46.船上で
どうやら敵意を持っているダンジョンマスターもいるみたいだ。
好意的なダンジョンマスターばかりだったので油断してた。
タマちゃんも敵意のあるダンジョンマスターと会ったことがなかったそうだ。
なんだろうね、この手探り感は。
船上でナッツのクッキーと甘酸っぱい木苺ジュースを飲みながら僕は言う。
「なんか拍子抜けしたなぁ~」
「何がだよ?おい、まさか俺たちが敵になるとでも思ってたのか?」
レッドに突っ込まれて小さくうなずく。
「まじかよ。ショウみたいなダンジョン持ってないヘタレが敵とか」
「いや、ダンジョンあるよ」
「え?あるんかよ」
「うん。本格的なのはまだだけど、試作としてこの船がそうだ」
皆が首をかしげる。
この船は普通に発注していたのを皆知っていた。
「最初にあるものをダンジョン化することもできるんだよ」
「それで、なにか得になることあるのかしら?」デイジーも食いついてきた。
「冷やしたりする魔石がいらない。あと手足のように操縦もできる」
「便利ではあるが、たいしたことないな」とレッドに言われてしまう。
「最初からスキルでつくると、僕が消えたときに全部解体してしまうからね。
一緒に乗ってるスライムが海に落ちて死んじゃうから」
「え?スライムのため?」
「うん。恨まれたら嫌」
スライムに感情があるのか、はなはだ疑問ではある。
「確かに海の真ん中で解体されたら、私たち困るわよね」と真剣に悩むケイト。
「じゃあ皆で移動する船は設計からやり直しなのね」とデイジー。
「設計図っていくらかかるんだろう」とレッド。
いや、だからなんで船に乗っている前提なんだ。
まさか勢いでいってるんじゃなくてマジなのか?
「気が付いたの。ショウは一人になっちゃダメ」とケイトが追撃。
「俺たちチームの合言葉『困ったときのデイジー頼み』忘れるなよ」
「ちょっと!私を何だと思ってるのよ。
誰だって秘密くらいあるものよ。…まあ相談くらいならのるわよ」
ペンダントがまた震えてる。
タマちゃん笑ってないで何とか言ってよ。
◇
光のダンジョンはヤバすぎるので、僕らはロメリア港でお土産を買って帰ることにする。
ポット君に挨拶したら「もっとゆっくりしていってよ」といわれた。
「卒業式があるから、また来るよ」といってさよならした。
船なら数日で、すぐ来られることがわかったからね。
魔石調査も他国だから許可とらないといけないし、いろいろめんどうだ。
この国の書類関係はポット君にお願いしておく。
海流の関係で帰りはちょっと時間がかかった。
船の上で僕らは卒業してからの動きを話し合う。
主に僕らの船をどうするかって話だ。
やっぱり金策は大事だよね。
ダンジョンが金策にもっとも有効なんだけど、僕は危ないので入らないほうがいい。
一応研究所に所属してるから給料はある。
でもそれだけじゃ足りない。
何か考えなくては。
◇
帰り船を操縦しながらぼーっと考えていたらデイジーがやってきた。
「ショウちょっと聞きたいんだけど」
「うん、なに?」
「あなたのいた前ダンジョンのこと。知ってること教えてもらえないかしら」
僕が知ってることは少ない。
リリスさんに聞いたことを話した。
デイジーはしばらく考えていた。
「ねえショウ。タマさんの部屋に私一人で入ることできるのかしら?」
「タマちゃんが許可すれば入れると思うよ」
「なら後でお願いするかもしれない」
「デイジーも何か悩んでることがあるの?僕に協力できることある?」
「ええ、そうみたい。でもはっきりとわからないから調べてからにするわ」
僕も言いにくくて内緒にしてたんだから、デイジーにだってあるのだろう。
お読みいただき、ありがとうございます。
少しでも続きが気になる、と思っていただけたら、
『ブックマーク』と【★★★★★】何卒応援よろしくお願いします。




