ可能。ただし、魔石をすごい使う。

魔石を探すために大量の魔石を使うってなんか違う気がするんだが。


1人で操縦できても、いつもは2人で操縦するのを想定してるんだって。

それなら魔石はそんなに使わないかな。人件費はノーカウント。



船を作るために使う、魔法で強化した石を運ぶ。

日本じゃ船に石使うなんて考えられないだろう。

あとついでにメインの木材。

ペンダントの中に入れるだけだけど、運搬料と材料費をもらえることになった。


日本の自然界でこんな大きく平らな石なんて存在してなかったのかも。

まあいいか。ここはファンタジー世界だ。




ケサパサ先輩方に改良型『クラゲ改』を操縦してもらう。

おおーいい感じだ。

僕がいなくなっても平気だと思っていたら、海底探査する人がいなかった。


泳げる人間を育成せねば。

そう思っていたら海底って意外と水圧が高かったらしい。

気がつかなかったよ。僕の体って人間っぽいけど人間じゃないのかも。

あ、ダンジョンマスターだった。

やはり潜水服も作らないとダメか。

うーん。これも専門家に丸投げしよう。




忙しく働いていたらデイジーがひとりでやってきた。


「お?卒業どうしたの?」

「卒業決まったわよ。あとは卒業式ね」

「おめでとう!他の二人も大丈夫だったかな?」

「無事に卒業は出来そうなんだけど、その後がね」


「何かあったっけ?」

「私は聖女様の護衛蹴ったのが問題だし、レッドはスキルを国のために使いますって書類出しちゃったからね」


そういえば、未来そうなるってピンク髪が言ってたような。


「じゃあ問題なしはケイトだけ?」

「それがあの子精霊と契約したらしいわ」

「精霊?」

「珍しいスキルなので卒業しても研究機関に入れとしつこいみたい」

「珍獣扱いか。僕も一時期そういう目で見られてたからなぁ」


そうなんだ。

僕も一時期、研究対象だったのかジロジロ見られていたけど、

どっから見てもおつむが弱い普通の人間だったので興味がなくなったようだ。


「今日はその話じゃなくて、以前船で話した約束おぼえてる?」

「なんだっけ?」

「タマさんの部屋で二人きりで話したいことがあるの」

「僕も聞いていいの?」

「今回はたぶん関係ないから遠慮してほしいかも」

「わかった」


気にはなるが、もし危険なことならタマちゃんが教えてくれるだろう。

近くの『クラゲ号』まで移動して、コアルームへ招待。

いつ戻ってくるかわからないので、昼寝する。

さすがに疲れた。




昼寝から覚めてもまだ戻ってきてないようだ。

僕はレポートを考えたり、船の案をまとめたりしていた。


「ただいま~」いきなりデイジーが現れた。びっくりした。

「お、おかえり。話はついた?」

「ええ、まあなんとか」

「そう、よかった」


「それでね、タマさんと約束したわ」

「え?」

「私が生きてるうちはショウの騎士となって守るって」

「はぁぁぁぁ???」




メルクル街は女神が最初に作った街。

王国が出来てからも大切にされていたようで、領主は置かずに王家が直接采配をふるっていたらしい。

実際は王家が派遣する文官たち。


その文官たちとはデイジーの一族。

ただ、祖父は途中で別の人に任せたらしい。

病気になり、静かな場所に療養するため引っ越したのだと。

どうもそのときの引継ぎを急いでいたせいなのか、ダンジョンに関する正式な文章が残っていない。

そしてそのまま亡くなってしまった。


たまたま王家でも「女神さまの作った街の傍にダンジョンがあるなんて」と問題になっていたそうだ。

そのことが書いてあった祖父の日記を持ってきていた。

デイジーは守り切れなかったことをタマちゃんに謝罪。

代わりにショウを守るって話になったんだとか。



「いやなんでそんな約束を」

「ショウの正直な誠意を受け取ったからよ。

 我が家の謝罪の気持ちを表したかったし、タマさんの希望でもあるのよ」

「えー。適当でいいよ」

「簡易な方法にするわ。ほらそこに立ちなさい」

立場が逆な気もするけどまあいいか。


ショウがデイジーの剣を持って立ちそのまえに跪くデイジー。

「裏切ることなく、欺くことなく、己の品位を高め、堂々と振る舞い

私の全ての信念と名誉をかけて、ショウ様を守ることを誓います」

宣誓後、ショウは剣にキスをする。

タマちゃんは立会人だ。

これで魔法的な拘束が発生する。


「まずショウ様に対する言葉を改めるわ」

「いややめて。調子狂う」

「失礼にならない?」

「デイジーはそれでいいんだよ。今までも僕は助けてもらってるよ」

「うーん。ショウがそのほうがいいのならしょうがないか」


傷ついてるのはタマちゃんだし、彼女が納得できるのならいいのかな。

僕的に、守ってもらうより逆のほうがカッコイイなと思ってみたり。



僕は自慢のコーヒーをデイジーに入れてあげた。


「何この臭い」

「ちょっと臭いけど美味しいんだぞ」


疑いの目を向けつつ一口。


「うん?割と美味しいのかも?」

「なんで疑問形なんだ」

「臭いでよくわからないのよ」

「ひどいなー。トマト師匠自慢のコーヒーなのに」


夕日が僕たちの船を照らしていく。

海鳥たちはそろそろねぐらに帰る時間だ。


「私にも弟がいてね。病気で亡くなってしまったの。

 私にもっと力があればって悔やんで、悔やんで。

 もう絶対私の目の前で人が死ぬの嫌だなって。

 それで賢者になりたかったの。

 賢者になれば魔法同士の合成もできるから、どんな病も治せるかなって」


ああ、それで僕に何度も聞いてきてたのか。

どんな病にも効く薬、薬なのか魔法なのかすらわからない。

さらに、この国に賢者はおそらくいない。


「あのときはなにも言えなくてごめん」

「いいのよ。私もショウの事情を知らなかったんだもの。お互い様ね」

「世界を旅するのは賢者に会うため?」

「そう。万能エリクサーの作り方を知ってるのはおそらく賢者様だけ」

「万能エリクサーっていう名前なのか」


冷えてきたので温まるカモミールティーを入れてくる。


「だからこれからよろしく!」

「わかった。デイジーの夢のために。世界を見たいタマちゃんのために」

「ショウの夢のために。タマさんの夢のために」

「「乾杯」」


僕らはお互い笑いあって、暖かいハーブ茶で乾杯する。


「あとでケイトの夢も聞いてあげてね」

「彼女の夢はなんだろうな?」

「レッドほど単純な夢じゃなさそうよ」

「ほーそれは楽しみだ」


レッドの夢。ケイトの夢。

僕はまだ知らないけど。

僕を信じてくれた彼らのために、この船で出来るとこまでがんばるからね。





お読みいただき、ありがとうございます。

レッドの夢、ケイトの夢。伏線もこっそり置いたけど書ききれませんでした。

主人公以外の話が無駄にあるのって読むのめんどくさいですしねぇ。

少しでも続きが気になる、と思っていただけたら、

『ブックマーク』と【★★★★★】何卒応援よろしくお願いします。

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